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営業改革を考える (11) “断れない営業”は組織を滅ぼす/日沖 博道

INSIGHT NOW! / 2016年8月10日 19時3分


        営業改革を考える (11) “断れない営業”は組織を滅ぼす/日沖 博道

日沖 博道 / パスファインダーズ株式会社

大概の営業というのは「売ってナンボ」「売れている奴が偉い」という意識が組織に染み付いているものである。それが高じると、うるさ型だろうが値引き幅が大きかろうが、とにかく買ってもらえるお客であれば有難い、となりがちである。

実のところ、「この案件を取ると、あとが大変だなぁ」というのは営業としては大抵の場合、予想できる。だから、“望ましくない案件”を無理矢理にでも取りに行くというのは、実は営業のエゴなのである。

売上が欲しいゆえに望ましくない案件を受注する、または望ましくない顧客と取引することは、次の投資をするための収益を削り、そのあとのクレームに関係スタッフの苦労が費やされることになり、企業としては大きな負担となる。職種によっては、それで心労を重ねて「辞めたい」となるスタッフすら出てくる。

顧客単位で調べてみたら、売上額は大きいがクレームや無理難題の要求も多く、対応する手間を考慮するとトータルで損失となっていた、という話は世間には意外とよくある。小生も過去のプロジェクトで経験した。

業種によっては案件当たりのインパクトが大きいために企業体力を大幅に奪うことすらある。実際、SI企業や建設会社では、プロジェクト選別が十分できないために損失が膨らむという痛い経験を長い間繰り返してきた。

教訓を学んでプロジェクトを峻別するようになったのは実は最近のこと、という大手企業は少なくない。中堅・中小企業だと未だに「分かっちゃいるけど止められない」(古い!)というケースが少なくないようだ。そうした経緯で不採算プロジェクトを重ねたために倒産または吸収合併されたと云われる企業も幾つか聞いている。

これらの業界はプロジェクト方式なので案件ごとの収益が見えやすいが、他の業界でも本質的には同じことだ。

営業幹部は是非、経営者と戦略を共有して欲しい。そして「勇気をもって“望ましくない案件・顧客”を断る」という方針を、経営者は営業全員に対し明示して欲しい。

なお、特定の顧客と取引することで市場への強烈なアピールになるため価格やサービス面で“戦略的な対応”をするというのは一種の投資であり、その意図が社内で共有されている限りは上記とは別の話である。峻別したい。

(本稿は2013年5月のコラム記事に加筆修正したものです)

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