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調達購買スキル-品目ナレッジは必要か-/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2014年11月13日 16時9分

調達購買スキル-品目ナレッジは必要か-/野町 直弘

野町直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

調達購買人材に必要なスキルは大きく三種類に分類されます。

昨今多くの企業で調達購買人材のスキル育成が求められています。スキル育成のためにはそもそも自社の調達購買人材にどのようなスキルが求められるかを棚卸しすることが必要です。

それではどのようなスキルが必要でしょうか。私共は調達購買をやられている方に求められるスキルは大きく3種類に分類されると考えています。

一つ目は「調達・購買共通スキル」です。

これは支出分析やコスト分析、ソーシング、ネゴシエーションやサプライヤマネジメント、ユーザーマネジメントなど担当する品目に関係なく調達購買で必要となるスキル。またこの共通スキルは管理者や企画部門として必要となる戦略マネジメントスキルと実務スキルに分けられます。

二つ目は「ファンダメンタルスキル」です。

これはビジネスパーソンに共通して必要な基礎的スキルであり、例えばコミュニケーションスキルや調整能力、ファシリテーションスキルやプレゼンテーションスキル、プロジェクトマネジメントやベーシックなビジネスマナーの理解などもここに属します。

最後のスキルは「品目/業種スキル」です。

これはスキルではなく知識と言い換えてもよいでしょう。担当する品目のサプライヤの情報、新技術や新サービスの情報、市場環境や市況情報、購入品がどのように作られているか、などの製造に係る知識なども含まれます。この「品目/業種スキル」はとても重要なスキルですが購入する品目に依存するため幅広い品目のスキルを持つことはとても難しいことです。

最近調達の現場の声でよく聞かれるのがこの「品目/業種スキル(知識)は必要

ですか?」ということ。

これに関しては二通りの考え方があります。一つは「専門性を極める必要がある」という考え方です。

外資系企業などが調達購買職の採用を行う際には購買経験だけでなく、品目の

専門性を持っているか、が一般的に求められます。例えば物流専門とかIT専門とか特定分野の専門性です。むしろ求められるのは品目や業界の専門性が主になるため、調達購買経験よりも、対象品目や業界の経験の方が求められることもあります。最近ではより技術的に進んでいる買いモノをすることもありますので、日本的な事務技術職の分け方から言うと技術職が求められるというのも一つの傾向です。

ある方がこの専門スキルについておっしゃられていたのは、自動車などのカスタマイズ化された部品の購入は、摺合せ型製品なので専門知識よりも調整能力が重視され、一方でハイテク製品はモジュールの組立てなので、部品についての専門知識がより求められ品目によっては技術職でないと手に負えなくなるということがありました。おっしゃられる通りです。最近は自動車も部品の開発自体をサプライヤに丸投げしており、ブラックボックス化が進んだため社外から専門の技術者を調達購買のサポート役として置いているという企業もあるようです。

一方で「深い専門性はあまり必要ない」という考え方もあります。

優秀なバイヤーはどんな品目を担当しても優秀なバイヤーであることからもこの意見には頷けます。これらの優秀なバイヤーに共通して言えることは「必要な情報が何かを理解してその情報を揃える(入手する)のが上手い」ことです。自分が担当している品目について何を理解しておく必要があるかが分かれば、後は効率よくサプライヤから聞き出したり、社内から聞き出すことが上手ければよいので、購入品に関して詳細な技術的知見などがなくても調達購買としての仕事はできるという考え方なのです。

あるバイヤーによると全く経験したことがない品目でも三回案件を回せばプロフェッショナルバイヤーになれるとおっしゃっています。その際に重要なのは何社競わせるか、ということです。最終的には最低でも3社の真剣な見積りを入手したい、そのためには見積依頼は最低でも5社にしたい、そのためには7-8社の候補先に引き合いを出したい。この7-8社の引合先を見つけるのが一番のポイントだとそのバイヤーは言っています。そのためにはサプライヤの情報やサプライヤを見つける能力は必要だが、購入品の詳細な技術的知見などはなくても競争環境を作ることはできるとのことです。また三回案件を回せば自然と見積書の項目(構成や工程)を定義することができるようになると言います。そのためには購入品や購入サービスの中味が分からないとできないのは当たり前ですが、素人でも工夫したり確認したりすることで早期キャッチアップは可能であるとおっしゃっています。これはこれで尤もな意見です。

このように品目/業種スキルの専門性については様々な意見があります。

ここでもいくつかの共通する考え方は存在します。以下はこの共通する事項について述べていきます。

一つ目は購入品もしくは業種により求められる専門性は異なる。これは先の自動車とハイテク業種の違いしかり、非常に専門的なサービスである例えばCRO(製薬業界の治験等の委託)のような専門的サービスと汎用的な事務用品の購入ではやはり求められる専門性のレベルにも差があることは当然です。

次に言えることは「専門性は持っていればいるほど良い」ということです。これは誰も異存はないことです。しかし全ての購入品に関して詳細の技術情報や専門性を持つことは不可能です。ここで言いたいことは「専門性を持つ努力や情報収集を怠ってはならない」ということです。事務系バックグラウンドのバイヤーが「私は技術屋じゃないから専門的なことは分からない」ということがありますが、それは学習するための機会を自ら放棄していることです。品目担当になったということはその品目に関しては社内で一番の専門家であると自負できる位の知識習得への意欲は欠いてはいけないのです。

最後に取り上げたいのは最低限必要な専門性があるということです。つまりある程度の専門性は必要だと言うことです。それはどのレベルでしょうか。

購入品は何らかの原材料や構成品を加工したり組立てたりプロセスを踏むことで

製品化されます。図面はあくまでも完成した姿でしかありません。その完成した姿(製品やサービス)は多くの原材料や構成品とそれらの加工工程が必要です。これはあらゆる購入品や購入サービスについて言えることです。

もしあなたがその品目のバイヤー担当であればその品目を製品化する加工工程を理解し購入品のコスト構造を理解することは必要なスキルです。

例えば樹脂部品であれば射出、ブロー、真空成型の大きく三種類の成形方法がありますが、これらの成形がどのような設備でどのような工程が行われるのか理解しておくことは最低限必要です。それにより図面から樹脂部品がどのような工法で作るのが適しているか、また対応可能なサプライヤがどこなのか、概算のコストがいくら位なのか知ることができるのです。

あなたの社内の技術者は必ずしも購入品の製造技術を理解しているとは言えません。購入品がどのような工程を経て作られているのか、またそれがどのような工場や設備で作られているのか、イメージができることで社内の技術者に対する技術的なアドバイスは少なからずできるのです。またこのようなスキルを習得するためには多くの経験は必要ありません。必要なのは現場を見ることです。「現地現物」の確認がバイヤーに求められる最低限必要な専門知識を育成するのに役立つことなのです。

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