問題提起と解決策提示を同時に発信/小槻 博文
INSIGHT NOW! / 2014年9月2日 15時5分
小槻博文 / 合同会社VentunicatioN
【ベンチャー・中小企業・NPO等の広報・PR活動事例】
体感型の「放課後プログラム」を提供することで子どもたち、親たちが抱えている各種問題を解決しようと取り組む特定非営利法人放課後NPOアフタースクール。
今回は同団体の事業活動、そしてそれらを世の中へ広めるための取り組み(広報・PR活動)について話を聞いた。
広報・PR情報サイト「広報スタートアップのススメ」 http://www.pr-startup.com/
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「社会で子どもを育てる」ための仕組みづくりに向けて
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最近の子どもたちは「外で遊ばない」「友達と遊ぶのもテレビゲーム」「塾通いに忙しい」などと言われて久しい。そしてその結果、自己肯定感やチャレンジ意欲、コミュニケーション能力が低下するなどの課題が生じていると言われている。
また親側においても共働き世帯が増加するなかで、保育園時代は子どもを預ける先があったものの、小学生になると学童保育が不足しているために仕事を辞めざるを得なかったり(小1の壁)、運よく学童保育に入れることが出来ても預かり対象は小学校3年生までのため、4年生に進級すると預け先として塾や習い事に通わせざるを得なくなったり(小4の壁)などの問題などを抱えている。
そこで同団体では、地域のコミュニティ拠点である学校を利用し、そして地域住民を“市民先生”という形にてさまざまなプログラムを提供することによって、市民・学校・NPOが連携して「社会で子どもを育てる」ための仕組みづくりに取り組んでいる。
プログラムは、衣・食・住・スポーツ・音楽・文化・学び・遊び・表現の9つのテーマのもと、年間100種類以上が提供されているほか、最近は自動車関連企業による「最先端の車の技術・接客」を学んだり、証券会社による「金融・商売プログラム」を提供したりするなど、企業がCSRの一環として体験型プログラムを提供するケースも増えてきている。
なお発足当初はプログラム提供のみだったが、2011年に「新渡戸文化アフタースクール」を開校したのをきっかけに、現在5校にて施設運営からプログラム提供までの一貫展開にも取り組んでいる。
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今まで抱えていた問題意識を解消できると直感
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代表理事の平岩国泰氏は2004年に長女を授かったが、その当時「児童連れ去り」が多発していた時期であり、そのほとんどが放課後に起きていたことから、長女が小学生になった時のことを考えると他人事には思えなかったという。また当時勤めていた会社では人材採用を担当していたが、面接をしていても全体的に若者に覇気を感じられないことに問題意識を感じるとともに、30歳を過ぎた頃からは自身と社会との関わり合い、つまり「社会性」を意識するようになっていった。
そのような時にアメリカでは子どものドロップアウトを防止すべく、放課後の小学校を活用してさまざまなプログラムを提供していることを知人から聞き、この取り組みこそ自分が感じていたさまざまな問題を一気に解消するものではないかと考えて、日本でも同様の取り組みを進めようと着手した。
一方副代表理事の織畑研氏は小さい頃から「良い大学に行き、良い企業に入る」ことを是として育ってきたが、高校生になると「果たして本当にそれで良かったのか」「幼少期にもっといろいろな体験をしておけば良かった」と疑問を感じ始めるようになっていった。
とは言いながらも当時は解決策も無いままにそのまま大学へ進学し、そして社会人生活を送っていたのだが、平岩氏からアメリカのアフタースクールの話を聞いたときに、高校時代から感じていた問題意識を解決する可能性を感じて、そして参画することにしたという。
つまり二人に共通しているのは、社会に対する課題意識、そしてその課題意識を解消する可能性だったのだ。
(左)代表理事・平岩 国泰さん、(右)副代表理事・織畑 研さん
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問題提起と解決策提示を同時に発信
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したがって情報発信においても、「社会課題」「解決策」の両面を意識している。
「現在共働き世帯の育児問題が色々と叫ばれていますが、そのようななかで、果たして子どもたちが育つ環境がこのままで良いのか、と問題提起をするとともに、その解決策として私たちの取り組みを発信出来ればと考えています。そして私たちの問題提起や取り組みを広めていくことで、共感者や支援者を増やしながら世論形成や意識変容を促し、そして“社会で子どもを育てる”ための環境を創っていきたいと思っています。」(平岩氏)
具体的な活動としては、大きくパブリシティと講演活動を進めている。パブリシティについては、同団体の取り組みを一方的に発信するのではなく、「小1・小4の壁」といった社会課題をはじめ外部環境を如何に絡められるかということを意識しており、その結果「社会課題」と「同団体の取り組み」の両方がきちんと取り上げられることで、別のメディアからも取材依頼が来たり、報道を見た人がWEBサイトへアクセスし、そして「自分も参加したい」「一緒にやりたい」といった問い合わせが来たりするなど、環境づくりを目的にした情報発信が、結果的に事業に直結する効果につながっているという。
一方講演活動については、パブリシティでは“社会課題”を軸にした情報発信であるのに対して、“社会課題”はマクロなテーマであり、地域によって少しずつ課題の性質は異なるため、講演では「地域の力を活かす」というテーマのもとで同団体の取り組みを紹介する形を採っている。
(画像)講演の様子
また今後は私立校に加えて公立校での施設運営も図るために、現在WEBサイトのリニューアルを進めている。今までもプログラム提供は公立校、私立校それぞれにて展開していたが、施設運営については私立校のみだったため、WEBサイトのターゲット層も「保護者」「企業」が中心だった。
しかし公立校での施設運営へ参入するにあたり、相手は行政、教育委員会ということで、民間以上に「信用」「実績」が重要となってくることから、新たなターゲット層である「行政・教育委員会」を意識したWEBサイトへのリニューアルを進めている。
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対象およびエリアの拡大に向けて
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このように広報・PR活動を通じて活動基盤の整備を進める同団体だが、今後の展開については「公立校での施設運営」「全国への広がり」を重点テーマに挙げている。
政府は7月に、学童保育の定員枠を2019年度末までに約30万人分を拡充する方針を明らかにし、各自治体に対して2014度中に事業計画の策定や関連条例の制定を義務付けるなど、同団体の展開加速において追い風が吹き始めてきている。そのようななかで、この機会を上手く活かしながら、公立校での施設運営にも着手すべく、まずは早期に公立校での実績をつくりたいとしている。
またこの取り組みを全国にどう広げていくかについても重要なテーマだが、そのとき地域によって事情が少しずつ異なるため、汎用的に広げていくのではなく、それぞれの地域に根ざした形での取り組みを行うべく、全国各地に“同士”を如何につくり、そしてネットワーク化していけるかを意識しているという。
社会構造の変化によって現代社会ならではの問題がさまざま生じているが、それらを解消する可能性を秘めたこの取り組みが今後どう広がりを見せていくのか、その動向に引き続き注目していきたい。
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