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大阪をサルどもから守ろう/純丘曜彰 教授博士

INSIGHT NOW! / 2015年5月11日 17時3分


        大阪をサルどもから守ろう/純丘曜彰 教授博士

純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学

いまさら東京のサルマネなんかしたがるやつの気がしれない。たしかに東京は、いろいろな意味でもう限界だ。非常時のことを考えれば、そのバックアップも必要だろう。しかし、だからと言って、なにも大阪が、東京の劣化コピーになって、わざわざ東京を支えてやる義理もあるまい。そもそも大阪をいまさら、あんな風に完全に行き詰まってしまっている東京のマガイモノにしようなどというのは、政治的な見識と展望に欠ける。


 もちろん大阪だって、良い状況じゃあるまい。だが、東京のサルマネをしたって、永遠に東京の後塵を喫するだけ。大阪は大阪、関西は関西という郷土愛、地元としてのプライドは無いのかね? 大阪を変えると言うなら、将来、東京に取って代わるような、東京なんかとは似ても似つかない、まったく新しい日本の首都のあり方、大都市の形態を世界に提案していくくらいの高邁な理想と広大な気概は無いのかね?


 東京では、箱根より西、東照宮より北は、ニュースもならない。東京人(故郷を捨てて上京してきた田舎者たち)からすれば、関東以外は、カネと労働力を吸い上げるためだけの劣等国民どもの植民地にすぎないから。なかでも関西は、東京では、ここにも書けないほど散々な言われよう。関西に行く、と言っただけで、連中は、早く東京に戻れるといいね、だからね。


 だから、実際に来てみるまで、関西なんて、まったく期待していなかった。ところが、こうして住んでみると、意外に居心地がいい。第一に気候が穏やかで、災害も少ない。さすが、日本列島のどこでも選べる時代に、最初に多くの都が作られただけのことはある。第二に、極度一極集中の東京のように、すべての交通が都心に向かっていて渋滞も混雑も慢性便秘状態なのにどうしてもそこまで毎日出て行かないと仕事も娯楽も無い、というわけでもなく、関西は、ヨーロッパなどと似て、いくつもの中堅都市が緩やかに編み目状に繋がっており、どこへ行くにも屁のようなもの。


 第三に、どこでも同じ大手チェーンと巨大マンションと安物新興住宅地だらけの関東と違って、大阪は大阪、京都は京都、神戸は神戸、奈良は奈良、と、都市や気風に多様性がある。滋賀や和歌山、香川まで入れれば、日本海から瀬戸内海、太平洋まで、さらにいろとりどり。文化も観光地も世界遺産級のすごいものが揃っている。マスコミが無理やりはやらそうとしているだけの流行を強迫観念のように追い求め続ける巨大都市東京を横目に、関西はそれぞれの地域の歴史と伝統を守りつつ、個々が目利きでいろいろ掘り出し、こっそりと新しいもの好きだったりする。


 ひとことで言うなら、関西はフトコロが深い。見栄っ張りの東京人のように、いろいろわざわざ自慢したりしないが、それは、どないでっか? に、ぼちぼちでんなぁ、としか答えず、世間の嫉妬をムダに買わない生活の知恵。いつも、もうあきまヘんわぁ、などと言いながら、かれこれ千五百年、それでなんとなくやってきているのが、関西のすごいところ。


 東京なら、もう東京にあるんだから、それでええやん。そんなに東京が良けりゃ、われだけかってに東京に行きさらせ。べつにだれも止めへんで。大阪には大阪の良さがあるやろ。関西には関西のすばらしさがあるやろ。なのに、東京が、東京が、大阪も東京のような世界のメトロポリスに、って、それ、日本の下町暮らしのくせに、変なスーツを着て、ミーがチミたちの貧乏くさい町内を、おフランスみたいに素敵にしてあげるザンスっ! って言ってたイヤミのよう。まあ、そういう劣等感の塊みたいな人がいて、それにかんたんに騙されてこき使われるチビタみたいな人がいて、それらをみんなが呆れながら許容しているのもまた大阪らしいっちゃ大阪らしい良いところなんだが。


(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。著書に『夢見る幽霊:オバカオバケたちのドタバタ本格密室ミステリ』などがある。)

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