そのセキュリティ・ソフト、本当にインストールされていますか?/日沖 博道
INSIGHT NOW! / 2015年4月28日 2時29分
日沖 博道 / パスファインダーズ株式会社
先日のauの海外通信明細書の顛末に続き、我が家が経験した「もう一つのお粗末」をレポートしよう。ちょっと情けないといった側面もあるが、もしかすると同様の事態に陥っていて実害を蒙りかねない世帯もあるかも知れないので、注意喚起にもなると考えるからだ。
我が家ではPCおよびその周辺機器に関しては、その大半を近所のPCデポで長年購入してきた。近所といっても車で行くしかない、隣町にある店舗だ。入口は交通量の多い交差点近くに面しており、我が家の方向からは入るのも出るのも不便なロケーションだ。
小生が経営者だったら決して選ばないようなそんな店舗で長年購入し、しかも有料の会員契約までしているのは、PCデポが専門性の高いPCショップだと評価してきたからだ。
PC・周辺機器の購入だけなら他にいくつも選択肢はある。最寄りの駅にはヤマダ電機、よく行くモールにはビッグカメラがそれぞれあるし、品揃えも上だ。値段だけを考えたら、アマゾンをはじめとした通販ショップのほうが明らかに安くて手軽だ。
でもPC・周辺機器の購入後の接続、ソフトの更新、ハードに関するトラブルや修理などで様々な相談が生じることを考慮して、安さよりも店舗スタッフの知識の確からしさに軍配を上げ、この店を頼りにしてきたのだ。
でも一方で、一部ベンダーのコールセンター対応がレベルアップし、しかも技術進歩のお蔭でコールセンターからの遠隔操作すらできるようになり、リアル店舗の有難味が着実に減っていることは小生も実感している(店舗を運営する経営者には気になる点だろう)。
それに加えて最近、この店に対する小生の信頼感に陰りを生じさせる事態が続いているのだ。
はじめは某メーカーのノートPCに関する修理だった。高額なビジネスユース用の製品だったが、持ち運びを常態とする小生の使い方に耐え切れなかったのか、時折バッテリーなどのプラグのゆるみが生じる度にフリーズするので、現物を持ち込んで修理をお願いしていた。しかしPCデポは受付窓口をしているだけで、診断すら実質的にできず、付加価値がないと感じた。
でもこの時点では、小生のPCデポに対するロイヤルティはほとんど揺らいではいなかった。
しかし最近続けて直面したのが、セキュリティ・ソフトの契約・説明に関しての不手際だ。実はその種は約1年前に蒔かれており、それに気づいたのが最近だというものだ。
約1年前の3月、大学入学を控えた娘が自分用のPCを欲しがった。そしてPCデポに2人で出掛け、娘が欲しがっていたMacBook Airを購入した。
同店でのその製品には、セキュリティ・ソフトのKがバンドル(パッケージ販売)されており、「マルチデバイス」(面倒を見る対象は5台まで)かつ「年間更新版」(放っておくと自動更新)だった。
我が家では別のセキュリティ・ソフトWをずっと使っていたが、PCは既に3台あってWの対象台数ぎりぎりだった。そのため新たに増えた娘のPCのセキュリティ用にはちょうどよかったのだ(既存3台のうち1台は1年以内に廃棄を見込んでいたので、その際に娘のセキュリティ・ソフトもWに切り替えようと考えていた)。
さらに購入の際には、アプリとしてMS Officeも追加購入し、一種の「お任せサービス」的なアプリケーションインストール・サービスをお願いした(ここで大いなる誤解が生じたのだが、この時点では全く気づかなかった)。そしてセットアップが済んだ状態での新品の製品が我が家に後日届き、娘は機嫌よく大学の履修登録などを進めていたのを覚えている。
さて約1年経過した、この3月だ。何となく虫が知らせたのか、小生は同店の契約書類などをざっと確認していた。そしてセキュリティ・ソフトKに関する自動更新が1年単位であることに気づいた。
ソフト購入時に発行されたサービス会員登録証(PCデポではサービス購入ごとに発行されます)によると発行が3月30日なので、急いでPCデポのコールセンターに電話し、セキュリティ・ソフトの切り替えを相談した。
そこで意外なことが分かった。既に2月末時点で自動更新になっており、年間料金の引き落としもされていたのだ。
確かにその月の月額料金がいつもより高いなぁと思ったことを思い出した。コールセンターの窓口の人いわく、「(たとえ1日といえど)3月からの契約なので、2月末までに契約解除を申し入れていただかないと、自動更新となります」とのことだった。
