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【地方創生のススメ】逆転の発想で“空き家”を地域資源に!/小槻 博文

INSIGHT NOW! / 2014年9月30日 12時5分

【地方創生のススメ】逆転の発想で“空き家”を地域資源に!/小槻 博文

小槻博文 / 合同会社VentunicatioN

2014年7月に発表された総務省の資料によると、全国の住宅に占める空き家の割合は2013年10月時点で過去最高の13.5%にあたる819万6400戸に上ったようだ。そしてその大きな要因として人口減少や高齢化による過疎化が考えられ、実際空き家が散在する地域も多いと聞く。また空き家への放火やホームレスの居住、はたまた大麻の栽培がおこなわれたりするなど、治安面でも空き家の増加は不安視されている。

<企画・取材・撮影>

「地方創生のススメ」編集部 http://www.pr-startup.com/?cat=20

===過去最悪の空き家率===

2014年7月に発表された総務省の資料によると、全国の住宅に占める空き家の割合は2013年10月時点で過去最高の13.5%にあたる819万6400戸に上ったようだ。そしてその大きな要因として人口減少や高齢化による過疎化が考えられ、実際空き家が散在する地域も多いと聞く。また空き家への放火やホームレスの居住、はたまた大麻の栽培がおこなわれたりするなど、治安面でも空き家の増加は不安視されている。



(画像)空き家数・空き家率推移(総務省)

一方でそのような状況を打破しようと、最近は空き家をリノベーションしたり移住者に提供したりするなどの試みも各地で進められてはいるが、しかし全体像がないままに空き家単体で取り扱われることも多く、効果は限定的であるのが実情のようだ。そのようななかで筆者がプロボノとして関わっている徳島県美波町では、地域活性の全体像を描き、そして計画的に空き家をリノベーションしていく、そんな取り組みが始動した。

===空き家単体ではなく、地区全体をリノベーション!===

美波町は海・山・川に囲まれた自然豊かな地域であり、また四国八十八箇所霊場・薬王寺が鎮座するなど、古くは農業・漁業・観光などで栄えた活気あふれる地域だった。しかし近年は若年層の人口流出や高齢化などを要因に、人の往来も減少するなど町の活気は以前と比べて失われつつある。



(画像)以前の日和佐地区の様子

そこで地域活性プロデュースを展開するあわえでは、人々の往来を増やす機会をつくり、そして町の活気を取り戻すきっかけにすべく、「日和佐エリアリノベーションプロジェクト」を2014年春に始動させた。

「日和佐エリアリノベーションプロジェクト」では、重点エリア(日和佐浦)を選定するとともに、その地区のメインストリート(線)上にて計画的に遊休不動産をリノベーションしていくことで人の往来を増やし、そしてその活気を地区全体(面)へと波及させていくとしている。

===かつての交流の場だった銭湯を現代の地元交流の場へ!===

その第1弾となるのが、明治時代に建てられた銭湯「初音湯」のリノベーションだ。「初音湯」は明治42(1909)年に建てられ、1990年に閉鎖後も脱衣所や風呂場は当時のまま保存されるなど、1世紀以上にわたり同地区の住民から親しまれてきた、いわば地元住民の象徴的な存在だ。



(画像)リノベーションを経て地域交流拠点に生まれ変わった新「初音湯」

そこであわえでは、明治・大正・昭和時代、まだ各家庭に風呂がなかった時代には住民交流の場の役割を果たしていた銭湯を、現代の“地域住民の交流施設”としてリノベーションすべく2014年5月末から改修工事を進め、2014年9月に新「初音湯」を開所させた。なお新「初音湯」はあわえの社員も常駐して、地域住民との交流を図りながら潜在的な地域課題を探る、そんな場にもしていきたいとしている。



(画像)気軽に地域住民や観光客が立ち寄れるように施設を開放

===空き家をスタートアップのオフィスへ===

初音湯の開所に先立つこと1か月前、Studio23が同地区の空き家をリノベーションしたオフィスを開設した。Studio23は、大手メーカーのロゴやフォントなどブランディングデザインを手掛ける兵頭デザインの代表・兵頭将勝氏が美波町で起業した地域ブランディングのスタートアップだ。



(画像)Studio23の古民家オフィス

元々Studio23は同地区から少し離れたエリアの老人ホーム跡地にオフィスを構えていたが、あわえから「日和佐エリアリノベーションプロジェクト」の話を聞き、同地区にオフィスを開設することに賛同。そしてあわえによる物件選定やリノベーション支援のもと、2014年8月に同地区の空き家をリノベーションしたオフィスを完成させた。

===新たな需要開拓へ向けて===

あわえやStudio23をはじめ、この数年美波町では豊かな自然環境でのワークライフバランスを実現しようと都会のベンチャー企業がサテライトオフィスを開設したり、首都圏で活躍するスペシャリストが地域課題を解決しようと起業したりしている。



(画像)美波町に2013年夏に進出したクラウドサービスベンチャー鈴木商店のサテライトオフィス



(画像)2013年に起業した、高齢者向けのIT支援を通じた地域マーケティングを手掛けるたからのやまの古民家オフィス

そして現在も毎週のようにサテライトオフィスの開設や起業を検討している企業や個人が美波町へ次々と来訪している。しかしただ視察するだけではなく、実際に美波町での働き方や生活を体験してもらうことが同町への進出の後押しになると考えて、あわえでは同地区に短期滞在型のサテライトオフィス体験施設(シェアオフィス)や移住体験施設(ゲストハウス)を開設することも計画している。そしてさらには実際にサテライトオフィス開設や移住を決めた際には、同地区でのオフィス開設や居住も促していくという。

===「ソト×ナカ」の相乗効果によって活気を最大化!===

このようにあわえでは重点エリアを選定して、そして自社運営の施設を軸にしながら更なるリノベーション需要を開拓することによって、「点」ではなく「線(ストリート)」として賑わいを再生し、そしてその活気を地区全体(面)へと波及させていこうとしている。



(画像)通りの往来を増やすことで活気を増幅させていく

そしてそのとき「地域住民」「来訪者」それぞれの視点を念頭に置き、「地域住民」にとっては住民同士の交流に加えて、来訪者との交流により新たな見聞を得る場に、「来訪者」にとっては住民との交流に加えて、住民が抱える地域課題を収集して新たな課題解決ビジネスへとつなげる場にそれぞれしていきたいという。

これによって住民一人ひとり(ナカ)を元気にするとともに、地域外(ソト)から新たな活気を呼び込み、そしてその相乗効果によって活気を最大化していければと期待している。

「空き家が増えている」と嘆いていても仕方がない。そうではなく逆転の発想で“空き家”をフックに地域を元気にする、つまりないものをつくるのではなく、あるものを“資源”として捉える、そんな発想が地域活性の現場には求められているのかもしれない。

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