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2014年の2つのトレンド-協働とサスティナビリティ-/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2014年12月24日 16時4分

2014年の2つのトレンド-協働とサスティナビリティ-/野町 直弘

野町直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

今年は一見静かな年でしたが、実は将来振り返ると2つのトレンドが出てきた年になったことでしょう。それは協働とサスティナビリテぃです。

今年最後の投稿になります。
2014年の調達・購買分野は私の印象としては「非常に静かな一年だった」ということ。大きな流れとしてはアベノミクスによる円安の進展とそれによる輸入原材料のコスト高騰が上げられますが、調達・購買分野の大きなトレンドになっていたかというと、そうでもないように感じます。社会的にも大きな事件として取り上げられたマクドナルドのナゲット調達の品質問題も工場や企業監査の徹底をしましょうという動きにはつながったものの、ここまで悪意を持ってやられると他山の石にもなり得なかったというのが私の印象です。そのような静かな一年でしたが、私は将来思い返すと2014年がターニングポイントだったと言われるような今後のトレンドを二つほど上げておきます。1つ目は新しい日本型調達・購買の方向性が生まれてくることです。私はこれをサプライヤとの「協働」と捉えています。ここでは特にサプライヤとの関係性作りがより重視され優秀なサプライヤをより大切にしていく動きがでてくることでしょう。
思い返すと2000年あたりから日本の調達・購買の世界は基本的に欧米的な手法を取り入れてきました。先日私の著書を読まれた調達購買に関係ない仕事をやられている方から指摘を受けました。それはこういうことです。「内容はよく分かるが、上から見ているような気がする」と。私はちょっとびっくりしましたが、そう言えばその通りだなと。
何故なら以前の日本の調達・購買の世界は極端に属人的な業務で重要な意思決定も個人に託されてきました。また透明性という点からもブラックボックス的な機能であったことは否定できません。
それを集中契約、サプライヤ集約、ボリュームメリットの引出し、相見積の義務化、プロセスの標準化、というような手法を取り入れることでコスト削減、効率化、品質・納期の安定化を実現してきたのがこの十数年間であり、私もその手法を体系化し展開することが主な仕事だったからです。一方で先般メルマガでも取り上げましたが、特に特定の業種や品目については供給力不足が叫ばれています。サプライヤの囲い込みや戦略サプライヤ制の導入、サプライヤのモチベーション向上をどうやっていくか、頭を悩ませはじめている企業やバイヤーも少なくありません。このような視点からサプライヤとの関係性を捉え、サプライヤのニーズを把握した上で、本来日本企業が重視し、強みとなってきた「協働」をいかに進めていくか、今後数年間で多くの企業にとって正に重要な視点となってくることは間違いないでしょう。2点目は「サスティナビリティ」というキーワードが上げられます。直訳すると「持続可能」という意味です。調達においても「持続可能性を考慮した調達」をすすめましょう、という考え方ですが、これは欧米企業からはじまり、日本企業にも大きな影響を与えつつあります。
ISO26000ではCSR(コーポレートソーシャルレスポンシビリティ:企業の社会的責任)が定義され、多くの日本企業でもCSR調達という概念からサプライヤのリスク管理を行っています。このCSR調達の中でサスティナビリティという概念と近い「グリーン調達」を包含する形で取組みが進んでいました。しかしグリーン調達はどちらかというと有害物質を含まないなどの法規に対する遵法を求めるものにすぎません。それに対しサスティナビリティは「責任あるサプライチェーン管理」を特に最終製品等を製造する企業(先進国側)が川上にある途上国側も含めて行うことを求めています。例えば資材や原材料の調達が途上国側の自然破壊や環境汚染につながっていないことや、人権を無視するような労働条件や労働環境によって実現された低コストでないということ等を先進国企業側が保証するということです。つまりサプライチェーンに何らかの無理や無駄があると、それは持続可能ではない、つまりサスティナブルではないということになります。これらの2つの視点は既に多くの企業で重要な項目として捉えられはじめています。また共通するのは「コスト至上主義」からの訣別という点と言えるでしょう。来年は調達・購買分野でもサプライチェーン全体の強化を目指し、一方でこのような「脱コスト至上主義」的な動きが益々出てくることをプチ予言しておきましょう。それでは皆様よいお年をお迎えください。

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