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サプライヤモチベーションマネジメント/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2015年4月2日 0時37分


        サプライヤモチベーションマネジメント/野町 直弘

野町 直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

昨年末の投稿で私はプチ予言しています。

「・・・新しい日本型調達・購買の方向性が生まれてくることです。私はこれをサプライヤとの「協働」と捉えています。ここでは特にサプライヤとの関係性作りがより重視され優秀なサプライヤをより大切にしていく動きがでてくることでしょう。」

「・・特に特定の業種や品目については供給力不足が叫ばれています。サプライヤの囲い込みや戦略サプライヤ制の導入、サプライヤのモチベーション向上をどうやっていくか、頭を悩ませはじめている企業やバイヤーも少なくありません。このような視点からサプライヤとの関係性を捉え、サプライヤのニーズを把握した上で、本来日本企業が重視し、強みとなってきた「協働」をいかに進めていくか、今後数年間で多くの企業にとって正に重要な視点となってくることは間違いないでしょう。」

「共通するのは「コスト至上主義」からの訣別という点と言えるでしょう。来年は調達・購買分野でもサプライチェーン全体の強化を目指し、一方でこのような「脱コスト至上主義」的な動きが益々出てくることをプチ予言しておきましょう。」

この傾向は昨今益々強くなっているようです。

先日もある企業からこんな相談を受けました。

それは、ある特定の業種でサプライヤ評価を行うソリューションを開発している。しかし、このソリューションは評価を通じていかにサプライヤのモチベーションを高めさせるかということを目的にしたものだそうです。もしくはモチベーションが高いサプライヤを見つけるためにどのような評価をすべきか、という考え方でソリューション開発がなされているとのことでした。

このようなソリューションが必要となった理由としては、この業界の特性として企画提案力がある人的リソースを重要顧客担当として張り付けており、顧客の差別化を図っている業界だからです。つまり顧客重要度がAランクに入らないと如何に大手の企業でも優れた提案が引き出せない状況なのだそうです。逆にAランク顧客に入ることがよいサービスや提案を受けられる条件となります。Aランク顧客に入るためにはサプライヤと協働を進めるための様々な仕組みや買い手企業側の魅力が高くなければなりません。

こういう傾向が売り手企業(サプライヤ)側から出てきていることは注目すべきです。サプライヤから見た買い手企業としての魅力度を上げ重要顧客として捉えてもらうことが、よいサービスや提案を受けるための必要条件になっています。言い換えると「サプライヤモチベーションマネジメント」によりサプライヤのやる気を上げることが買い手企業にとって必須ということです。

モチベーションマネジメントの事例や手法をネット等で調べると、多くは従業員のモチベーション向上について捉えたものです。所謂B2E(Employee)の領域ですが、この領域でのモチベーションマネジメントの研究や手法開発は多く行われています。B2Eのモチベーションマネジメントの施策についてこれらの重要なポイントをまとめると以下のような5点にまとめられます。

1.ニーズや願望を理解しリーダーシップを示す
2.成長やそのための機会を与える
3.意味のある仕事をやらせる
4.表彰と報酬
5.人に焦点をあて、評価され耳を傾けられていることを理解させる

これらはB2Eのモチベーションマネジメント施策のポイントですが、よく考えてみるとB2Bでも同じことが言えることがわかります。当てはめてみると。。

1.(サプライヤの)本来のニーズや願望を把握する
:サプライヤの本来のニーズとは何でしょうか。私が尊敬するあるコンサルタントがおっしゃっていました。「サプライヤの本来のニーズは継続的な売上の確保でも、収益の拡大でもない。サプライヤの経営者は買い手企業との取引を通じて自社の競争力が強化され、他社の売上向上にそれがつながっていくことを望んでいる」と。

2.(サプライヤの)成長やそのための機会を与える
:1にも関係しますが、サプライヤにコストダウン活動をさせることは、サプライヤ自身の競争力強化やそれに基づく他社も含む売上げ拡大の機会を与えることにつながります。ですから意味のあるコストダウン活動はサプライヤに機会を与えることにつながるのです。

3.(サプライヤにとって)意味のある仕事をやらせる
:あるサプライヤは「どのような仕事をやりたいか」と聞かれたときにこう答えたそうです。「儲かる仕事、、ではなく後世に名が残る仕事、難しい仕事をやりたい」と。

4.(サプライヤの)表彰と報酬
:サプライヤに対する表彰制度を持っている企業は少なくありません。一方で表彰自体がマンネリ化しているケースも少なくありません。しかしサプライヤにとってみると、バイヤー企業に「よくやってくれた。」と本心から言ってもらえることはとても励みになります。大切なのは「本心から」表彰すること。
また報酬についてはリーズナブルな報酬を求めます。ボロ儲けしたい訳ではなく、仕事に応じた赤字にならない報酬を与えられることが重要なのです。

5.(サプライヤが)評価され耳を傾けられていることを理解させる
従来から申し上げ続けていますが、サプライヤとの間では双方向のコミュニケーションが求められます。そのためにはサプライヤの本音を聞く場やそのためのVOS(Voice of Suppiles)の活動は非常に有効です。サプライヤの声を聞きそれを改善につなげるという活動はサプライヤモチベーション向上に有効であることは自明の理でしょう。

このようにモチベーションマネジメントのコツについてはB2EもB2Bも何も変わらな
ことがわかります。サプライヤモチベーションマネジメントの前提となるのは自分を理解してもらい相手を良く知ることです。自分たちがこういう信頼関係や協働の環境を作りたいことをサプライヤに理解してもらう。また、相手の会社のカルチャーを知る、営業パーソンを知る、工場を知る、事務所を知る、これも重要です。こういう相互理解の活動を通じて相手がこちらを向いてくれているのかを知り、もしくは向いてくれるかどうかを知る、このような相互理解はサプライヤモチベーションマネジメントの前提となります。

先ほど述べたように買い手企業だけでなく売り手企業も売り先を選ぶ時代になっているのです。しかし、売り先は必ずしも購買金額の多寡で売り手企業を選んでいる
ではありません。そこには購買金額の多寡以外の個別のなにかが含まれています。ですから相互理解を深め、サプライヤモチベーション向上の施策を地道に講じることで、Aランク顧客として取引をしていこう(売ってもらおう)というのがこれからの時代に求められていることなのです。

ある企業の調達担当役員は「評価が高いが信頼関係ができていない会社よりも評価が低いくても信頼関係が高いサプライヤと取引をする」と宣言されていました。またある企業の調達担当役員は「先遣隊」と称して生産拠点を作る前に購買部門がグローバルで優秀なサプライヤを探す部隊を持っていて信頼関係を作っていく、と言われています。否が応でも既にこのような時代に入っているのです。

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