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若者の生き血をすする業界妖怪/純丘曜彰 教授博士

INSIGHT NOW! / 2015年1月25日 14時25分

若者の生き血をすする業界妖怪/純丘曜彰 教授博士

純丘曜彰教授博士 / 大阪芸術大学

/デビューさせてやらぬでもない、なんて言って近づいて来る業界人にロクなやつがいるわけがない。そんな連中の世話になったら、一生が台無しになる。文筆も、芸術も、本来は実力の世界だ。自分の作品を作り続けていれば、本当のファンは後からついてくる。/

ワシの命に従えば仕官させてやらぬでもない、なんて、悪代官のセリフそのものじゃないか。それで、ゴーストだ、枕だ、上納金を寄こせ、言うとおりの仕事をしろ、なんていうことになる。連中は、高利貸しより悪質で、搾り取るだけ搾り取ったら、ぽいっ。頭も心も病的に弱い、そのくせ自意識ばかり高いユトったバカは、いくらでも後から調達できる、才能も無いくせに、業界入りしたいなんて、もともと自業自得なのだ、いくら逆恨みされても、しょせんはゴマメの歯ぎしりよ、いくらユトリバカでも、こっちが文字通り裸の写真、作品の出版権などを握っていることの意味くらい、わかっておろう、というのが、やつらの考え。
かつては各所でさまざまな本気の真摯なオーディションも開かれていた。ところが、昨今は、有名タレントや有力政治家・官僚二世の華々しいデビューを飾るための八百長の出来レースだらけ。作家などですら、国営放送にまで根を張る放送作家崩れや、その声懸かり、お手つきばかり。その他は当て馬。才能のある若者が業界に入り込むチャンスは、いまやほとんど完全に閉じられている。それで、藁にもすがる思いで、ちょっとした有名人との出会いにでも全身全霊を捧げてしまう。
だが、有名人、と言っても、じつはとっくに死人。長寿番組の司会者にしても、次々と生きのいい新人たちを殺して生き延びているだけ。Kヤナギだの、Tワラだの、Tモリだの、輸血が途絶えたらオシマイのリビングデッドたち。もともと取材力も情報力も無く、時代に追いつけなくなったSグチやFタチ、新聞や週刊誌などは、過去の亡霊たちを集めて、まいどおなじみの壇ノ浦座談会。サブカルチャーでも、半端な昔知りの連中が幅をきかせているが、評論だけの終わった死人たちは、本当の製作現場では最初から誰もまともに相手されてはいない。
こんな死んだ妖怪連中には、最初から関わらない方がいい。チョビ髭のロッカー気取りも、不幸続きの零落作曲家も、デビュー当時に妖怪たちの世話になったばかりに、その後の人生もぐちゃぐちゃ、還暦近くもなっていまだに内情はヒヨッコ奴隷の身の上。その他のタレントや俳優、芸人、作家、漫画家、脚本家などの業界でも、「飼い主」の檻の中でおとなしくしていればこそ。ちょっとでも余計なことをすれば、あること、ないこと、業界はもちろん、雑誌新聞まで総動員して吹聴し、絶対確実に干し上げる。これは「ガスライティング」という手法。映画の『ガス灯』で知られるようになった。
ようするに、こいつらは業界ヤクザ。昔からピンハネで喰っている。最初は、二度と無い絶好のチャンスと思えるようなおいしい話を持ってくるが、それは撒きエサ。利用できそうな鉄砲玉ソルジャーを探しているだけ。こんな連中の世話でデビューできたとしても、猿回しの猿同然。自分の作りたいものなど作らせてもらえるわけもなく、足を洗おうにも、自分の作品さえ、今後は勝手に歌うな、いや、芸名だって使わせないぞ、やれるものならやってみな、潰してやるぜ、と脅されるのがオチ。
文筆も、芸術も、本来は実力の世界だ。いくらムリにゴリ押ししたところで、華の無いやつが長く残ったためしはない。死んだ連中の世話などならなくても、真の生きの良さがあれば、その呪縛をも破り、世間の方から光が当たる。だいいち、やつらの「業界」とやらの方が、とっくに瀕死の沈没船じゃないか。そんな船にムリに乗せてもらわなくても、自分たちで劇団でも同人誌でも立ち上げたらいい。ネットでもなんでも、どんどん作品をアップしたらいい。デビューするのに、だれかの認可など必要ない。人の後押しがなければデビューできないなら、実力不足、時期尚早なだけだ。
重要なのは、デビュー作であろうと、絶対に版権本体は他人に渡さないこと。絶対に大御所と共作はしないこと。まして、クレジットされない(著作権の無い)ゴーストやアシスタントの仕事は論外。他人の「弟子」として時間や才能、ネタを搾取されるより、下手でも自分の責任で公開する作品を作り続けていくことこそ、一番の勉強。これから出版(公開)形態は、どんどん大きく変わっていく。そのときに後悔したくなければ、どんなに売れなくても、権利は丸ごと手元に残せ。それさえあれば、努力し続ける意味がある。努力さえしていれば、いずれやがてかならず時代も変わり、過去の版権がレガシーとして大化けする。若いうちに早くヒットを出したい気持ちはわかるが、ヒットだけが作品ではない。自分の作品が作りたいなら、まさに自分の作品だけを作れ。そのときだけのニセのファンなど、騒ぐわりに薄情なだけ。本当のファンは、作品の後から付いてくるものだ。(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。近著に『悪魔は涙を流さない』などがある。)

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