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労働者のキャリア形成は、会社が責任を負う時代に! キャリアコンサルタント国家資格化による影響は/HRレビュー 編集部

INSIGHT NOW! / 2015年10月21日 20時12分


        労働者のキャリア形成は、会社が責任を負う時代に! キャリアコンサルタント国家資格化による影響は/HRレビュー 編集部

HRレビュー 編集部 / 株式会社ビズリーチ

2015年9月、キャリアコンサルタント国家資格化に関する法案(職業能力開発促進法)が可決、成立しました。これにより、2016年4月よりキャリアコンサルタントの国家資格が誕生することになり、企業は必要に応じて自社内にキャリアコンサルタントを配置し、社員のキャリア開発支援の機会を提供することが推奨されることとなりました。本法律のポイントは以下のとおりです。

【本法律のポイント】

  1. 国家試験に合格し、厚生労働省に登録された者のみが「キャリアコンサルタント」を名乗れるようになります
  2. キャリアコンサルティングの定義が明確化されます
  3. 事業主は雇用者に対して、キャリアコンサルティングの機会の確保その他の援助を必要に応じて行うこととされます

それでは、本法律によって具体的にどのような変化があるのか、考察していきます。

「キャリアコンサルタント」を名乗れるのは資格取得者だけに

まず「キャリアコンサルタント」は、登録制の創設(国家資格化)にともない、名称独占資格にも指定されたため、国家試験に合格した者以外は「キャリアコンサルタント」を名乗れなくなります。

これまでも、人材紹介会社を中心に「キャリアコンサルタント」という名称は使用されており、「キャリアカウンセラー」「キャリアアドバイザー」という名称も使用されていますが、「キャリアコンサルタント」に類似する名称を使用して仕事をすることはできなくなります。

資格取得後も5年ごとの更新によりコンサルタントとしての質を担保

キャリアコンサルタント試験は厚生労働大臣が所管します。厚生労働省が定める一定の実務の経験を有することが前提で、学科試験、実技試験などが設けられると見られています。また、合格後も5年ごとに更新する必要があり、質の高いコンサルティング能力の継続的な担保も考慮されています。

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事業主が労働者のキャリア形成に責任を持つ

法改正にあたっての指針として、事業主は「キャリアコンサルティングに関する専門的な知識および技能を有する者」や「キャリアコンサルティングの専門的サービスを提供する機関」を効果的に活用することが求められるようになりました。これが実現すると、労働者からは、国家試験に合格したキャリアコンサルタントから、一定以上の質の高いキャリアコンサルティングを受けられるようになります。

労働者には自分のキャリアについて考える機会が増えるというメリットが、負担の増える事業主側にも、労働者の中長期的なキャリアプランに基づいて事業計画を立てられるというメリットがあります。この法律の施行は、労働者のキャリア形成にとっても企業にとっても大きな変化であるといえるでしょう。

終身雇用時代の終焉を裏付ける法案可決

アメリカは、1960年代までは終身雇用や年功序列が一般的であり、親子孫3代にわたって同じ企業で働くことも珍しくありませんでした。しかし、1970年代に入り、海外企業との競争激化により業績が悪化、IBMやAT&Tといった大企業が大規模なリストラを実施し、終身雇用や年功序列が瞬く間に消滅しました。それから企業への帰属意識や転職に対する価値観がガラリと変わったという過去があります。

日本でもすでに大企業によるリストラなどは実施されており、もはや終身雇用や年功序列は古い考え方と見なされつつあります。そうしたなかで、今回のキャリアコンサルタント国家資格化は、事業主が労働者一人一人のキャリアをより真剣に考えるキッカケをつくったという点で、極めて重要な意味を帯びるといえそうです。

適切なキャリアを築ける組織かどうか、労働者が企業に問う時代に

本法律では、企業がキャリアコンサルティングの機会を労働者に提供することに加え、労働者が自身のキャリア設計や能力開発に責任を負うという一面も出てきます。つまり、キャリアプランは所属する企業に任せきりにするものではなく、雇用者である労働者自身も自律的に考え、形作っていく必要があるということです。

自身のキャリアを再確認するキッカケに

海外に目を向ければ、社内や公的機関にGCDF(Global Career Development Facilitator)などの認定資格を持つキャリアコンサルタントが在籍していることは一般的で、転職時以外にも気軽に相談できる身近な存在となっています。海外では日頃からキャリアについて考える機会が多いといえます。

日本でも、「自分はどういうキャリアを歩んでいきたいか」「今後のキャリア形成に必要な経験やスキルは何か」などについて考える機会が増えることは、人材の流動化が加速したり、労働者の働き方、キャリアに対する考え方に大きな変化をもたらしたりする可能性を秘めています。

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より長く働ける環境づくりに向けた、キャリアの再定義

今回、キャリアコンサルティングの定義が国主導で行われることになった背景には、少子高齢化対策という側面も見られます。定年年齢の引き上げなどとあわせて、年齢を重ねても働き続けられるキャリア形成を、国が旗振り役となって推進していく狙いがあるようです。

労働者人口を増やしたいという国の狙いも

年金問題なども社会的課題として大きくフォーカスされている昨今、労働力の低下と相まって、定年を過ぎても働きたい人・働いてほしい企業は今後ますます増えるはずです。労働者の意欲が衰えなければ、いくつになっても働けるキャリア形成を支援することは、労働人口減対策の一手という見方もできるでしょう。

一人一人の考え方、価値観に即したキャリアプランを

キャリア形成の重要性をあらためて国が周知することになった本法律ですが、この考え方が広く企業に認知されれば、理想的なキャリアの選択肢を提供しうる企業には優秀な人材が一極集中する未来も大いにありえるでしょう。極論にはなりますが、「仕事は見て盗むもの。教えられて覚えるものではない」という考え方だけに固執し、個人のキャリアプランを顧みない企業や組織は淘汰されてしまうかもしれません。

自分の能力をどう開発するのか。どのように生きるのか。どんな仕事を経験していくのか。そうした労働者の問いに明確な回答を出し、導いていくことが、今後、事業主には求められます。一人一人で異なる考え方や価値観に寄り添い、最適なキャリアコンサルティングを行える体制を構築することが、今後の組織づくりには欠かせない要素になりそうです。

文:大城達矢(HRレビュー編集部)

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