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自動車が土管になる時 PEST分析から読む近未来vol.3/竹林 篤実

INSIGHT NOW! / 2015年8月10日 10時5分

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竹林 篤実 / コミュニケーション研究所

100万マイル走って、事故は11件

Googleではこれまでに100万マイル、ロボットカーの公道実験を行っており、事故は11件だけだという(2015年5月現在)。それも事故が起きたのは自動運転時ではなく、人が運転していた時だといわれている。だからといってロボットカーが、100%安全かといえば、決してそんなことはない。

けれども、少なくとも高齢者が運転していて起こす事故率よりも、ロボットカーの方が事故率は低いといえるだろう。当たり前のことだが、ロボットカーが高速道路を逆行したり、電車の踏切から侵入して線路を走ることは、まず考えられない。

自動車の未来像の一つは、明らかに自動運転車にある。この自動運転車の開発に取り組んでいるのは、Googleだけではない。ゼネラル・モーターズ、BMW、トヨタ自動車などの自動車メーカーに加えて、最近ではAppleも自動運転技術の開発に着手した。次世代の自動車は、エネルギー源を電気とし、操縦方法は自動運転になる可能性が高い。


ロボットカーが実現した時、何が変わるのか

仮にロボットカーが実現し、公道走行を認められるようになった時、どんな世界が見えてくるだろうか。近未来の自動車社会について、テスラ・モーターズのイーロン・マスク氏が、興味深いコメントを出している。

「(仮にロボットカーが実現すれば)人がクルマを運転することは違法となるかもしれない」と、氏は語ったという。

この言葉が何を意味するのか。クルマという乗り物の意味が根底から変わるのだ。まず「マイカー」という概念が、この世の中から消える可能性が高い。もちろん、たとえ自動運転とはいえ、自分でクルマを買って所持したい人はいるだろう。けれども、自分で運転する必要がないのなら(あるいはそもそも運転させてもらえないのなら)、どの車に乗ってもいい、と考える人も出てくる。おそらくGoogleのロボットカーが狙っているは、こう考える人たちだ。

するとクルマは、どうなるのか。Androidスマホに「クルマをここへ寄越してくれ」と話しかけるだけで、ロボットカーが来てくれる。それに乗り込み「○○へ」と指示すれば、そこに連れて行ってくれる。そんなGoogleカーが、町中に何台も待機している。

これは便利である。そして、おそらくは今よりはずっと安全であり、交通事故も減る。そのクルマの多くが電気自動車だろうから、環境にもやさしい。誰が、わざわざ高いコストを掛けてクルマを所有・維持したいと思うだろうか。乗りたいときには呼べばよいのだ。ドライバーの居ないタクシーを想像すればわかりやすいだろう。人口比で十分な数のロボットカーが用意されるのなら、まさに良いことずくめだ。


Googleの狙い、それはクルマを土管にすること

「土管」という表現に、違和感を感じる方もいるかもしれない。これは、かつて携帯電話のプロバイダーが、いずれ「土管屋」になるといわれたことに因んでいる。プロバイダーは、高いコストをかけて土管(=通信インフラ)を整備するだけで、その土管を使ってビジネスを展開しているのは、Appleであり、Googleであり、Facebookだというたとえである。

クルマが土管になるとは、クルマが、GoogleやApple、Facebookなどのビジネスインフラになることを意味する。例えば、町でGoogleのロボットカーを呼んだ時に、車内で何が起こるだろうか。

フロントウィンドウがモニターにもなりうることを考えてみよう。ユーザーはクルマに行き先を告げている。であるなら、到着地点近辺のさまざまな情報(広告ともいう)がモニターに表示されるだろう。Android経由でクルマを呼んでいるのだから、ユーザー情報はあらかじめわかっている。これに基づいて最適化された情報提供が行われるはずだ。

ユーザーは、無料でロボットカーを使える可能性もある。これまでに、Googleが展開してきたビジネスモデルを考えるなら、「サービスは無料」と考える方が、むしろ納得がいく。

誰が、いつ、どこからどこへ移動したのか、その目的は何だったのかといったビッグデータをGoogleは得ることになる。

Googleが扱っているモノの外見や機能は、自動車と同じ。けれども、自動車に与える役割が、例えばトヨタが開発しようとしている自動運転車とは、まったく異なるのではないか。Appleが狙っているのも、Googleと同じようなことなのだろう。

さて、このロボットカーが実現した時、この世からどんな職種が消えているだろうか。あるいは、どんな業種業態がなくなるのだろうか。自動車メーカーは、自動車産業の頂点に君臨し続けることはできるのだろうか。あなたの仕事に何らかの影響は及ばないだろうか。

電気自動車は、パーツを組み合わせるだけで簡単に作ることができる。だから、一説によれば中国には電気自動車メーカーが数百社あるともいう。そんな世界が、意外に近未来にやってくるかもしれない。

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