真の顧客志向を体現する方法(3) 【連載サービスサイエンス:第8回】/松井 拓己
INSIGHT NOW! / 2015年10月15日 0時0分
松井 拓己 / ワクコンサルティング株式会社
これまで見てきたように、サービス向上や顧客満足向上に苦戦している企業は、いろいろなお客様がいるにもかかわらず、それをすべて十把一絡げにして「お客様」の一言で済ませてしまっていることが多いようです。サービスはお客様と一緒に作るものです。お客様の定義が曖昧では、取り組みがうまくいかないのは当然と言えます。
とはいえ、様々なお客様を具体的にどう定義したらよういのでしょうか。本連載では前回までに、「重要な事前期待の違いに着目して、お客様のタイプを定義する」方法についてサービスサイエンスの理論を交えて説明しました。
その効果は極めて大きいのですが、特に法人向けサービスに関わる方の中には、自社ではどう活用したらよいのだろうかと悩んでしまう方がいるかもしれません。お客様が法人なので、具体的に誰を対象にしたら良いのか悩んでしまうのです。こんな時には「ステークホルダー」を整理することが効果的です。
PR:’15/11/20開催 セミナー受付中 CS向上を科学するサービスサイエンスの基礎 ~顧客はサービスを買っている~
「お客様」のステークホルダーを整理する
法人向けサービスの場合、目の前のお客様が満足してくれたのに契約やリピートに至らなくて悔しい思いをした、という経験をしたことのある方は多いのではないでしょうか。こんなときサービスサイエンスでは、事前期待でお客様を定義する前に、ステークホルダーを整理します。そして、どのステークホルダーへの対応を磨き上げることに価値があるのかを明確にします。
顧客企業の中でも色んな人が関わってくるので、「お客様を定義しましょう」と言われても、単純にはできません。
法人営業の場合、ステークホルダーは、例えば次のように整理できそうです。
・打ち合わせでお会いする対応担当者
・対応担当者の上司であり、発注やリピートオーダーの可否を決める意思決定者
・実際に提供したサービスを企業内で利用することになるサービス利用者
さらには、顧客企業のお客様も大切なステークホルダーかもしれません。
このように、顧客企業の中には様々なステークホルダーが存在します。これらを「お客様」の一言でまとめてしまっては、効果的な議論や取り組みはできません。だからこそ法人営業においてはステークホルダーを整理して、重要なステークホルダーをはっきりさせる必要があるのです。
今まで気づいていなかった事前期待が見つかる
重要なステークホルダーが明確になれば、「事前期待でお客様を定義する」ための議論を比較的容易に進めることができます。また、ステークホルダーを整理すると、目の前のお客様しか意識できていなかったときには分からなかったお客様の事前期待が見えてくることがあります。
例えばお客様は、打ち合わせの後に意思決定者にその内容を報告しなければならないかもしれません。このお客様は、意思決定者にうまく報告できるか不安を感じているとしたら。お客様の「意思決定者への報告もサポートしてほしい」という事前期待が見えてきます。そうだと分かれば、報告の役に立つ資料を作成して渡したり、簡単なデモの機会を設けたりと、気の利くサービスを提供するチャンスはいくらでも見つけられそうです。このように、ステークホルダーを整理することで、今までよりはるかに実効力のある取り組みが可能になります。
PR:’15/11/20開催 セミナー受付中 CS向上を科学するサービスサイエンスの基礎 ~顧客はサービスを買っている~
BtoCサービスでも大切な「ステークホルダー」
実はこれはBtoCサービスにも効果的です。例えば、家や車などの高価なモノを販売するとき、旅行や結婚式など複数の人たちに向けてサービスを提供するとき、介護や保育などサービスの利用者と購入者が異なるときなどがそれに当たります。
お客様を1人に特定できないタイプのサービスはたくさんあります。この手のサービスでは、法人向けサービス同様に、目の前のお客様が満足してくれたのに購買やリピートに至らず苦戦することがよくあります。そんなときは、ステークホルダーの整理を実施してみる価値があるかもしれません。
例えば、高額な商品やサービスの購入を考えているお客様が相談に来られたとします。ステークホルダーを整理してみると次のようになります。
・相談に来られたのはご主人様
・本当の意思決定者は、家にいる奥様
・その奥様が一番気にしているのはペットのこと
・費用を負担してくれるスポンサーはご両親
この場合、親身になって目の前のお客様(ご主人様)の相談に乗っても、家に帰って意思決定者である奥様にうまく説明できなければ意味がありません。また、お渡しした資料が、目の前のお客様だけでなく、奥様の関心事項にもマッチしていなければなりません。目の前のお客様がその気になるだけでなく、お会いしていない意思決定者である奥様にも「私も話を聞いてみたい」「サービスを受けてみたい」という気持ちになってもらうことが必要なのです。
もったいない失点をなくそう
ステークホルダーを意識することは、普段からできているようで、実はなかなかうまくできていないものです。ステークホルダーを意識していないばかりにもったいない失点をしてしまっているケースは多々あります。
・目の前のお客様への対応に必死になって、待っているお客様への配慮ができていない。
・自分の担当のお客様への対応に集中するあまり、他のスタッフが担当するお客様には挨拶すらしない。
これではお客様を失ってしまいます。サービスでは、ステークホルダーは誰なのかをはっきりさせて、もったいない失点をなくし、得点のチャンスを掴んでいかなければ、お客様に選ばれ続けることはできないのです。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
世界最大の電池セルメーカーが、Global Battery Allianceが策定した調和された持続可能性パフォーマンス期待値に照らして報告
共同通信PRワイヤー / 2024年11月18日 9時48分
-
Kaspersky、国際セキュリティ認証のSOC 2 Type 2認証を更新
PR TIMES / 2024年11月9日 16時40分
-
『総合関係性管理型経営(TEマネジメント)』をリリース
PR TIMES / 2024年11月8日 18時40分
-
ビジネスの国境を越える-JTBの新グローバルソリューションサイトが稼働開始-
PR TIMES / 2024年11月6日 16時45分
-
経営としてのマーケティング機能を強化し、日本企業の価値創造力を高める「GTM DMIモデルver.1.0」を公開
PR TIMES / 2024年10月30日 12時40分
ランキング
-
1ローソンストア100「だけ弁当」第12弾は「イシイのミートボール」とコラボした「だけ弁当(イシイのミートボール)」
食品新聞 / 2024年11月23日 20時40分
-
2副業を探す人が知らない「看板広告」意外な儲け方 病院の看板広告をやけにみかける納得の理由
東洋経済オンライン / 2024年11月23日 19時0分
-
3「中間管理職を減らしたい」企業の盲点 リストラで起こる、3つのリスクに備えよ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月24日 8時0分
-
4UUUMを上場廃止させるオーナー会社の腹づもり 買収後も業績は低迷、2度目のTOBに至った深層
東洋経済オンライン / 2024年11月24日 8時0分
-
5【独自】所得減税、富裕層の適用制限案 「103万円の壁」引き上げで
共同通信 / 2024年11月23日 18時57分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください