本音のコンテンツマーケティング (5)ソリューションセールスはもはや古いのか/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2015年9月23日 11時13分
![本音のコンテンツマーケティング (5)ソリューションセールスはもはや古いのか/猪口 真](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/insightnow/insightnow_8716_0-small.jpg)
猪口 真 / 株式会社パトス
「御用聞き営業」から「ソリューションセールス」へ、40歳以上の営業経験者なら、聴き飽きた言葉だろう。
しかし、昨今、ソリューションセールスではもはや通用しないという言葉も耳にするようになってきた。単なる言葉の定義と言われてしまえばそれまでだが、問題解決営業としてのソリューションセールスがなぜ通用しないのだろう?
御用聞きがすばらしい営業スタイルだったころ、想像でしかすぎないが、おそらく経済全体が右肩上がりで、B2CであれB2Bであれ、顧客のところへ行き、「何かございませんか?」と言えば、「ああ、これ頼む」「そういえばあれをよろしく」などと言って、注文をもらえたのだろう。(今でも、「御用聞きすらできない」という声があることは横においておく)
しかしながら時代とともに成熟期へ入り、発注量は増えるどころかよくて現状維持、多くはマイナスになっていった。
そうすれば「御用聞き」する人たちは過剰に増えることになる。だれもが「何かございませんか?」と出入りするものだから、発注者は、限られた発注しかできないため、すべて同じに見える「御用聞き」に対して、「何か提案はないのか?」あるいは「何がほかと違うのか?」ということになる。
はなはだ乱暴な推論だが、そこで登場したのが「ソリューションセールス」だ。
「私たちは、御社の課題を解決します。それは、これこれがあるからです」「長年の問題を解決するために最新のテクノロジーを開発しました」などと、自社の製品の良さをアピールすることになる。
当然、営業には、新たなスキルが求められる。これまでは、「何かありませんか」「毎度ありがとうございます!」でよかったのが、プレゼンテーション力(当然ドキュメントの作成能力も必要だからITリテラシーも必要になる)やコミュニケ―ション力(相手が質問してきたときに即座に答えを明快に返さなくてはならない)などが、必要とされるようになってきた。
私は1984年に新卒として入社したが、90年代半ばごろ、カラフルな資料を抱えて、さっそうとクライアントにプレゼンする先輩営業マンには憧れたものだ。
組織の部署名にも、なんとかソリューション部などという名称が使われだしたり、営業なのに、何とかコンサルタントと名刺に肩書をつけたりしたのもこのころだろう。
そのソリューションセールスがもはや通用しないとはどういうことだろう。
ひとつには、ソリューションと言いながら、形を変えた製品提案でしかなかったことだ。極端な言い方をすれば、そもそも誰に対しても同じソリューションを提案していたということだ。相手がどんな課題を持っていようが、提案するものは決まっているのだから仕方がないといえば仕方がない。
そうすると、ソリューションと言いながら、商品の売り込みに過ぎず、ソリューション提案=営業としか映らなくなる。
なかには、「『当社の製品は御社の課題にはあてはまりません』と言えるのが当社の営業スタイルです」という意味のこと言う人もいたが、その次には「御社にとって最もふさわしいのが当社の製品です」となっていたからたちが悪い。
クライアント側としても同様だっただろう。課題を知らないのに、どうしてソリューションとして提案ができるのかと根本的な疑問を持ちながらも、本当のソリューションが提案されるのかどうかわからないのに、事前調査と言われ貴重な時間をとられてしまうのは避けたいし納得もいかない。
だからどうしても、ソリューションは何ですかと聞き、手っ取り早くミーティングから退散したくなってしまう。
これこそがコンテンツマーケティングが生まれた背景ではないか。自分勝手の提案には、クライアントは響かないし、問題解決(ソリューション)と言われても、そもそも問題をはき違えていたら、迷惑なだけの話だ。
相手の課題と自社のソリューションの間にくるもの、それがコンテンツマーケティングで言うところのコンテンツだ。
クライアントがCにしろBにしろ、表面的にあると思える問題に対して、クライアント自体がいまだ見えていない本質的な課題に対し、ともに探すプロセスと言ってもいいかもしれない。
本質的な意味でのソリューションセールスが終わったわけではないが、深いところでの課題共有ができるかどうか。そこを見失っては、ソリューションには1円の価値もないということだ。
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