ソニーらしさが光る新規事業創出プログラムと「First Flight」/神原 サリー
INSIGHT NOW! / 2015年12月14日 11時15分
神原 サリー / 株式会社神原サリー事務所
■技術が支える新規事業と、“共創”という新しい取り組み
ソニーが10月29日発表した2015年4~9月期の連結決算(米国会計基準)は、最終損益が1159億円の黒字となり、前年同期の1091億円の赤字から一気に転換している。中間決算として最終黒字を実現したのは5年ぶりだという。日経新聞によれば、「画像センサーやゲーム、音楽事業が好調だったうえ、不振の携帯電話事業の赤字幅が縮小した」とあるが、将来を見据えた取り組みとしては、同社の新規事業創出プログラムに大いに着目したいところだ。
今年7月、ソニーは新規事業創出プログラムの新たな施策として、クラウドファンディングとEコマースのサービスを兼ね備えたサイト、「First Flight」(ファースト・フライト)をオープンしている。これは、事業化の初期段階にあるプロジェクトに対して、リアルな市場ニーズを検証。サイト内において顧客とのダイレクトな対話を通じた共創型の開発・商品改善を行ない、タイムリーかつ規模に対して最適化された販売の機会を提供して、新たな事業の立ち上げと成長を後押ししていくというものだ。
これまで、“誰でも発明家になれる”スマートDIYキット「MESH」や、文字盤とベルトが電子ペーパーでできた“柄が変わる時計”「FES Watch」の販売のほか、新規事業創出プログラムの第1回オーディションを通過したプロジェクトである、“あなたになじむリモコン”「HUIS REMOTE CONTROLLER」のクラウドファンディングを実施。続いて行なわれたバンド部に機能が入った腕時計「wena wrist」のクラウドファンディングにおいては、サポーター2070人、達成率1071%(1億円以上)という驚異的な数字を叩き出し、多数の応援者のもと、2016年3月以降に支援者に届けるべく製品化へと入っている。
■2016年1月20日まで支援を受け付けている「AROMASTIC」
現在、クラウドファンディングによる支援を受け付けているのが、5つの香りで気持ちのスイッチを切り替えることができる「AROMASTIC(アロマスティック)」だ。SONY独自の技術Scentents(センテンツ)(TM)により、複数の香りを閉じ込め、長期間その香りを保持できることを可能にしている。リップスティック大のコンパクトな容器には5つの香りを閉じ込めたカプセル状のものが入っているのだが、気分に応じて好きな香りを選んで楽しめるというのが、アロマスティックならではのポイントだ。
本体上部をカチカチと回して、香りの種類を選び、サイドの丸いボタンを押すとトップからアロマが香ってくるという仕組み。押している間だけ香りがする。アロマの監修はニールズヤード レメディースのアロマセラピストが監修した天然植物からとれる香りを使っている。
香りが人の心や体にもたらす力は大きく、ほんの少しの香りでも気持ちを切り替えたり、元気にさせたり、リラックスさせたり、安らかな眠りに導いたりすることができる。入眠をスムーズにしたり、眠りの質を高めるのに大きな役割を果たすものとしても「香り」は重要なファクターになる。これは温度、湿度、音、明かり(光)などよりも優先順位が高いとさえいわれているほどだ。
とはいえ、どんな時にどんな香りがいいのかは、個人の好みがあるので一概にはいえないのが香りの難しさでもある。だが、このアロマスティックなら香りを限定しないで複数(5種類)を持ち運べ、自分の気持ちのスイッチを切り替えたいときに、自分だけに香りを届けることができる。
朝、目覚めたばかりのときに、よりスッキリとさせるために選ぶ香り、会議の後に高揚した気分を落ち着かせてくれる香り、ベッドに入る前にねむりのスイッチを入れてくれる香りなど、たった1つのスティックで届けてくれるのはとても素晴らしいことだ。
■研究から製品化、プロモーションまですべてに関われることの幸福感
この「AROMASTIC」のチームリーダーを務める藤田修二氏は理学博士で、ずっと厚木の第2研究所で研究一筋の日々を送ってきたのだという。ところが、今回、光ディスク技術を応用した香りのカートリッジを使った新機軸の製品、アロマスティックのプロジェクトが社内オーディションを通ったことをきっかけに、製品化からプロモーション、パンフレットづくりにまで関わることになり、これまでとは全く異なる展開にわくわくしていると目を輝かしている。
ソニーには元々、「人々の心を動かし、感動を与えるというミッション」があると聞く。自分がいいと思ったものはきっと世界の人々の心を動かし、感動を与えるはずだとし、信じた道を突き進んでいくのが、ソニーの企業文化だったはずだ。それがいつのまにか「売れるもの」しか作らない。製品化しないという縮こまった考え方へと変化してしまっていたようにも感じる。
今回、「First Flight」という舞台において支援者を募るだけでなく、その声を聞いて製品化の際にブラッシュアップしていくという“共創”という時代を先取りする試みをいち早く取り入れている点はいかにもソニーらしいのではないだろうか。
さて、この「AROMASTIC」だが、11月20日~2016年1月20日まで、1本8980円(税込)として支援(予約販売)を受け付けている。このクラウドファンディングの仕組みは、その支援額が目標に達した場合にのみ製品化されるため、がんばってほしいところだ。支援といっても、募金するのではないため、予約販売と考えればわかりやすいかもしれない(目標額に達しない場合は支援金額が引き落とされることはない)。
「香り」はとても繊細だけれと心に与える力はとても大きい。気持ちのスイッチを入れてくれる魔法のスティック「AROMASTIC」プロジェクトの成功を祈りたい。
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