実行するビジネス・パーソンは何が違うか ⑥やっかいな自己都合の役割意識/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2015年12月24日 10時55分
猪口 真 / 株式会社パトス
役割意識とは、まず自分がやるべきことへのコミットメントという意味となるが、役割意識はどうすれば生まれるのだろうか。
仕事の内容や部門は配属の時点では、大企業になればなるほど自分の業務上の役割(部署や職種)を自分で選ぶのは困難だし、スペシャリストとして転職するなら別だが、中小企業においても、自分が望む通りの仕事だけをしている人はほとんどいない。
それ以前に、自分自身で自分の本当の適性や得意なことを正確に把握している人も少なく、これまでかかわってきた仕事の中で身についてきたスキルや知識を生かすという形で、希望の部署や職種を上司や人事に提案することになる。
とはいえ、同じ部署でも人によってやる仕事は全く異なることのほうが普通で、いつも自分が思い描いていた仕事ばかりできるとは限らない。
誰でも会社から与えられている大まかな役割に関しては認識しているはずだ。営業であれば売り上げを上げるのが役割であり、経理であればスムーズな経理処理を行うのが役割となる。なので、普通に考えれば、役割意識があるとかないとか以前の問題であり、給料をもらう代わりに、会社から与えられた仕事を遂行するのは、至極当然のことのように思える。
では、部下やメンバーは仕事を上から与えられているのに、上司(リーダー)から見れば、役割意識を持っていないというのはどういうことなのだろうか。本当に部下やチームメンバーは役割意識を持っていないのだろうか。
チームリーダーやマネージャーとして部下やメンバーを見た場合、いわゆる痛い現象として多いのが、相手に対しる期待値、期待像を当の本人がまったく理解していない、理解しようとしない、あるいは理解したい気持ちはあるが周囲のせいでそれは無理だと思っていることだろう。
おそらくそれが、リーダーから見た場合の部下の「役割意識の低さ」ということになっている。
市場や環境のせいにして、自分の無力さ、責任はない(こういう市場で現在の商品で勝負しようとする会社が悪い)ことを主張する人はたくさんいる。自分は組織人としての役割は十分に果たしているのだが、いかんせん条件が良くない、と。
また、「そもそもそういう期待自体がありえない」「誰ができると言うのだ」「そもそも俺がやる仕事ではない」と息巻く人もいる。(もちろん、正面切ってではなく陰でだが)
残念ながら、こうしたひとたちは、自分の組織における最大の役割が、「成果を上げる」ことだということが分かっていない。間接的に貢献していると言い張るのだろうが、痛い話だが、それは他の誰でもできる仕事であることが多い。
仕事のコミットメントにつながる役割意識とは、組織の業績を上げるために、自分が担うべき役割、つまり自分の存在意義、自分が果たすべき貢献、責任のことだ。
大半のビジネス・パーソンは、上司から、会社から与えられた目標や仕事に汲々としながら毎日を送っており、自分しかできないこと(自分の組織の中で)、その仕事では自分しか稼げないと強く認識している人は少ない。
成果が見えない中で、「自分はこんなに頑張っている」「こんなに忙しい」「周りがだらしないから自分がこれをやっている。邪魔しないでほしい」。こうした声は残念ながら経営陣には無視される、これを「自己都合の役割意識」と言う。
たまたま、実権のあるリーダーの耳に入ったところで、「だからどうした」と返されてそれで終わりだ。
たまたま配属された部署で、最初はいやいややっていた仕事の面白味が徐々にわかり、最終的にその道の権威になった人はたくさんいる。仕事とはそういうものかもしれない。
とはいえ、本当に自分が期待される役割を果たすために、日々改善を重ね一生懸命やっているのにもかかわらず、成果が出ないことに苦しみ、現在の会社からは良い評価が出ていない人もいるかもしれない。
しかし、そういう人は、その会社での評価は低いかもしれないが、市場での価値は低くない。そういう意識と行動力を持つ人材は、どこでも通用するだろう。ビジネスパーソンとしての基本、周囲のニーズを理解しているのだから。
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