ライフスタイルスポーツとモバイルヘルスの可能性/大川 耕平
INSIGHT NOW! / 2015年10月23日 8時50分
大川 耕平 / 株式会社スポルツ
国内フィットネス人口は3%とよく言われますが、会員制の施設に通う人の割合であって、場所や施設にとらわれないスポーツアクティビティーを楽しむ人口はむしろ増加しているし、3%は限られた限定的な見方での数字ではと感じています。
最近のランニング、サイクリング、トレッキング、ウォーキングブームはとても根強いものがあり、多くの健康消費者がそれぞれのモチベーションによって継続的に楽しんでいます。
その人の年齢や身体状態や環境、性格や好みにあわせて続けることが出来るスポーツアクアティビティーを私はライフスタイルスポーツと読んでいます。
このライフスタイルスポーツは手軽にでき、かつ奥が深く、同好の友との交流が生まれやすく、楽しみ方のバリーションが工夫次第で無限に広がるのも特徴です。
例えばランニングのケースです。
40代後半の男性が、最初はストレス解消と健康ケアを思い始めたジョギングが2ヶ月続けると体重も体脂肪率も減り、日常的な身体活動が軽やかになり始めます。
ランニングが習慣化されると同時にジョギングのコミュニティに参加し、バーチャルな友人が増える。友人の様々なランニングスタイルに刺激を受け、10kmのレースに挑戦してみる。当日会場には仲間同士で励まし合うグループがいっぱいあることに気づく。
コミュニティ内の友に誘われ山手線を一周しながら江戸名所を訪ねゆっくりと走るマラニックに参加する。歳も違う男女12名で約7時間かけて約50kmを走破。ここでの出会いでお互いメールアドレスを交換し、年齢を越えたコミュニケーションを楽しむことになっています。
そのプロセスで友のひとりはニュージーランドでのトレイルマラソンにエントリーし見事完走。その土産話での完走おめでとうパーティにも参加し、自らも海外遠征計画を立て始める。そこに仲間も一緒に行きたいということになり、それはツアー企画となりホノルルマラソンを5名で目指すことになる。
仲間のひとりがプロランニングコーチを知っていてメンバー全員でコーチンを月2回を半年間受けることになる。コンディショニング技術、食事、レース前後のケア、道具選びなど様々なレクチャーを受け充実した準備活動の日々を送っている。
このような物語がそれぞれのライフスタイルスポーツで繰り広げられています。
ライフスタイルスポーツを継続している人たちは長く楽しみたいという望みを明確に持っています。そのために必要なコトに敏感になっています。
この人たちは、自己表現としてのライフスタイルスポーツを続けるための健康ケアという関係をスムーズに受容することが多いことも特徴です。
これらライフスタイルスポーツのプレイヤーを対象にしたヘルスケア要素も含むプロセスデザインにビジネス的な可能性は大です。
顧客経験をいかにデザインするか?これはスポーツならずともサービスビジネスの肝です。
この40代後半の男性の健康消費はどれくらいになるでしょうか?
- ・ランニングギア(ウェア・シューズ・ウォッチ・アプリ・デバイス)
- ・サプリメント&ドリンク(ケア・リカバリー・パワーアップ)
- ・ランニング施設利用量(トラック・郊外自然圏での宿泊など)
- ・移動旅行費用
- ・ネットサービス利用料
- ・トレーニングコーチ料
- ・パーティー参加&ミーティングなどのコミュニケーション費 等々
ライフスタイルスポーツのポイントはプレイヤーの成長プロセスに合わせた多彩な提案を長期間のスパンで考えていけることです。
ここで重要になるのはタッチポイントをどうつくるか?です。
モバイルヘルスとのマッチングへ
最近のヘルスケアビジネスのトレンドを説明するに際してもうひとつ大きなムーブメントがあります。それがモバイルヘルスです。
モバイル、つまり持ち運びできる健康という意味ですが、なんらかの健康関連情報をやり取りできるモバイル機器を活用したヘルスケアサービス全般のことを指します。
ブレスレットやクリップスタイルのデバイス機器を使って日常的な活動量やその強度をトラッキング記録でき、かつ睡眠時のレム睡眠ノンレム睡眠の波形もセンシングでき、その記録をスマートフォンやパソコンで分析画面としてみることができ情報を蓄積できるようなプロダクト&サービスが続々と登場してきています。
モバイル機器でセンシングできる可能性のある対象は技術進化とともにどんどん増えていきます。
例えば
・歩数計や歩行距離、運動量計(加速度センサーによる運動強度も計測)・
- ・消費カロリーの算出
- ・睡眠の質
これらを基本型としつつ、スマートフォンにガジェット機器を接続することによって血中酸素濃度や脈派なども技術的にセンシング可能になってきている。
つまり、今まで計測できなかった様々な身体活動データ手軽のモバイル機器でセンシングできるようになっていき、それを健康行動に活かしていくアプローチが始まっていて、ここの大きなビジネスチャンスがあると見込む多くの企業がどんどん参入をしてきています。
また、専用のモバイル機器を使わなくて、スマートフォンとアプリの組み合わせでも同様なトラッキング活動も可能です。
スマートフォン内蔵の加速度センサーやGPS機能を使ったランニング・ウォーキング・トレッキング記録から、睡眠の質計測、内蔵カメラを使った食事記録などです。
モバイルヘルスはモバイル機器やスマートフォンなどを通じて日常的な活動データをトラッキング記録してそれを分析するだけでなく、モバイルしていることでつながっている関係を維持することができます。
現在稼働している様々なモバイルヘルスのサービスでは個人の記録をいかに継続してもらい、そこから価値を導きだせるかの模索中だと私はみています。できなかったことができるようになる。そしてまずはできるようになったことをやってみてどんな可能性がさらに導きだせるかを懸命に探っているのが現在地点だと思われます。
全てのモバイルヘルスに言えることですが彼らもまだ確固たる結論を持っていない場合が多い。今後蓄積して行くデータから読み取れる価値創造が近い将来に発見されてその再現性がサービスプロセスに移植されサービスそのものの品質が磨かれて行くのだと思います。
そしてここでも仲間同士の貢献、価値シェアへと進んで行くのではないかと予測しています。
今後のライフスタイルスポーツとモバイルのビジネスチャンスは「コミュニティ」との関係性がキーとなることは間違いないです。
ライフスタイルスポーツコミュニティをデザインし、ドライブしていくプロセスで、コミュニティの中で発見できるコトニーズ、モノニーズをマネタイズしていくというビジネスモデルが今後登場してくるはずです!!!
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