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主観的な経営は売上目的(我利)で、客観的な経営は顧客目的(利他) /小笠原 昭治

INSIGHT NOW! / 2015年7月3日 22時56分


        主観的な経営は売上目的(我利)で、客観的な経営は顧客目的(利他) /小笠原 昭治

小笠原 昭治 / インターアクティブ・マーケティング

【5-1】人は、生きるために、主観的に考える

人間、誰しも、

「お腹が空いたから、何か食べよう」

「眠くなったから、ひと眠りしよう」

という生理的な欲求が働きます。

生きるための欲求ですから、生存欲求ともいいいます。

この欲求に応えるのが、飲食業や住宅業、宿泊業です。

次に、生きるため、危険を回避しようと、防衛本能が働きます。

この欲求に応えるのが、警察や消防などの行政機関だったり、医療や土木だったりします。

飢えることなく、身の危険を感じることなく、安全に生きていける環境を得られたとき、人は、愛情を求めます。

この欲求に応えるのが、サービス業です。

facebookやmixiに代表されるSNSや、結婚式等のブライダルが典型的。

ブライダル業界の他にも、たとえば、レストランはサービス業です(喰えるだけでいい一杯メシ屋は飲食業です)

それが発展すると、他人から認められたいと思うようになります。

特に、男性は、社会的な地位を求め、女性は、美を求めます。ダイエットや、肩書きや、家や、車や、宝石や、ファッションです。

それも満たされると、次に、自分の可能性を最大限に実現しようとします。自己実現です。

以上、マズローの五段階欲求説の通り、人は、生きるために、

自分の欲求に忠実に、自己を中人に、主観的に

考えます。生理的な欲求と、安全の欲求は、人間のみならず、鳥にも魚にもある生物的な根源欲求ですから、生物としての本能が、それを求めます。

その次の、

  • 所属の欲求と、
  • 承認の欲求と、
  • 自己実現の欲求

は、人間ならではの欲求で、たとえば、

  • 家庭を持ちたくて結婚する
  • 誰かに認められようと仕事する
  • 自己実現のためにスキルアップする

ということです。余談ですが、五段階目の自己実現(セルフ・リアリゼーション)は、アブラハム・マズローの説ではなく、心理学者であるクルト・ゴールドシュタインの説を、マズローが自論に組み入れたものといわれています。


【5-2】企業は、自社や、業界を優先して考える

いきなり、マズローの五段階欲求説から始まりましたが(マズローでなくても、マレーでも、エリクソンでも、メラビアンでも、ワトソンでも、誰でも構いませんでしたが)、人は、

主観に従って考え、行動する

生き物であることを心理学者たちは検証してきました。

  • 良くいえば「自分を大切にする」生き物であり、
  • 悪く言えば「テメー勝手」な生き物

です。一言に凝縮しますと、人は、

主観

的に、自分を中心に考える生き物です。

参考までに、主観の意味を、幾つかの辞書サイトで調べてみたところ、主観とは、

  • 自分だけの見方にとらわれているさま
  • 対象について認識・行為・評価などを行う意識のはたらき
  • 自分ひとりだけの考え
  • 主観に基づくさま(←この説明には、笑ってしまいました。辞書の名誉のために、辞書名は伏せますが)

主観的に考えるなんて、あまりにも当たり前すぎて、バカらしいように思えますが、それが人間の本質であり、 これが、個人の集合体である法人になりますと、

自社の考えで、自社の都合の良いように、自社を中心に

考えます。範囲を広げれば、

業界の考えで、業界の都合の良いように、業界を中心に

考えます。他社や他業界の立場では考えませんし、他人である

お客さんの立場

では考えません。それが、自然な成りゆきです。

【5-3】主観営為の例

どういうことか、よくありがちな光景に、あてはめてみましょう。

あなたが、一杯メシ屋で注文したとき、

「大盛りにして下さい」

と、リクエストしたとしましょう。

あなたの考えでは「大盛りにしてほしい」。ところが、お店の反応は、

「すいませんね、お客さん。ウチは、大盛り、やってないんですよ」

「え?差額を払うから、大盛りにしてよ」

「規則なんです。できません」

と、あなたと、お店の人、2人の

自分の考え同士がぶつかり

ます。そこで、

「ナニ言ってんだい!大盛りにするなんて、カンタンじゃんか」

と抗議しても無駄。ルールは、提供する側が作ります。ときには

  • 大盛り用の什器がない
  • オペレーションに支障をきたす

といった(自社にとっての正当な)理由を掲げて、現状を保守します。これが、顧客の観点ではなく、

売る側の観点で、営利追求活動が行われる、主観営為

です。その結果、お客さんは、

「じゃあ、普通盛りで、イーよ」

と言いつつも、心の中では(でも、大盛り食べたかったなあ)

