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「学業不振」は死の兆候/純丘曜彰 教授博士

INSIGHT NOW! / 2015年2月24日 12時28分

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純丘曜彰教授博士 / 大阪芸術大学

/いまどき単位が取れないのは、学校でなにかやらかしたから。教室外のなにかのトラブルに巻き込まれている危険性がある。きちんと問題を解決しないと、たとえ学校を辞めても、トラウマが本人の心を蝕み続け、社会生活、さらには人生さえも辞めることになる。/

 この時期、成績が出てくる。親にも送られるだろう。あまり芳しくないこともあるかもしれない。息子や娘に問い質せば、学校がつまらない、勉強に関心が持てない、進路変更したい、と言うだろう。だが、言葉の意味を真に受けるな。もっと問題は根深い。 学校が期待はずれだった。退学するにも、そんな風に学校のせいにしておく方が世間体もいいだろう。だが、退学したとしても、本当の問題はなにも解決していない。大半の学生は、きちんと単位を取って、ふつうに卒業していく。その意味で、「学業不振」の学生の本当の問題は、本人にある。たとえ学校を辞めたとしても、本人は本当の問題を引きずっている。未解決のままトラウマ(心傷)になっており、その後も本人を蝕んでいく。そして、学校だけでなく、社会生活から、さらには人生からも退却して、引き籠もりや自殺へ。
 昨今、文科省も、留年にはうるさい。だから、いまどき単位を出し渋る教員などいない。講義も試験も、学生の水準に合わせている。だから、よほどのことがないと、単位を落とすなどということはない。つまり、単位が取れないとすれば、それは、どうにもこうにも学校が単位を出すわけにはいかないような、よほどのこと、を、学校でやらかした、ということだ。
 単位を落とす、もっとも多い理由は、出席不足だ。半期15回の2/3以上の出席が無いと、評点の対象にならない。診断書を何枚も持ってくる学生がいるが、出席停止が義務づけられた法定伝染病でもないかぎり、そんなものがあっても、欠席は欠席。病気やケガ、事故には同情はするが、そもそも、そんな個人情報など、教員としては関わるわけにはいかないし、まして出席回数の改竄などするわけにはいかない。同様に、就職活動も、欠席は欠席。一般教養の単位もまともに取れてないくせに、かってに「卒業見込」を名乗って企業訪問をしているやつは、自分の現実を見ておらず、たいてい卒業もできない。
 しかし、出席不足、というのも、じつは問題の根が相当に深い。慣れぬ一人暮らしのせいで、ただ昼夜のリズムが乱れている、というだけなら、まあいい。良くない連中と良くないところに出入りしている、もしくは、心身の病気にかかっている可能性もある。学校ぼっち、というのも、ただ周囲と話が合わないのか、イジメや差別を受けているのか、それとも、鬱病や統合失調症で、人と関わり合う気力が失われているのか。
 突然にぷっつりと出席が途絶えるのは、おうおうに人間関係の激烈なトラブル。恋愛沙汰で修羅場になったとか、サークルやアルバイト先の先輩後輩、ゼミ仲間とケンカになったとか、さらには、騒いでいるのを注意した教員に逆ギレしてガンぐれ、呆れられて、捨て台詞を吐いて遁走した、とか。自分で謝りにいけばいいのだろうが、それが出来ずに、学校生活そのものから逃げ出す。出会い系でチンピラの美人局(つつもたせ)に引っかかった、わけのわからない英語教材やオカルトの通販で、とんでもない借金をこさえた、なんていう話も聞いたことがある。実際、変な団体とか、ストーカーとか、ブラックバイトとか、ややこしいやつらは、ウブな学生を標的に、学校のまわりにうろついており、本人のせいでなくても、こういうのにいったん目をつけられると、とても始末に悪い。
 ちゃんと出席していたのに、単位がもらえなかった、など文句を言う学生の多くは、出席だけして、白紙答案を出した、とか、課題や行事をバっくれてスっぽかした、とか。講義中、ずっと寝ていてた、ずっとスマホをいじりつづけていた、私語がうるさい、遅刻早退だらけ、等々。実際、どこの大学にも、鉛筆もノートも持ってこない手ぶら学生が少なくないらしい。スマホにメモりますから、なんて屁理屈を言うが、もちろん、実際にそんなことはやってはいない。近年は講義アンケートなどで、他のまともな学生たちから苦情が寄せられることもあり、こういうことをやらかす学生には、やはり単位を出せない。世間知らずに自我が肥大した反抗期の一種なのだろうが、18にもなって学校でやることでもあるまい。学校は、まあ、単位が取れないだけで済むが、こんなオレサマの屁理屈が世間で通るわけがない。いずれどこかで、とんでもないヤツに、命に関わるほどの、とんでもない目に遭わされるだろう。
 学生は学校に預けたのだから、学校が面倒を見てほしい、というのもわからないではないのだが、学校は24時間の保育所ではないし、大学生や専門学校生ともなれば18歳。本人の方から相談に来てくれさえすれば、カウンセラーからなにから手厚くサポートもできる。だが、そうでないと、本人のプライバシーの領域でもあり、教室外での個人的な問題には、むしろ学校が手を出すわけにもいくまい。学校ができるのは、せいぜい親(身元保証人)に学校での成績を送ることくらい。だが、そこから、もっときちんと自分の息子や娘の本当の問題を読み取ってほしい。「学業不振」は、今の時代、学業不振ではない。もっとまずい、命に関わる問題がそこに潜んでいる。(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門 は哲学、メディア文化論。著書に『夢見る幽霊:オバカオバケたちのドタバタ本格密室ミステリ』『悪魔は涙を流さない:カトリックマフィアvsフリーメイソ ン 洗礼者聖ヨハネの知恵とナポレオンの財宝を組み込んだパーマネントトラヴェラーファンド「英雄」運用報告書』などがある。)

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