【変革を科学する#12】知的創造の場(WPLの仕掛け)/森川 大作
INSIGHT NOW! / 2015年10月16日 15時33分
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森川 大作 / 株式会社インサイト・コンサルティング
人の創造とは、ゼロから生み出すのではなく、個人の暗黙知→形式知化されて交換→個人の暗黙知というプロセスであるというのが、野中先生のSECIモデルの意味するところです。
さて、職場においてこの理論を適用するには、これまで2つのアプローチが取られていました。一つは、風土という場の視点で知的創造をどのように促すか、もう一つは、物理的な場という視点で知的創造をどのように促すかです。
前者の風土に関しては、企業教育によるところが大きいでしょう。18世紀の一斉授業スタイルは今日においても継承され、企業教育と言っても教室に詰め込んで先生が教える研修スタイルの域を出ていません。これでは、いくら知的創造と言っても、仕事は教えてもらうものということになります。そこで、職場での学びを促進するWPL(Work Place Learning)が注目を集めるようになってきました。これは、上司のできることを部下に教える(すなわちCopy)と言う意味でのOJTではなく、上司の知らないことを部下と一緒に考えて学ぶという取り組みです。
後者の物理的な面に関して考えると、欧米企業では個室やパーティションで区切られた個室や大きなテーブルの周りに荘厳な椅子を配置する距離のある会議室、日本企業では会社の組織図をそのままデスクの配置図にしたようなオフィス空間での仕事が当たり前で、ようやく最近、コスト削減の視点からフリーアドレス制などの取組みが見られるようになりました。
一方、仕事におけるパラダイムは、2つに大別されます。1つは「情報処理パラダイム」で、大きな仕事はできるだけ互いに独立する単位に分けて分業し階層化を高めて効率を図るという世界。この世界では、やるべきことがはっきりしていて競争は量的効率性で決まるため、他の人に相談しなくても個人で仕事を進められる体制作りが鍵となります。もう1つは「知識創造パラダイム」で、だれも経験したことのない答えが分からない仕事をできるだけ相互に情報を交換することで生み出し学びながら作っていくという世界。この世界では、競争は質的高度性で決まるため、できるだけインタラクティブな関係を作り出すことが鍵となるわけです。
このように考えると、企業教育が情報処理パラダイム(=集合研修型)+職場環境が知識創造パラダイム(=フリーアドレス型)でも、企業教育が知識創造パラダイム(=WPL型)+職場環境が情報処理パラダイム(=独立固定席型)でもダメで、その両方が知識創造パラダイムに基づいて設計されなければならないということになります。したがって、企業教育におけるWPLの推進の仕掛けとしてのフリーアドレス職場空間の設計があるべきということになります。
東大Learning Bar(2009年1月30日)で日本コムシスの潮田さんの話を聴きました。クリエイティブオフィスと題して、単なる環境改善ではなくワークスタイル改善を図る取り組みです。大変興味深かったのは、フリーアドレス制が単なるコスト削減やペーパレスの施策ではなく、明確なゴールを自主性(WILL)を引き出すことに設定されたことです。席がフリーということは、毎朝自ら席を選ぶ。選ぶためには考える。その時に人を意識する。誰と座れば賢くなれるか、つまり創造プロセスを実現できるか、だんだん前もって考え計画するようになる。そのうち、明日はどうするかを自主的に考える。人を意識するために、イントラネットで個人を紹介し、参照できるようにする。そうすると、隣人になり、隣人を選ぶきっかけを作ることになる。そのうち、情報検索は人によってインデックスされる。そうすると、人と人の間に相互作用が生じる。知的創造は、ジャムである。すなわち、即興。即興はわざわざ会議室に移すとダメになる。だから、その場で即興しやすい空間を設計する。暗黙知と形式知が飛び交い知の即興の場となるオフィス。よく観察すると、テーブルに4席を設けても、即興はテーブルのコーナー部分で三人組によって生じる。そうであれば、それが実現しやすい空間を作る。袖机を撤廃。テーブルと椅子は可動式。・・・
という話でした。妹尾先生は、この三人組現象を組織論的に展開しようとしておられるようです。三人目の役割として、メタ認知=当事者でなければ意味づけがしやすい、政治回避=損得の綱引きが消える、観客効果=セミパブリックな空間による客観性があるそうですが、知的創造のためには、企業教育の推進にしても職場空間の設計にしても、3という数字が鍵となるのかもしれません。
今後WPLの実装において、職場環境の設計という視点も深めて考えていきたいと思います。
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