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インターンシップと就職の関係を語ろう/増沢 隆太

INSIGHT NOW! / 2015年11月5日 6時43分


        インターンシップと就職の関係を語ろう/増沢 隆太

増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

・インターンシップは何のため?
当然のことですが、就業体験というのがインターンシップそのものであり、目的でもあります。ですが実際にインターンシップをもって事前選考をしたり、そもそもインターンシップをしないとエントリーできない企業があるのも事実です。また大学によっては単位認定する「科目」としてインターンシップがある場合もあります。さらには3ヶ月程度~半年滞在し、プロジェクト的な一回りを果たす、主に理系博士学生向けの長期インターンシップもあれば、ワンデーインターンシップという、1日限りのものもあります。

要は何を持ってインターンシップかという定義が無いのです。「インターンシップである」といった者勝ちなのが、今の状況です。その結果、採用選考の一環として強くリンクしたもの(主に1ヶ月未満の短期)と、単位や研究と結び付く(主に1ヵ月以上の長期)本来のものがごっちゃになっていることが、学生を惑わせています。またそのインターンシップがどちらを目的としたものなのかも明確にしない企業姿勢がこの困惑に輪をかけます。インターンシップと呼ばれても、その中身はかなりの幅があるのです。

長期インターンシップでも、その後インターン先企業に就職する例は多く、特に文部科学省が主導した博士人材/ポスドクキャリア支援では多数の理系博士学生とポスドクが民間企業に就職しています。また経産省が援助して始まった中長期人材育成協議会でも、同様に長期インターンシップを支援しています。しかし採用と強くリンクした短期インターンシップで参加社全員を採用するのではないのと同様に、長期インターンシップをした参加者も、全員が入社した、採用されたとは言い切れない現実もあります。


・なぜ不明確なのか
その中身もいろいろ、就活目的もありつつ、保証ではない。そんな不明確な存在となっている理由に、企業イメージの問題があります。企業の本音でいえば、良い学生が来たら欲しい、採用したいのは当然です。インターンシップを通じて評価できる学生であれば、単に面接で選んだだけに比べ、より長い時間をかけて人物や能力を見ることができる分、判断にも信頼を持てます。

ちなみにこれは反作用もあり、面接だけならボロが出なかったかもしれない欠点が、長時間にわたって隠し通すことができなくなるからです。「インターンの結果、応募しても不採用」というのは当然あり得る結果です。どちらの結果になるかは、やるまでわかりません。

しかしここで「インターンシップで良い人は採用します」と宣言してしまうと「採用活動への申合せ違反!」とか「就活早期化をするけしからん企業」というような批判をあびるリスクがあります。コーポレートイメージ的に、コンプライアンスに反するような印象を持たれることを、今の経営環境下ではできません。だから宣言や明確化は普通しないのです。

正確にいえば、就活時期問題は法律でも何でもない、経済団体の申合せにすぎず、破ったところで違法でもコンプライアンス違反でもありません。コーポレートイメージの毀損は「何となく良くないイメージ」を招きかねないのです。


・学生にとってのインターンシップの意味
先日新卒の学生向けに、インターンシップ関連のイベントでお話しする機会がありましたが、その時伝えたことは、自分の売り(理系なら専門・専攻・対象分野)とその企業の事業領域やビジネスモデルが合うのか合わないのか、そんなことを「自分で感じとる場」がインターンシップだということです。

自分の売りとばっちり合致する場合もあれば、実は全然つながらないと思っていたその職務、その製品・サービス、その会社と意外なところで一致点が見つかった。逆にばっちり合うと思っていたら、想像と違うことを求められる職務だったという気付きが得られれば、これまたインターンシップの価値といえます。

企業セミナーや会社説明会、OB訪問ですら、一時的な交流しかできません。しかし実際に職場に入れば、リクルーターではない普通の現場の人と触れることができます。理系の学生が営業の人や、文系学生が人事以外の管理部門の方や、あるいは直接業務と関係ない社内にいる人と直接接することができる貴重な機会なのです。

タテマエで認識していた企業イメージと現実の合致、またはかい離を直接自分で確かめることができるかも知れません。本音とタテマエという、社会の一面を知ることは、確実に就職においても有益なものでしょう。インターンシップと就職の関係も同じこと。企業が欲しい人材だと認識するなら有利であり、逆の評価を受けてしまえば不利になるだけです。


・決まるのはあくまで本選考
採用は当然のことながら、インターンシップだけで決まるものではなく、通常のエントリーから、ES・面接を経て決まっていくものです。インターンシップでの好評価はもちろん選考でも有利になる可能性はありますが、逆に評価を下げればリスクです。採用選考の過程として必須であると明示している企業以外は、当然必須ではありません。何となく第一志望なのに参加しないのは不安と思うのであれば、その不安解消に参加してみる効果はあるかも知れません。

しかし理系の修士のように、研究で時間を取れない学生が、研究や学習を捨ててまで参加するのは優先順位が違ます。結果としておろそかになった自分の専門性は、後の本選考において致命的な欠点になり得ます。本末転倒にならないよう、ご自分のスケジュールで判断し、目的を明確にして臨むなら、もちろんインターンシップは有益な「体験」になることでしょう。

特にOB訪問をどうすればよいかなどと迷っている学生であれば、職場に行ければもはやOB訪問する必要もなく、実際に働いている人と接することができます。自分の眼で職場を知ることができるのは、その会社に入る入らないだけではない、ご自分にとっての世界を広げる貴重な経験だと思います。

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