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僕は一人で僕の子どもを創る PEST分析から読む近未来vol.7/竹林 篤実

INSIGHT NOW! / 2015年11月20日 7時30分


        僕は一人で僕の子どもを創る PEST分析から読む近未来vol.7/竹林 篤実

竹林 篤実 / コミュニケーション研究所

クローン羊「ドリー」の衝撃
1996年、スコットランドで「ドリー」は生まれた。このニュースは、世界中を驚かせた。なぜなら、ドリーは世界初の哺乳類のクローンだったからだ。
クローンとは生体のコピーである。つまりドリーは、6歳の雌羊の細胞から人工的に作られた羊である。ドリーの成功に続いて、他の大型哺乳動物でもクローンが作られるようになった。
クローンを作るのは、現存している動物だけとは限らない。例えば、近畿大学ではマンモスを復活させる研究が進められている。映画『ジュラシックパーク』の世界が、現実に科学のテーマとして再現されようとしている。近畿大学ではマンモスの大腿骨の骨髄から、胚を作成しクローンを創る計画だ。母体の問題などをクリアできれば、近い将来クローンマンモスが登場するかもしれない。
科学の進歩は留まるところを知らない。だから、当然のように次の疑問が湧いてくるはずだ。クローン羊を創ることができ、クローンマンモスさえ実現の可能性があるのなら『クローン人間はどうなるのか?』。

NHKテレビ『会えるはずなかった 私の子どもへ』
2015年10月5日、NHK・Eテレ・ブレイクスルーである番組が放送された。タイトルは『会えるはずなかった 私の子どもへ』、同性愛の女性カップルの子どもをテーマにしたドラマである。
同性愛カップルといえば、今年4月、東京都渋谷区で全国初となる同性カップル認可条例が成立した。これにより同性カップルに結婚に相当する関係を認める証明書が発行されることになった。証明書を発行されたカップルは、例えば家族向け区営住宅への申し込みが可能となる。欧米では既に同性カップルは社会的に認知されているケースがいくつもある。
同性カップルを結婚に相当すると認めるのなら、同性カップルが子どもを持つことも認められる可能性も出てくる。養子縁組などを行って、子どもを持つケースも出てくるだろう。
そこに科学の力が加わるとどうなるのか。NHKの番組が描いたのは、近未来に実現可能な世界である。つまり、実存する女性カップルの遺伝子を解析し、iPS細胞技術を使うことで、人工的に子どもを創る。
すると、その子どもは、どのように成長していくのか。例えば、どんな容姿を持ち、髪の毛の色は何色で、性格はどのようになるのか。そんな子どもの成長ぶりをシミュレーションしドラマ化したのだ。
そんなこと『あり得る』のである。既にケンブリッジ大学と京都大学の研究チームが相次いで、iPS細胞から精子や卵子の元になる細胞を作ることに成功している。まさに「会えるはずのなかった私の子ども」に会える可能性が、少なくとも科学的には出てきているのだ。

ゲノム編集というパンドラの箱
冒頭の少女の話は、ゲノム編集を使った治療である。ゲノム編集は、この10年ほどで急速に進歩した技術であり、さまざまな懸念を孕む技術でもある。
これを使えば、遺伝子情報を思い通りに書き換えることができる。少女の場合は、ドナーからもらった免疫細胞に編集を加えて少女に移植した。これにより、本来ならドナー以外の体内の細胞を敵とみなして攻撃する免疫細胞を活用して、白血病を治療できたのだ。
この技術の可能性は、いくらでも広がる。例えば、遺伝子変異によっておこる疾患はほとんどが治療可能となるだろう。あるいは受精卵にゲノム編集を施せばどうなるか。狙った通りの子どもを生まれさせることもできるかもしれない。
中国では、人の受精卵にゲノム編集を施したとのニュースがあった。これはiPS細胞関連の研究者の間では話題になっており、中国の研究者たちは「その先」に踏み込んだのではないかとも言われている。
「その先」とは何か。そこはぜひ、皆さんで想像してみてほしい。

僕が、僕一人だけで僕の子どもを創るとき
iPS細胞技術を使えば、次のようなことを既に起こすことができる。男性の皮膚から卵子、女性の皮膚から精子をそれぞれ創るのだ。
だとすれば「その先」を考えてみるとどうなるか。男性の皮膚から創った卵子と、その男性の精子を人工授精させる。子どもが生まれてくる。その子どもは『僕が、僕一人だけで創った僕の子ども』である。
そんな馬鹿な妄想ではある。現時点では妄想にすぎないと思うし、これから先もずっと「そんなアホなこと」は起こらないと思いたい。
けれども、クローン羊ドリーは誕生した。マンモスも復活するかもしれない。iPS細胞技術を使った、再生治療は実証段階に入っている。一方でゲノム編集も現実化し、人の命を救うようになっている。
今ではごく一般的な不妊治療となっている体外受精も、かつでは神をも恐れぬことと批判された時期があった。けれども、人間は、その時点での基準で自分たちに良かれと思うことをやってしまう。
iPS細胞技術、ゲノム編集が、この先どんな未来を拓いていくのか。頭の片隅にでも関心を持っておき、関連ニュースが出た時には注目していただければと思う。

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