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テレビ降板逆ギレの勘違い/純丘曜彰 教授博士

INSIGHT NOW! / 2015年3月28日 2時20分

テレビ降板逆ギレの勘違い/純丘曜彰 教授博士

純丘曜彰教授博士 / 大阪芸術大学

/テレビのコメンテーター依頼は、基本的にすべて単発。その日の話題に合わせて、そのつどに最適の人選をするだけ。それを、降ろされた、政府の圧力だ、などと陰謀説で逆ギレするのは、自分はずっと毎回、呼ばれて当然、とでも勘違いしているのだろうか。/

 番組改編期。番組を降ろされた、政府の圧力だ、などと陰謀説を喚き散らすコメンテーターがいたりする。だが、もともと番組の出演依頼は、基本的にすべて単発。登板はあっても、降板は無い。毎週、呼ばれていた、としても、それはたまたまであって、けっして定期レギュラー契約ではあるまい。それをかってに既得権のように勘違いして、降ろされた、と逆ギレするシロウトは、局としてはさぞ迷惑だろう。
 根本は、昨今の株式会社の問題と同じ。テレビ局は誰のものか。絶対に、個々の番組の出演者たちのものではない。民放は株式会社ながら、国民こそが、公共の電波帯を供与し、独占使用を認めることにおいて、その事実上の現物出資者であり、そのオーナーだ。ここにおいて、その経営者は、その公共性に鑑みて番組編成方針を決める。だから、民放上層部が自局の個々の番組の方向付けをするのは、日常業務の一環。とくに改編期であれば、見直しは当然。
 むしろ問題は、局内にあって独立勝手に振る舞うヤクザのような番組集団。とくに映画会社の系列の寄せ集めでできた局、東京の外部スタジオを根城に使っている番組、特定制作会社委託の既得権枠では、こうした長寿番組の「悪性腫瘍」が常態化しやすい。それは、特定のプロデューサーたちを中核とする私兵集団で、安定した視聴率を背景に、営業を飛び越してスポンサーの強い支持を直接に取り付けており、局の編成側も口約束などの内情がわからず、手も出せない。 もちろん、それでうまくいっているうちはいいのだが、おうおうに局内外の資金の流れが不明瞭になり、いろいろな番組利権の怪しい私的なバーター取引の温床ともなって、醜聞が吹きだまり、いずれ大がかりな外科手術、さらには番組そのものの打切りをしなければならなくなる。しかし、これをやると、その穴は大きく、その後にそれ以上に当たる番組を投入できることはマレで、手を入れた側の責任問題となる。だから、ずっと、みんな見て見ぬふりで、ウミが溜まる。
 どこぞのアホな政治家のように、だれだれは偏向している、使うな、などと局に言うのは、逆に自分の偏向のひどさを晒しているオウンゴールのようで、話にもならない。自分を外すのは偏向だ、と喚き散らすのも、まったく同じ。公平・中立・客観というのは、番組として、局としての問題で、個々のコメンテーターは、自覚の有無の差はあれ、それぞれ左右に振っているに決まっている。それらの人々をバランス良くキャスティングし、全体として、幅の広がり、視野の多様性を確保することこそ、制作側の使命。番組内でその自律自浄ができないのであれば、病巣が悪化する前に返り血覚悟で編成や上層部が大ナタを振るうこともある。
 偏向かどうかは、「オーナー」の視聴者が決める。これは視聴率の分計で、かなり明確に出る。気に入った見解で視聴率は上がるが、気に入らない見解であっても、聞いてみようと思わす人であれば、やはりきちんと視聴率は上がる。人と話を噛み合わせる気の無い、一方的にアジ演説をするだけの「偏向」した人は、露骨に視聴率が下がる。もちろん、視聴率が取れなくても放送すべき内容はある、とする考え方もあるが、チャンネルを変えられてしまうなら、放送したことにはなるまい。今の時代、youtubeその他の代替映像伝達手段は整ってきており、そちらでどうぞ、というだけのこと。
 番組は出演者のためのものではない。いま、視聴者は誰のコメントを聞いてみたいと思っているか。誰のコメントが視聴者の参考になるか。それを真剣に考えるなら、その日、その話題に最適の人選をするだけのこと。登板はあっても、降板など無い。(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門 は哲学、メディア文化論。著書に『夢見る幽霊:オバカオバケたちのドタバタ本格密室ミステリ』『悪魔は涙を流さない:カトリックマフィアvsフリーメイソ ン 洗礼者聖ヨハネの知恵とナポレオンの財宝を組み込んだパーマネントトラヴェラーファンド「英雄」運用報告書』などがある。)

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