地方の広告業界の迷走と堕落の真相!!!/中村 修治
INSIGHT NOW! / 2015年8月11日 7時15分
中村 修治 / 有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス
メディアがリアリティにあふれ過ぎている!
この動画は、ウェブとテレビをミックスした新たなメディアプロジェクト『SENSORS (センサーズ)』(日本テレビ)。バスキュール・朴正義氏、チームラボ・猪子寿之氏、PARTY・中村洋基氏、THEGUILD・深津貴之氏、NewsPicks・佐々木紀彦氏の5名が、テレビと広告の未来、Web広告のトレンドや動画広告について熱い討論を交わしている。
チームラボ・猪子寿之氏の広告に対するこの発言は、マーケティングにかかわるすべての人に耳の穴をかっぽじって良く聞いてもらいたい。
『いや、昔は(広告に)興味あった。何でかっていうと、リアリティは現実にしかなかったから。メディアを通すものは全部リアリティがなかったから。リアリティ無いものしかなかったから。その中でクオリティが高いものに対してやっぱり興味があった。良く作りこまれたものに対して。
でも今はメディアがリアリティあふれ過ぎているから。例えばLINEで「今日、暇?」とか、すごいリアリティじゃん。暇なんだこいつとか思って。「じゃあ、遊ぼうか」みたいな。すごいリアリティだし、ネット開けるとリアリティにあふれてるじゃないですか。
世代的に、まだ全盛期を知っているから、比較対象としてダサいって言えると思うんだけど、もっと若い子は目に入っちゃうと思うんですよね。リアリティ が無さ過ぎて。自分らはそれしかなかった時代を知ってたから、自分が中学校の時とかクオリティの高い広告とかを、すげぇとか思っていたけど、ふと見ると、これって絶対ないしなとかって思って。
なんでかって言うとメディアがリアリティにあふれ過ぎてるから。』以上抜粋。
広告ではモノが売れないと言われている。いったいどうしたら消費の背中は押せるのか。ネットをハブにしたクロスメディア戦略がどうのこうのという理屈はこねるけど、確かな答えがないままに広告業界の試行錯誤は続いている。
それは、猪子氏のいうところの「ネットを開けたときのリアリティ」に勝てる術を、広告に携わる誰もが見つけ出してはいないからである。メディアがリアリティに溢れすぎた現代、広告は、学芸会にしか見えない。何をやってもダサいのである。
いまの福岡の広告はダサい!
並べちゃいけないけど、ドキドキしながら並べてみる。今年の新年早々に立て続けに公開された広告である。見ちゃいけないものを見ちゃってる気がする。イタイぞ福岡っ!どうした福岡っ!て感じである。
①JR博多シティ ウルトラバーゲン
②新天町 冬の超常バーゲン
③イムズ イムズのバレンタイン
上記3点は、福岡を代表する流通施設のいまの広告である。それぞれに、アイデアはおもしろのだが・・・タイムスリップをしたかのようである。何年前の手法だろうか。何かを放棄したようにしか思えない。メディァの中のリアリティには勝てません。すいません。敗北宣言にしか見えない。
ウルトラの母に、マリックに、リリーフランキー・・・。極論にもほどがある。結局、目立たないと広告じゃありませんからねというヤケクソなロジックしか見えてこない。こんなこと書くと、お前もいっちょかみしているだろうが?という業界内の声が聞こえてくる。ハイ!いっちょかみしています。当事者であるからこそ危機を感じているわけである。この極論合戦の先に、ホント何がある?怖い!
答えがないから極論を選択する!
作家である町田康氏は、講演会で「ここ数年、人間の種類が減ってきている気がする」「”いろんな人がいる”ということを許せない人が増えて、多様な人間観が排除されている」という言葉を残している。
叩く側か叩かれる側か。自民か反自民か。原発には賛成か反対か。その極論の戦いを煽った方がマスコミは視聴率がとれる。発行部数が伸びる。そうやって正しい思考は奪われていく。
広告の世界も同じである。広告で成果を出すことは難しい。なんかよくわからなくなってきた。その答えとして極論なわけである。目立つことが広告よね。認知を上げることが広告よね。申し訳ないが、それは、脳みその堕落である。
戦略とは、「戦い」を「略す」ことである。大衆とは、右でも左でもない。極論を自ら発することができないのが多くの消費者である。「戦い」を「略す」ためには、そのグレーである消費者の機微を掬い取りファンにしていく戦略が必要なわけである。極論に、戦略はない。誘導である。無駄な闘いである。
クライアントの皆様も、広告代理店のみんなも、グレーを選ぶ正しい理屈と勇気を持たないから・・・極論ばかりのダサい広告が採択されるわけである。びっくり過ぎるくらいリアリティがなさすぎる。時代錯誤である。エアポケットになっている。
優秀な若い人材が入ってこないのは当たり前!
福岡の広告業界の社長さんたちとの最近の話題は「良い若手が入ってこない」「若い人材が育たない」そんなことばかりである。しかしである、こんなダサい広告を出し続けている福岡の広告業界に、優秀な人材が留まるとは、やっぱり思えない。福岡の広告業界を我が物顔で闊歩するオッサン達にリアリティがなさすぎるのである。自業自得である。
ワタシがこの業界に足を踏み入れた1980年代後半は、マス4媒体の広告費シェアは、80%を超えていた。それが今や40%台である。広告は文化である。広告は煽動である。広告にそんなファンタジーを描いてきたロートルの出る幕は、もうない。決裁はしてもいいが、その広告の良し悪しを判断し選択する側にまわるべきではない。往生際が悪いのである。
九州や福岡のヒットを支えるのは、九州の、福岡の広告業界である。何をやったら成果があるのか?その答えがないから、極論に走る。それは、潔いことである。清々しいほどの選択である。しかし、広告業界の中に、極論に走らない叡智が育たなくては、どんどんダサくなるだけである。広告業界の中に、メディアの中のリアリティに正面から向かう若い奴が出てこなくては、ジリ貧になるだけである。
コンテンツマーケティングの時代と言われている。広告業界の古いオッサン達は、コンテンツをクリエイティブと捉えがちである。致命的である。「メディア接触時間の断片化」という消費者側の変化に適応した技術こそ、コンテンツマーケティングである。購買行動を起こさせるための〝関係づくり“をマジメに考える優秀な若い人材にとって、この福岡の広告業界の状況は、いたたまれないのだろうとお察し申し上げる。
地域の広告賞とか、いまや果たして必要なのか?
その広告賞の審査員が、ファンタジーな方々ばかりでいいのか?
お世話になったからこそ、心を鬼にして言わせてもらう。
もう!そういう時代ではない!
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