こうして、不満足が発生します。

それなのに、お店の看板には「お客様の満足が第一」と掲げてあったりします(笑)

もちろん、どちらが正しいということではありません。

人は、自分の考えで、自分に都合のいいように、自分を中心に考えます

から、相反する考え方が

衝突し、解決策が見つからなかった時、どちらかが不満に思う

ようになっています。これが、CS(顧客満足)活動の難しいところです。

決して大げさな話ではありません。果ては、総力を挙げてでも、自分の考えを通そうとします。その最終形態が、戦争です。

【5-4】主観の限界と、客観の必要性

決して、人間の欲求に基づく主観営為が、悪いということではなく、主観営為は、自然な流れであり、モノが無い時代は、それで通用しました。

モノ不足ですから、大盛りどころか、食べられれば、それで充分でした。お腹が一杯になれば、満足しました。食事や、食品のみならず、市場に無いものを作れば、売れました。

「ある」か?「無い」か?の開きは大きく、正数1と、2の間隔は、等間隔ですが、0と1の間隔は、無限大。「無い」というだけで市場が成り立ちます。戦後の成長社会には、市場に無いものが沢山ありました。

ところが、成熟社会になると、「無い」ものが無くなりました。なにもかも「ある」のです。

こうなると、

主観営為は限界

に達します。ただ単に「あります!売ってます!」では、何の魅力もなくなりました。

買う側は、「ある」だけに飽き足らず、さらに

付加価値も「ある」商品を求める

ようになりました。プラスαの付加価値が必要な背景です。

付加価値を探すには、買う側が、何を考えているか、知り、

買う側の観点で、客観的に考える必要

が出てきました。客観的とは、

主観の対称

で、商売で言えば、売る側ではなく、買うお客さんのことです。

面白いことに、

客が観ると書いて客観

と読むわけですから、

客観とは、顧客の観点

と解釈できます。

【5-5】客観営為とは?客が観ると書いて客観と読む

顧客がどう観ているか、知るには、訊くしかありません。聴いて、慮るしかありません。

  • 顧客の意見に耳を傾け
  • 顧客の観点で考え、
  • 顧客の求める商品やサービスを作り

提供する。これが、

客観営為

です。これ即ち、マーケティング。日本語訳すると、

顧客の為(利他)

が、己が為になります。

客観営為が、マーケティングであるからこそ、マーケティングは、リサーチに始まり、リサーチに終わります。

決して、主観を捨てるということではありません。主観を捨てては、自己分析できなくなります(たとえば、ターゲット - 欲しい顧客 - が不鮮明になります)し、

お客さんさえ、欲しいことが気づいていない新製品を作り出すメーカーにとっては、致命的。

主観の対称に位置する客観で営みを為すには、主観を捨てるどころか、確立しなければなりません。

主観営為は、誤りではなく、人として、法人として、業界として、当然の考え方です。が、

主観は我利

に発しますから、主観営為が、誤った方向へ向かうと、恐ろしいことになります。

自社さえ儲かれば、「客なんざ、死のうが苦しもうが、どうなってもいい」という我利我利亡者になります。

我利我利亡者も、食品テロリストにまで落ちぶれたら、お終い。

「食品テロなんて、大げさな」
と思ったら、大~間違い。

戦意の無い一般市民を巻き込む無差別大量殺人行為は、地下鉄サリン事件以降、政治的な目的がなくても、テロ行為と呼ばれるようになりましたね?

では、神経生理機能に障害を及ぼし、最悪、死に至るメタミドホスに汚染された中国産のもち米を売る行為は『食品テロ』ではありませんか?

もしも、テロリズムなら、コメの偽装で揺れた三笠フーズの社長や、サン商事の顧問は、立派なテロリストということになります。

他にも、ミートホープ、船場吉兆など、沢山の会社が、主観営為による、誤った方向へ、経営の舵を取りました。相次いで発覚した食品偽装事件です。

主観営為は、自然な流れですから、きっと、ドコかで、今も、静かに、進行中でしょう。

そのような経営者は、主観営為の魔の手に、会社の将来を、社員の生活を、委ねる危険性があります。

毒入り商品を販売して、利益を得るなど、経営者として、最低・最悪の我利我利亡者です。 もはや、廃業や倒産では済まされません。人として、生きる価値なし。畜舎で余生を過ごすべし。

現在のような成熟社会では、主観営為に加えて、客観営為の考え方を、自社の基軸にしなければならないと筆者は考え、社是に掲げました。

あなたは、どう考えますか?

社是とは?http://www.insightnow.jp/article/8400

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