仮説の“検証”とはどんなもの?(実例その1)/日沖 博道
INSIGHT NOW! / 2015年7月23日 7時0分
![仮説の“検証”とはどんなもの?(実例その1)/日沖 博道](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/insightnow/insightnow_7939_0-small.jpg)
日沖 博道 / パスファインダーズ株式会社
前の記事で検証をせずにいきなり実施することの無謀・軽率さを説いたところ、「検証って具体的にどんなことをすればいいのか」という質問を幾つかいただいた。やはり仮説の「検証」というのは多くの人にとってイメージしにくいようだ。
一般的な意味合いとしては、自分が「前提」として「想定」している「仮説」が本当に確からしいのか、当てにしていいのか、他の人にも理解・納得できるように「考証」「論証」「物証」を挙げることである。
しかし現実問題として、どんな背景でどんな仮説を立てたのかによって、検証すべき事柄およびそのやり方は千差万別である。だから「検証とは」という一般的な説明だけでは、あまり役に立たないかも知れない。
そこで小生が携わった、ちょっと極端な実例を示すことで、「へー、そんなのも『検証』なのか」といった具合に広めのイメージを持っていただくほうがよいのではないかと考え、数回に分けて幾つか挙げてみたい。
一つ目は日本のネットサービスの例。それまでに世の中にない、消費者と企業をつなぐB2B2Cサービスだった。
そのために本当に消費者を満足させることができ、利用者と加盟企業が両方増えるシナリオ(仮説)が成り立つのか、どこにも確たる証拠はないため、経営者としては踏み切っていいものか判断できないという状況だった。ただしビジネスモデルとしては誰もが称賛するような、よくできたものだった。
関係者が欲しかったのは、背中を押してくれる論拠だった。
そこで小生のチームが行ったのは、ビジネスが成功するというロジック(仮説)の構成要素ごとの仮説検証と、その組み合わせによる結論づけだった(コンサルティングの世界での専門用語的にはイシュー分析という手法である)。
詳細は省くが、「このサービスは消費者から本当に求められているのか?」「その提供方法はこれで大丈夫か?」といった幾つかの問いに対しては、想定ユーザーに近い消費者を集めたグルインを重ねて個々にヒアリングした。「XXX万以上の消費者に対し自社商品をこれこれの方法でアピールできるなら、宣伝予算の一部を振り分けるか」などの質問を、取引候補企業に対しヒアリングで検証した。
その一方で、「(その提供方法において想定される)ボトルネック解消はこれで可能か?」「(消費者の望む)サービスレベルは24h365日、維持できるか?」など、多岐にわたるチェック項目をクリアできることを、準備スタッフらと詰めた。
短期間だったのでちょっと力技の要る作業ではあったが、新規事業に関わる「仮説検証」としてはオーソドックスなものだった。
二つ目はある外資系自動車部品メーカー(仮にYと呼ぶ)によるM&Aの例。
1)グローバルに分散する主な自動車製造拠点をカバーすること、2)日本の自動車メーカーへの食い込みを強化すること、そして3)互いの製品・技術がうまく補完関係を形成できること、の3つを期待し、ある金融機関が仲介した日本の同業者(仮にZと呼ぶ)を買収する案件の打診に応じ、デューデリジェンス(DD=精査)の作業に入った。
最初の2つが成立することは明らかであったが、最後の仮説は互いの技術を持ち寄ることではじめて可能になるものだった。
その具体策は、Yで開発された技術と製品をZの製品と組み合わせたら可能になるはずの、新発想の複合パーツ群だった。それが日本の自動車メーカーに評価されて売れるようになるのか、が問題だった。
まだDDの段階なので、資本提携が成立するかは誰にも確証がない。そのためZの社員が自動車メーカーに対し「こういう製品を出したいと考えています」と説明するわけにもいかない。
そこで小生とDDチームの一員(Yの技術者)が協力して資料作成し、自動車メーカーの技術者チームに対し市場調査と称して出向いた。そして新製品のコンセプトと併せて、既にその技術を適用してできた類似製品の機能と性能向上について説明し、その市場性に関するヒアリングをした。
これも仮説検証の一つの形である。
次回は業務改革的なカテゴリーにおける仮説と、その検証の事例をお伝えしたい。
(本記事は2013年10月19日に掲載されたものを再編集しております)
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