本音のコンテンツマーケティング (7)当たり前だが、コンテンツマーケティングは顧客の声を聴くことから始まる/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2015年10月26日 22時6分
猪口 真 / 株式会社パトス
コンテンツマーケティングを推進したいと思っても、必ずぶち当たる問題が、「うちには語るほどのコンテンツがないから無理」という意見だろう。
メーカーとしてコモディティ商品を扱っていたり、属人的な営業スタイルで業績を伸ばしてきた(と思っている)組織に多い傾向だ。
当然会社として売上をあげているのだから、コンテンツがないはずがないのだが、当人はそう思いこんでいる。
また、コンテンツとして表現したいと思っても、どうしてもセールストークにしかならないケースもある。営業しているのだから、セールストークはあるのだが、コンテンツのつもりで語ってもコンテンツとは言えなくなってしまう場合だ。
そういうとき、最も頼りになるのが顧客の声だ。顧客の声といっても、単なるカスタマーレビューのことではない。
営業現場の経験がある人なら、気づいていることだが、実は自分達のプロダクツやソリューションに対する評価は、顧客によってまったく違う。(B2Bのケースを想定)
評価のレベルが違うということだけではなく、評価の観点、ポイントが違う。
観点・ポイントが違うというのは、商品・サービスのカテゴリーが違うということ。フィードバックを受ける側としては、クオリティに対する評価なら理解しやすいが、「A社は〇〇が得意ですよね」の「〇〇」が違うケース。
営業は〇〇ではなく◆◆を提案しているのだが、なぜか顧客が「〇〇」を選んでしまう。
たとえば、広告代理店に対して、あるクライアントは、メディアのプランニングがうまいからメディアを使ったプロモーションを発注し、別のクライアントは、同じ広告代理店に対してクリエイティブが素晴らしいと評価し、媒体は発注せずに映像や紙媒体の制作物を発注するという具合だ。
セールストークをなんら変えているわけではなく、自然とそうなっている。
さらに、セールストークは、メディアプランでもクリエイティブでもなく、「弊社はマーケティング調査が得意です」と語っていてもこういうことは起こる。
もちろん、評価というのは相対的なものなので、競合相手のレベルによって勝ったり劣ったりするのは当たり前なのだが、それに加えて大きいのは、顧客は自分が興味のあるところしか見ないということだ。
いくら売り側が、うちのすごいところは○○です、と言ってもまったく関係ない。
人間力なり、知人の紹介なりで、信頼関係が少しでもあれば、たとえ取引が初めてであっても、顧客は自分の興味の分野だけで考え、判断する。(きっとこれも得意だろうと自分に都合の良いように解釈する)
実際に第三者が顧客にインタビューするとよくわかるが、「なぜこの商品・サービスを購入しているのか」と聴いても、営業が語ってきたセールスポイントを並べてくれる顧客はまずいない。
自分の提案してきたことと、あまりにも違うことを語るので、聞いている売りがわの人がいらいらすることすらある。
しかし、これこそが現実であり、ここにこそコンテンツのストーリーがある。
つまり、購入に至るストーリーは、購入者が100人いれば、100通りのストーリーがあるということ。
よくあるのは、数人だけ聞いて、「やっぱりこういうことか」とニーズを決めつけてしまうことだ。営業力に乏しい人ほどそう言う。だが、決してそんなことはない。
顧客の持つ背景、ストーリーはすべて違う。表面的な返答に満足せず、とことん聴かなければならない。
商品・サービスを購入してくれた人のところに行って、「弊社の商品・サービスを購入していただいたのはなぜでしょうか。この商品・サービスがなかったらどうなっていましたか?」と言おう。コンテンツマーケティングはここから始まる。
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