人事部に求められる新たな役割とは何か?/鬼本 昌樹
INSIGHT NOW! / 2015年12月2日 17時30分
鬼本 昌樹 / 戦略人財コンサルタント
人事部の役割は、この数年で大きく変わり始めている。
100 Best Companies to Work For)の人事に関する共通点を探していくと、人事部の役割が明らかに変わってきていることに気づく。
2000年前の人事制度と人事部門の役割と、2000年以降とでは大きな変革がはっきりとわかる。
2000年ごろまでは、その機能の一部、例えば、給与・賞与計算や社員研修などをアウトソース(外部委託)し、管理的な役割から経営目標達成の事業戦略を人的側面でサポートする役割に変革をしてきた。それが、2000年を超えてから、社員一人ひとりに焦点をあててその組織の事業推進や風土変革の役割を担うようになった。2010年ごろから、社員がもっと働きやすく、仕事に集中しやすい職場環境を物理面、物理面だけではすでに2000年以前には実現していたが、さらに、精神面や個人の自己実現を実現させる支援を通して、やる気を引き出しイキイキと元気になれるように、社員一人ひとりの活性化の使命と役割を担うようになってきている。
2015年12月から、企業において社員のストレスチェック義務化が実施されるようになった。しかし、フォーチュン100の企業のすべてにすでにEAP(Employee Assistance Program 従業員支援プログラム)を導入してその実績が評価されトップ100入りしている。ストレスチェックは最低限のプログラムであり、それをはるかに超えている。さらに、ワークライフ・バランスを超えたワークライフ・ソリューションを実現している。すなわち、もっとワークに集中して最高のパフォーマンスが発揮できる仕組みを導入している。
10年前のフォーチュン100に名をあげる企業の人事制度と人事部門の役割を確認して、新たな人事の役割とは何か、を考えていく必要があるのではないか。
人事部門の役割はこれだけではない。経営者と社員の関係改善にも人事がしっかりと入り込んでいる。つまり、経営者と社員は対立する関係ではなく、協働でビジネスを遂行し、新たなチャレンジを通して、ハイレベルなパフォーマンスを社員一人ひとりが生み出して自己実現を支援する役割を持っている。 社員重視の人事の姿勢を強く感じるものである。
人事部門は、もはや社員を管理する部門ではではなく、社員一人ひとりの力やチームとしてのパワーを発揮してもらうための仕組みを構築する存在となっている。
また、社員に家族がいれば、その家族をも大切にした仕組みを築いている。家族が安心して生活できるから、社員も仕事に集中して専念して高いパフォーマンスを生み出すことが可能となる。これは、フォーチュン100に名をあげる企業が日本企業を研究して導入したようだ。
日本企業も、昔は、社員も家族同様で家族的な絆を大切にしていた企業が大半だった。時代と共に、それが否定され、壊されて成果主義、超短期的視点へ移っていった。
今では、フォーチュン100の優れた外資系企業のほうが日本企業をはるかに超えて社員とその家族に対し手厚く対応している。日本企業の伝統的な終身雇用や年功序列の根底には、高度成長の舞台背景もあったが、そこには、社員を大切にする気持ちからそのような制度が生まれてきたのかもしれない。
同じ社員を大切にする価値観が、時代と国を超えてフォーチュン100社で新たな名前とその仕組み、制度として活かされ評価されている。
何よりも、社員とその家族を大切にすることこそが企業の競争力を強靭なものにし、その結果、企業価値をますます高めることに気づいた企業がフォーチュン100に選ばれている。
日本企業も雇用のパラダイムシフトによって社員への扱いが一変した。また、労働人口の減少と、女性活用、シニア―活用の取組を加速させる人事の役割はますます戦略的な機能として求められている。人事部は、国際競争力や社員とその家族を大切にすることを再検討し、さらに、社員の強みと知恵をフルに生かすことを改めて真剣に考えてほしい。
日本企業の強みであった社員を大切にする精神をもう一度改めて考え直してほし。でなければ、フォーチュン100の企業のみならず、他社のグローバル企業との格差は開くばかりなってしまうのではないだろうか。
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