ダブルプレイスのススメ/小槻 博文
INSIGHT NOW! / 2015年3月24日 14時6分
小槻博文 / 合同会社RegionWire
東京生まれ、東京育ちながら、大学進学を機に栃木県宇都宮市へ移り住み、現在は宇都宮と東京の“ダブルプレイス”で町づくりに取り組むKAMAGAWA POCKETの中村周さんの暮らしぶりを取材した。
地域活性情報サイト「地方創生のススメ」 http://www.regionwire.com/東京生まれ、東京育ちながら、大学進学を機に栃木県宇都宮市へ移り住み、現在は宇都宮と東京の"ダブルプレイス"で町づくりに取り組むKAMAGAWA POCKETの中村周さんの暮らしぶりを取材した。===物価が安く、人との距離感もちょうど良い===東京生まれ、東京育ちの中村周さん。そんな中村さんが宇都宮へ移住したのは、昔から建築に興味があり、国公立大学で建築が学べるということで宇都宮大学を受験したのがきっかけだった。初めて宇都宮駅を降りたとき、東京育ちの中村さんにとって、周りには高い建物がなく山が見える光景がすごく印象的だったと言う。中村さんはそれ以来8年間宇都宮に住んでいるが、物価が安いので美味しいものを安く食べられたり、家賃も安く維持管理コストがそれほどかからなかったりするのが宇都宮の一番の魅力だという。また都会では人間関係が希薄になってしまったり、逆に田舎は濃すぎたりするが、宇都宮の人たちは熱くなる時はとことんベッタリしながらも、普段は適度に距離をとる、その絶妙なバランスが気に入っている。そして現在中村さんは宇都宮で大学院生、フリーの建築家、そしてKAMAGAWA POCKET代表と3足のわらじを履き、平日の日中は大学院で研究を、平日の夜と休日は建築の仕事とKAMAGAWA POCKETのプロジェクトを進めている。また東京での仕事やプロジェクトに関わったりもしているため、月に数回は東京に戻っているそうだ。===町を元気にする空間づくり===そんな中村さんだが、学部生だったころは郊外にある大学の周辺ですべてを済ませていたので、ほとんど市街地にまで足を運ぶことはなかった。しかし大学院に進学後、駐車場などの空きスペースの利活用を研究することになり、市街地を拠点にしようと考えて色々物件を探して回った。そして市街地にも関わらず閑静なエリアであり、また釜川沿いの雰囲気が魅力的でほぼ一目ぼれをして、現在「KAMAGAWA POCKET」として使っている物件を見つけた。当初は個人のスペースとして考えていたが、40畳ほどあり一人で住むには広すぎること、また色々な人たちが集まって町づくりに楽しく参加できる場所になればと考えて、最終的に自宅兼アトリエ兼イベントスペースとして4か月ほどかけてDIYでリノベーションして、2013年末に「KAMAGAWA POCKET」をオープンさせた。そして現在ではKAMAGAWA POCKETを拠点に、定期的にイベントを開催したり、DIYで空き家をリノベーションしたいという人のサポートをしたり、またこのエリアはデザイナーが多いので、デザインの図書館をつくるプロジェクトなども現在進めている。なお中村氏にとってKAMAGAWA POCKETは組織というよりもライフワークの一環というほうが近く、したがって固定メンバーではなく、プロジェクトごとに有志を募って、参加したい人が自発的に取り組むスタイルを採っているそうだ。だから組む相手もきちんと選んでいる。KAMAGAWA POCKETの話を聞きつけて相談を受けたり、人づてで紹介されたりすることも多いが、「こんなことをしたいのだけど、力を貸してほしい」「こんなことやったら、きっと面白いに違いない」など、お互いが手を取り合って進めることが出来る話でなければ決して長続き出来ないという想いのもと、ちょっとでも違和感を覚えた場合には断っているという。===KAMAGAWAから新しい文化を発信!===そんな中村さんだが、今の時代仕事自体はどこでも出来るため、将来的には他の地域、場合によっては海外に出ていくこともありうるという。「"土地"に対するこだわりよりも、そこで"何"をするのか、"誰"とやるのか、そちらのほうが私にとっては大切ですね。」(中村さん)ただ宇都宮でやりたいことがまだまだあるし、一緒に組む相手にも恵まれているので、当面は宇都宮をベースにしていきたいし、宇都宮でやりたいことが続く限りは頑張りたいという。そのやりたいことは何なのか、最後に聞いた。「このエリアを拠点に面白いこと、新しいことなどさまざまな実験的なプロジェクトを次々に行うことで、『あそこに行けば何か面白いことに出合える』と県内外の人たちに思ってもらえるような、釜川沿いをそんな新しい文化の発信地にしていきたいですね。そうなると面白い人たちが自然と集まるようになり、そしてその人たちとのコラボレーションによってまた新しいことが生まれてくるのだと思います。」そんな"活気"の循環づくりに向けて、中村さんの宇都宮での挑戦はまだまだ続いていく。
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