サービス会員登録証には、そうした注意事項はもちろん、サービス期間すら記載がなく、あるのは発行日だけなのだ。そして3月末に購入したのに3月頭からの使用者と同じサービス対象期間なのだ。しかもそうした注意すべき事項を、店舗でも全く伝えてもらっていないし、書類にも全く記載していないのだ。
正直あきれ返る思いだったが、コールセンターの人に怒っても仕方ない。次回の年間契約更新時に解約するかどうかを検討するため、改めて最新のサービス会員登録証を発行していただくよう、依頼した。
その際にはきちんと契約期間を明記するようお願いしたのだが、当初かなり抵抗された。後日、自宅に送付されてきた最新のサービス会員登録証を見ると、一見そうした契約期間が明記されていないようだった。しかし最後のメモ欄に手書きで、契約期間と契約終了日が記載されていた。
なるほど、PCデポの契約管理システムには、顧客に対し契約期間を明記し伝える機能は備わっていないことが、これでよく分かった。
本件は相対的に罪の軽いものだが、もしかすると確信犯的なものかも知れない(顧客の「うっかり自動更新」を狙っているということ)。正直、同社に対して失望し、少し不信感も芽生えた。
その翌週だったか、またPCデポで自宅作業用の新しいラップトップPCを購入し(小生も懲りないですね)、旧PCからのデータ移行などを進めた。しかし完全な移行にはまだ日数が掛かると判断し、当面は廃棄せずに旧PCを残すことにした。そうなると一時的にセキュリティ・ソフトWの対象台数をオーバーしてしまう。
そこでハタと思い出し、半ば強制的に自動更新させられたセキュリティ・ソフトKをこちらのPCにもインストールした。するとWと違ってKの場合、画面の下部で鼓動しているような動きをすることに気づいた。
そこで小生は娘に「Kの動きは面白いね」と話し掛けた。すると娘はきょとんとして、「Kって何?」と問い返すのだ。小生と娘の間でしばらく、噛み合わないやり取りが続いた。娘は自分のPCではそんな動きをするソフトはないと言い、しかもウイルス駆除などのレポートも受け取ったこともない、定義ファイルの更新もしたことがないと言う。
ようやく事態がおかしいことを感じた小生は、娘のMacBookの画面をみたが、小生の使っているWindowsと違って、インストールされているソフトを確認する方法が分からない。PCデポに電話し、「もしかすると契約しているはずのセキュリティ・ソフトがインストールされていないかも知れない」「どうやればインストールされているか否かを判断できるのか」などと問い合わせた。
しかし電話越しでは分からないとのことで、店舗に娘のPCを持ち込んで診てもらうことになった。数日後(何とか娘と小生の都合を合わせて)、店で現物を診てもらうとすぐに、セキュリティ・ソフトは全くインストールされていないことが分かった。
当時のサービス会員登録証には細かい記載は何もないが、たまたま残していた店発行の「パソコン購入メモ」(一種の購入商品・サービスの明細書)には「設定」の項目にしっかりとチェックマークがついているが、「万全セキュリティ」の項目にはチェックマークが入っていない。店側に好意的に解釈すると、セキュリティ・ソフトは売ったけど、インストールを引き受けてはいない、ということだろう。
しかしソフトのインストール・サービスをお願いした当方は、その対象にMS Officeと一緒に購入したセキュリティ・ソフトも当然含まれていると解釈し、全く疑っていなかった。当然、娘も小生もそれに関し「セキュリティ・ソフトはご自分でインストールしてくださいね」といった注意は一言も受けていない。
事情が判明してから、PCデポの店の人にはしっかりと苦情を告げた。「確かに書類上はそちらにセキュリティ・ソフトのインストール責任はないのかも知れないが、セキュリティ・ソフトを売っておきながら、そのインストールに関し何の説明もないし、説明書も渡されていません。明らかに片手落ちです」と。
当時担当してくれた人とは別の方だったが、恐縮していた。今後注意をしていただくよう要請し、こんなことが続いてちょっと不信感が募っていることも伝えた。
どうやらたまたまウイルスによる被害はなかったようだが(Windows PCでなくマイナーなアップル製のMacBookだったことが功を奏したのかも知れない)、今考えると冷や汗ものだ。何せ1年間、セキュリティ・ソフト無しの状態で娘はPCを使っていたのだ。しかもその間、年間のソフト使用料金だけはしっかりと徴収されていたのだ。やっぱり少し腹が立つ。
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