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サプライヤモチベーションと三感主義/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2014年11月26日 16時3分

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野町直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

SNSの出現は情報収集に大きな影響を与えてきました。しかし違和感を感じるのは「日本人は礼節を尊び、規律正しい」というような全体主義的な傾向です。実は日本人は以前に比べても「皆」の価値観に流されやすくなってきているのではないでしょうか?これは企業経営においても同様です。今後我々はこのような価値観からの変換を求められるでしょう。

SNSの出現は情報収集に大きな影響を与えてました。世の中にあるどのメディアよりもSNSの即時性は秀でています。また情報の広さや深さという点でもSNSからリンクが貼られていて多くの情報にいとも簡単にアクセスできます。テレビ番組で毎日放送される情報も元はSNSやYouTubeからネタを収集していることも日に日に増えているようです。

しかし最近はSNSを介した情報も信憑性がないもの、情報取得する価値がないものまで広く出回っていることを感じます。特に一部の報道やニュースソースを元に自ら情報収集や分析することなく断定的な書き方をしているブログや情報発信も増え、また「いいね」や「シェア」が雑多なニュースソースを広めているとも言えるでしょう。。

特に私が違和感を感じるのは「日本人は素晴らしい民族だ!」的な記事です。

日本人の規律の良さをとらえて、「日本人は素晴らしい!」的な記事に触れる機会は特に最近増えているように感じます。表面的には日本人は規律正しく、礼節を尊ぶ民族に見えるかもしれません。

しかし私は日常逆のことを感じる場面が多くあります。例えばスマホ、携帯の使い方。電車内の優先席付近では必ず「電源を切りましょう」という掲示がありますがスイッチを切るどころか、優先席に座ってスマホを操作している人も多く見かけます。歩きスマホも皆迷惑で危ないと思いながらやっていますし、最近怖いなと感じるのは信号無視当たり前の暴走自転車です。電源問題に関しては携帯の電波がペースメーカーの動作に影響を与えないことが近年分かってきたようですが、それでもルールはルール。

このように日本人は「規律が良くて礼節を尊ぶ」のではなく「皆でやれば怖くない」

「皆がやっているからやる」的な思考なだけではないか、と私は特に最近感じています。特にこの「皆がやっているから、やる。皆がやっていないから、やらない。」的な価値観が以前よりも強くなっている気がするのです。SNSで見られる美談には乗っかり、そうでない話は炎上させるという状況はその典型的な状況ですし、一方で異論を唱えにくい世の中になってきていると感じています。

これは企業経営でも同様です。コンサルタントをやっていて企業の方からまず聞かれるのは他社事例であり、実績。他者もやっているから当社もやる、他社並みにしたいという声は今も多くの企業から聞かれます。

調達購買でもその流れは否めません。集中購買の推進、プロセスの標準化、

テクノロジ(IT)の活用、間接材購買の取組み推進、等々これらは殆ど欧米企業の事例の後追いです。欧米企業の事例を先進企業が取組み、その数年後に多くの企業が後を追いかけます。(このやり方が全て悪いとは言いませんが)欧米的なドラスチックな改革を多くの企業が指向しているのです。

これは我々のようなソリューション提供企業側も同じ。焼き直しで多くの企業にその実績や経験を展開できればそれが一番リスクも低く、売りにもなります。

しかし、果たしてこのようなやり方が本当に最善なのでしょうか。

あるバイヤーからとても興味深い話を伺いました。サプライヤのやる気を如何に引き出していくかというサプライヤモチベーションについてです。このバイヤーが働いている企業は現状人手不足が激しい業界。数年前サプライヤに対しての依頼事項は「コスト削減」が第一優先だったのですが、今は仕事を受けてくれる先を探すのが調達購買部門の重要な役割になっているとのことです。つまり「どうしたらサプライヤのやる気を引出し、仕事を受けてもらえるか。」役割が変わりました。

私はそのバイヤーに「サプライヤは御社に何を望んでいるのでしょうか。」と。

そのバイヤー曰く「意外にも儲けたいとか、受注が欲しいというサプライヤだけでなく、うちにしかできない仕事をやりたいと言うサプライヤが多い」とのことでした。

そうサプライヤはその企業の仕事をやって金を儲けるだけでなく達成感を得たいのです。私はこれを三感主義(感動、感謝、感情)と言っています。サプライヤはその仕事を成し遂げることで「感動」したいのです。また難しい仕事をやり遂げて「感謝」されたいのです。

これには私も全く同意です。「難しい課題であればあるほど成し遂げたい。そしてお客様のお役に立ててお客様に感謝してほしい。一言『有難う』と言って欲しい」。これがサプライヤの本音ではないでしょうか。

サプライヤモチベーションの向上にはこのような人間としての本質的な部分を大切にすることが求められているのです。私はサプライヤ訪問し声を聞くことも多いですが「パートナーとして見てくれない」というサプライヤの声を聞くことがあります。もし失注したとしてもパートナーとして考えてくれているのならそれなりの対応があるだろう、ということも言われます。

実はこのような三感主義的な要素は従来の日本企業の企業と企業、企業と個人のつながりにおいてとても大切にされてきたことなのではないでしょうか。

このような日本的な何かが「皆が・・」という価値観で忘れ去られてしまった気がしてならないのです。

日本的経営と言いますと 1.終身雇用 2.年功序列 3.企業別組合の3つがその特徴と言われています。しかしむしろその底辺にあるのは日本人が従来大切にしてきた「三つの感(感動、感謝、感情):三感主義」にあったのではないでしょうか。

社員に対する感謝、顧客に感動を与える、考えるのではなく感じさせる、感じる。こういう日本ならではの要素が欧米流の合理的な経営と上手くミックスすることで、サプライヤだけでないスイテイクホルダーとのつながりを大切にする新しい日本的な経営が生まれてくることを期待しております。

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