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「プロセスのモデル化」でサービスの組織力を高める/松井 拓己

INSIGHT NOW! / 2014年10月17日 10時57分

「プロセスのモデル化」でサービスの組織力を高める/松井 拓己

松井拓己 / ワクコンサルティング株式会社

サービス改革やCS向上活動は、現場任せで個人の経験やセンスに頼りきっていて、組織的に取り組めていないことが多いようです。もちろん現場には、経験知に裏付けられた価値ある工夫やノウハウがたくさんあります。しかしそれらは、個人の頭の中や引き出しの中にしまい込まれていて、組織的に活用できていないことがほとんどです。これではあまりにもったいないですね。そこで、サービス向上やCS向上の取り組みを、組織的に効果的に進めるために、今回はサービスサイエンスの理論から「プロセスのモデル化」をご紹介いたします。

これまでの記事で、目に見えないサービスやCS向上、営業活動を少しロジカルに捉えるだけで、今までよりはるかに具体的で効果的な努力のポイントが見出せそうだと、ご理解頂けたと思います。たとえば「サービス品質」の記事では、サービス品質を要素に分解すると具体的にどんな努力をすることに価値があるのかが浮かび上がってきました。また、サービスの原点である、「サービスや顧客満足の定義」の記事では、それを理解することで、今までの取り組みの盲点が見えてきました。そこで今回は、サービスサイエンスにおける「プロセスのモデル化」を取り上げてみたいと思います。

サービスのとても重要な特徴は「お客様と一緒に作る」ということです。しかし、まだまだ日本のサービスは、「良いサービスは喜ばれるに決まってる」と決めつけて、勝手に作ったサービスを一方的に押しつけてしまっているのが現状です。勝手に作ったサービスには、「余計なお世話」や「無意味行為」、「迷惑行為」のような要素がかなりの割合で入ってしまいます。これではお客様に満足していただくことはできません。これからは、お客様と一緒にサービスを作り上げていかなければなりらないのです。しかし、「お客様と一緒にサービスを作りましょう」と言われても、具体的に明日から何をしたら良いのか、いまいちピンときません。

そこでサービスサイエンスでは、サービスプロセスを「モデル化」することで、お客様とのサービス共創を実現しています。実はこのプロセスのモデル化をすることで、個人や現場に溜まっている経験知やノウハウ、工夫が見える形になり、組織で活用できるようになるのです。個人や現場の気づきや努力を、組織の力に変えられると、組織的なサービス改革やCS向上は、一段と効果的に進められるようになると思います。

さて、それではプロセスのモデル化の進め方を見ていきたいと思います。具体的には図のような形で、サービスプロセスに沿って、お客様ごとに異なる「事前期待」と、それに応えるための「サービス品質」を対応させていくことで、高い顧客満足を得られるサービスを設計するというものです。今回は基本的な部分のみのご紹介に留めたいと思いますが、ポイントは次の3つになります。



●まず始めに、サービスプロセスを分解して定義します。この際には「サービスはお客様と一緒に作る」という意識で、サービス提供プロセスと顧客プロセスを一緒に定義することがポイントです。多くの企業では、サービス提供プロセスは定義されていますが、顧客プロセスが定義できていないことが多いようです。そこで、顧客プロセスを定義してみると、実に様々なことが見えてきます。例えばトラブル対応のプロセスでは、サービス提供スタッフは原因究明や対応作業に没頭しています。一方、お客様はというと、状況を何も知らされずに待たされてイライラしている。このようにお客様への配慮が足らないことが原因でクレームになってしまうことはよくあります。こういったことが、顧客プロセスを定義することで浮かび上がってくるのです。顧客プロセスに、「何も知らされずに待たされる」と書かれていれば、誰でもすぐに「こまめな中間報告」などの工夫が必要だと気付けるのです。

しかし実は「プロセス」を定義するだけでは、実は我々が具体的にどんな努力をしたらお客様に喜んで頂けるのかは分かりません。なぜなら、サービスの定義が示すように、「お客様の事前期待」次第で、サービスで努力すべきポイントが変わってしまうからです。そこで、プロセスの定義の次に行うのは、お客様がどんな事前期待を持っているかを定義します。

●事前期待については、以前の記事で触れたような、事前期待の構成要素を理解することが大切です。その上で、特にお客様ごとに異なる事前期待(個別的事前期待や状況で変化する事前期待、潜在的事前期待)にフォーカスして、プロセス毎にお客様が期待していることを定義すると効果的です。

●続いて、期待に応えるために我々が意識すべきサービス品質を定義します。ただ単に「サービス品質」と言われても、具体的に何をしたらよいのか分からないというのが現場の本音だと思います。そこでサービスサイエンスではサービス品質を次の6つに分解して定義しています。正確性、迅速性、柔軟性、共感性、安心感、好印象。これら6つのうちで特にどれが重要なのかを、プロセスごとに事前期待と対応させながら議論していくのです。

よくサービス部門での議論に挙がるのが、「正確性と迅速性が最も重要だ」ということです。しかし実は、競合もここには力を入れていて、お客様からすると「正確で迅速なサービスは、どの会社も同じでしょ」と思われてしまっていることが少なくありません。競合サービスとの比較もしながら、価値あるサービス品質について議論こと必要があるのです。

このようにシンプルにサービスプロセスをモデル化するだけでも、ただ単に「サービス改革!」や「CS向上!」と掛け声だけで活動を進めるより、はるかに具体的で価値ある議論や取り組みができるようになります。目に見えないサービスの強化はこのように、モデル化して見える形にすることで、現場や個人任せな活動から脱却して、現場や個人の価値ある努力や工夫を組織力に繋げられるような取り組みができるようになるのです。

是非、優秀な現場の方々の経験知やノウハウを、このような形でモデル化して、組織的なレベルアップに活かして頂けたら幸いです。

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