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エディー・ジョーンズからリーダーシップを考えてみる/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2015年10月15日 17時5分


        エディー・ジョーンズからリーダーシップを考えてみる/野町 直弘

野町 直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

ラグビーワールドカップでの日本代表チームの活躍はラグビーファンだけでなく多くの日本国民を勇気づけました。
私もこのスポーツが好きで古くから多くの試合を楽しんでいます。1995年の第三回ワールドカップNZ戦で145-17という歴史的な大敗も生中継で見ました。その時の屈辱的な敗戦から考えても本当に嬉しい限りです。

日本チームは何故ここまで強くなったのでしょうか。

私は専門家でもないですしラグビーをやった経験もありません。そういう素人的な立場ではありますが気がつく点も多く、言わせてもらいますと、フィジカル面、技術面、戦略面もあるのでしょうが、やはりメンタルな面が大きかったのではないか、と考えます。

外国人選手の登用が多すぎるという一での批判もあるようですが、前回のワールドカップでもこれは同様ですし、アタッキング中心のラグビーという戦略自体も以前から変わっていません。では以前とはどこが違ったのでしょうか。

エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)になってトレーニングの量はかなり増えたと言われています。これはフィジカルやスクラムを強くするだけでなかったでしょう。徹底的なトレーニングが選手に自信をつけさせたのです。あらゆるスポーツで科学的なトレーニングが導入されてきていますし、根性論だけが通用する世界ではありません。しかし最終的には人より多く練習をやってきたことが一番選手の自信につながります。「あれだけの練習をやってきたのだから、、」という思いが自信につながってくるのです。初戦の南アフリカ戦で最後に同点のペナルティキックを狙わずにトライで逆転を狙いにいったのは選手に自信があったからに他なりません。

この点については対象的だったのは、エディー・ジョーンズの前任のカーワンHCの元の2011年のワールドカップでの戦いです。ジョン・カーワンは第一回のワールドカップで優勝したニュージーランドの英雄であり、凄い実績をもった選手です。HCとしての経験もイタリアチームのHCとしてイタリアチームを育てた実績を持っていましたので、決してエディー・ジョーンズに劣る人ではありません。

2011年のワールドカップでは1戦目のフランス戦で日本チームは善戦したものの敗退しました。そして2戦目のNZ戦では戦力を落としたチームで臨み、その後の2戦を勝ちにいこうとしたのです。結果的には1勝もできず、1分3敗という成績に終わりました。
私には今でも物凄く後味が悪かった印象が残っています。

一方でエディー・ジョーンズHCは南ア戦でメンバーを落とすことはしませんでした。というよりも今回の日本代表は誰が出ても戦力が大きく落ちるというチームづくりはしていませんでした(少なくとも素人目にもそう見えました)。実はここが前回とは大きな違いだったのではないでしょうか。サブメンバーや交代メンバーの強化ができていました。また、そういうチーム
作りができていたからかも知れませんが、多くの方が南ア戦は勝つことは難しいから第二戦のスコットランド戦に焦点を絞りメンバーを選定すべきという声もある中で初戦からメンバーを落とさずに、とにかく自信を持って戦えと選手を送り出したのです。

リーダーができることはメンバーに自信をもたせること、何かあったときの対策を事前にとっておくこと(例えばサブや交代メンバーの育成を意識的に行うこと)、困った時には助けること位です。これしかできないのです。しかしそれを実現したのがエディー・ジョーンズHCでした。

タイミング良く、先日慶應義塾大学の小杉俊哉先生の「リーダーシップと人材マネジメント」という研修に参加する機会がありました。リーダー像は時代時代によって求められる人物像が異なってきているとのことです。織田信長やナポレオンのように民衆を助けてくれるカリスマ型リーダーから、日産のカルロス・ゴーン、GEのジャック・ウェルチのような改革推進をするチェンジリーダーが生まれてきました。また最近は支援型リーダーが望まれるリーダー像として注目されているようです。

支援型リーダーは自律型組織を作れ、率いることができるリーダーです。自律とは自ら自発的に動くことができる人のことを言います。また自律型組織とは、現場が自律的に動くことができている、またそのための権限が委譲されている、現場の末端まで価値観が共有されている、組織を言います。小杉先生の「リーダーシップ3.0」(祥伝社)にも取上げられてていますが、このような自律型組織を実現している企業は非常に高い収益を上げていることが分かっています。

新しいリーダー像である支援型リーダーは自律型組織を作り、育てることができる人なのです。そういう意味ではラグビー日本代表チームを率いたエディー・ジョーンズHCは自ら意識していたかどうかは別にして現代の優秀なリーダーの要件を持っていたと言えるででしょう。

小杉先生の研修では「リーダーの資質」についても触れられていました。優秀なリーダーや潜在能力が高い人材を分析すると共通する資質がある、それは「学習」する意欲である、ということでした。今回研修に参加して改めて感じたのは、人間はいつまでも「学習」したり新しいことに「チャレンジ」する意欲をもたないといけないな、ということでした。

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