「人事部に求められる新たな役割とは何か? 」の読者からの反響/鬼本 昌樹
INSIGHT NOW! / 2015年12月4日 11時31分
鬼本 昌樹 / 戦略人財コンサルタント
前回の人事部の新たな役割について、早速に反響がありました。
テレビドラマ「下町ロケット」と同じだ
それは、「今、人気テレビドラマ―下町ロケット、と通じるものがある、同じだ」というものでした。
このドラマは、俳優の阿部寛さんが演じる主人公の佃(つくだ)製作所の社長の熱意が、あらゆる社員を巻き込んで、あらゆる修羅場を乗り越えていく物語です。もともとは、宇宙科学開発機構で働いており、自ら開発したロケットエンジンを搭載したロケットの打ち上げが失敗となり、その責任を取って退職。父親の家業を継ぐことになり佃製作所の社長に就任したのです。ロケット打ち上げの失敗、その屈辱と自己実現を達成させるために、ロケットエンジンのバルブシステムの開発に没頭し、特許まで獲得したのです。ここまではよくある話です。
しかし、社長の自己実現とは何か、それが、使命に変わってとき信念や情熱を感じていきます。社員に対して、自己実現の意義や目的を何度も何度も繰り返し説明し、そこから社員を動かしている。佃製作所は、エンジニアの集団ではあるが、営業担当、経理担当も全員を巻き込んで、取引先企業の無理難題な宿題も課題もこなしている。エンジニアに課せられた課題ではあるが、それを周りが見ていて、自主的に支援をしている。また、その姿を見ていた社員食堂のおばちゃんたちが夜食を準備しもてなしている。ドラマとはいえ、考えさせられる光景がいくつもある。
そのなかで、「何のために技術を活かすのか?」「僕たちの目的はなんだ?」と常に原点を問い続けている。
「自己実現」の意味、意義を根本から考えさせられる。
自己実現を再度見つめてみる
「自己実現」は市民権を持った言葉ですが、本当の意味や意義となると、なかなか理解していない。「マズローの欲求5段階」の法則は、社会人なら聞いたことはあると思う。モチベーションを持たせる理論でもあるが、「自己実現」のレベルは、もはやモチベーションを超えたパワーではないだろうか。それは、「明確な目的意識」であり、「覚悟」さえ感じるパワーでもある。
100の優良企業は、「自己実現達成」の人材を採用し、育て、それでビジネスをさらに成長させている企業が選ばれている。例えば、グーグルは2014年、2015年とも最優良企業であるが、グーグル地図にしても、自動車の自動運転にしても、社員からの自発的な「自己実現」から発生している。
企業の求めている人材と、「自己実現を達成したい」ことに源泉を持つ人が一致できれば、社員として採用し、活躍の場所をドンドン与えている。安心して自己実現が達成できるように支援を、社員にも家族にもしている。
自己実現を達成したい源泉という高い目標を仕事で実現していくことができれば、社員のパフォーマンスもモチベーションも最大限に発揮してもらうことができるのです。
いくら会社が大きい、有名、安定している、給料がいい、福利厚生も社内研修も充実しているだけでは、採用はもはやできない。ましてや、社員の能力を最大限に引き出すこともできない。限界があることはすでに気づいているのではないだろうか。
マズローの欲求の法則にもあるように、自己実現は最高の欲求であり、この自己実現を、仕事を通して達成していくドラマ「下町ロケット」は共感で、感動するドラマである。
松下幸之助氏も「自分の好きなことをしてみなはれ」と言い、ドラッカー氏も「自分の強みを活かしなさい」と言っている根底は、自己実現なのです。
2015年はいろいろな問題が浮上してしまった。
2014年、2015年、さらに問題修正のために2016年も変更するという。毎年、変更するとは何事なのか?
こんなハード的アプローチばかり検討していないで、もっと、ソフト的アプローチを提案することはできないのだろうか?
10年前と変わっていない。採用手順もメディアは変わっても、手順も基準も変わっていない。採用面接官のスキルも意識もまったく変わっていない。なので、書店で売られている内定獲得の攻略本も面接本も基本的な内容はまったく変わっていない。
2016年も引き続き行われるし、こんな予想は、誰でもできる。
自己実現を確認するソフト的アプローチの採用
ソフト的アプローチとは、会社説明会は通常通り行っても、その後の手順はまったく違う。ポイントだけを言うと、能力評価テストは実施しない。さらに、経歴書に添付する資料として「自己実現」に関する作文を書いてもらい、求める人材を1次面接で確認する。面接官の質が問われる場面でもある。面接官の練習はまったく必要ない。課長や部長クラスが目標面談や人事面談でしっかりした対応をとっといれば、そのまま新卒採用面接で使える。
問題は、2次面接である。ここでは、「自己実現」について深堀の質問をしながら、本心・本音を確認する。3次面接では、企業が応募者に提案をする。「あなたの自己実現をうちの会社で、このように実現することができます。その提案は、こうです」と。
これまでの採用手順に従った自動的な流れとは根本的にちがう。企業説明では、全般的な説明で終わり、3次面接では、個人に特化した説明になる。
もちろん、学生にとっても「自己実現」が明確に意識して表現できなければ、内定は困難となる。
2011年の東北地方太平洋沖地震で大きな困難を経験した新卒者を何人も面接したことがある。明らかに、他の学生とは意識の差、態度の差は肌で感じた。彼らは明確に将来の設計を「自己実現」として持っていた。彼らの話に本心・本音が感じられ、企業としてもむしろ応援したい気持ちになったことを覚えています。さらに、すごいのは、数か月間の新卒研修が厳しいにもかかわらず、彼らは、誰よりもすぐにマスターしていった。同僚がアフターファイブに飲んでいる間、徹夜してでも研修で行ったことをマスターしていった。このような経験をお持ちの方はおられるのではないでしょうか。
「自己実現」という源泉は、仕事においても、生活においても充実した意義あるものを生み出すことができる。そんな証明はすでに行われていたのかもしれない。
この経験から、新卒採用においては、自己実現の作文を書いてもらうことにした。その背景や環境、理由や意図は面接で確認する。そして、面接の手順も内容も変えた。
新たな人事部の役割を検討し、新たな新卒採用も見直しが必要ではないだろうか。圧迫面接も「オワハラ」も不要。もっと、本音・本心が確信できるソフト的アプローチと検討してほしいと切望しています。
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