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コンテンツマーケティング進行により、営業不要の時代に/竹林 篤実

INSIGHT NOW! / 2016年1月11日 7時30分


        コンテンツマーケティング進行により、営業不要の時代に/竹林 篤実

竹林 篤実 / コミュニケーション研究所

顧客の邪魔をしないキーエンスの営業スタイル

顧客訪問は週に3回まで、行くときには必ず何かおみやげ(=顧客に役立つ情報)を持っていくこと。以前キーエンスを取材した時に、経営企画室長から伺った話である。
営業は顧客を訪ねてなんぼ、一年間に何足靴を履きつぶしたかで評価される。そんな従来型の根性営業セオリーとは真っ向から対立するのが、キーエンスの営業に対する考え方だ。
なぜ、キーエンスでは顧客訪問に縛りをかけるのか。単なる顔出しあいさつの営業訪問は、対応する顧客にとって純粋に時間泥棒にしかならないからだ。これに対して、顧客がその時に知りたかった情報を持ってきてくれるのなら、その訪問は顧客にとって価値ある時間となる。だからキーエンスの営業マンは、顧客訪問の前の準備に時間をかける。
いま顧客が抱えている問題は何か。その問題を解消するためには、どんなソリューションがあるか。顧客が勝負している市場の動向を調べ、顧客の競合の動きをリサーチした上で顧客のところに出向く。事前準備に時間がかかる。
こうした努力をしているからキーエンスの営業マンは、顧客の生産ラインにまで招かれ、アドバイスを求められる。キーエンスの営業マンが一方的に話すのではない。顧客の相談に応えるのだ。これこそ本来の意味でのコンサルティング営業である。そうした会話を通じてキーエンスマンは、顕在化していない顧客の問題点を見ぬき、課題を解消する製品を開発する。このメカニズムが同社の異常な高収益率を生み出している。

必要な製品や情報はネットで自分で探す

とはいえ、キーエンスがカバーしてくれるのは、ごく一部の企業にすぎない。同社とは関わりのない企業に勤めるあなたが、業務を行う上で何らかの製品やサービスが新たに必要になったとしよう。その時、あなたはどんな行動を取るだろうか。あなたの会社の取引先の中で、その製品・サービスを扱っていそうなところを見つけて、営業マンに電話をかけるだろうか。
今どき、そんなことをする人は少数派のはずだ。とりあえず自分で検索してみる人が、圧倒的多数派ではないか。仮に取引先営業マンに電話をかけるとしても、その前にひと通りはネットで調べて、情報を頭に入れておくぐらいのことはするだろう。
自分で調べるのは、自分都合でいつでもどこでも、ネットに繋がりさえすればできる。アポイントを取って営業マンを呼ぶよりも、そのほうが便利で、時間を無駄にしない上に、得られる情報も幅広い。となると、そうした製品・サービスを提供する側としては、自社のサイトを見に来てもらわないことには話にならない。

オウンドメディアが営業マンの代わりになる

何らかの製品やサービスを顧客が探しているときに、自社の製品・サービスを見に来てもらうためのサイトがオウンドメディアである。コンテンツマーケティングとは、ごくかいつまんで言えばオウンドメディアを運営し、そこからクロージングまでの一連の流れを作ることだ(リードジェネレーションから顧客フォローまでを、システム化することをマーケティング・オートメーションとも呼ぶ)。オウンドメディアの核となるコンテンツはビジネスブログである。このブログに事例レポートや調査分析レポートなどをくっつけ、資料請求のフォームを用意し、メルマガ登録もしてもらえるようにする。
ブログ記事では、自社製品の開発思想を語り、ユーザーの使用事例を掲載する。顧客が何より知りたいのは、自社と同じようなユーザーの事例だ。そこでは使用上のトラブルや、一工夫することで効率を高めているケースなどが最も有益な情報となる。従って、オウンドメディアのコンテンツは、可能な限り取材(開発者=作った人&ユーザー=使っている人)をして作ることが望ましい。

コンテンツは誰が書くべきか

BtoBのコンテンツマーケティングにおいて、効果的な、すなわち集客から関心喚起へとつなぐコンテンツライティングをするためには、次の3つカテゴリーの能力が必要だ。
マーケティングとインタビューとライティングである。
マーケティング能力が必要なのは、当たり前の話である。その企業が置かれているビジネス環境をマクロ(PEST分析)とミクロ(3C分析)で理解しておかなければ、コンテンツを書く背景がわからない。競争環境については5F分析まで突っ込んでおき、単なるSWOTではなくクロスSWOTに基いて、マーケティング戦略の肝となるSTPを再確認し、仮想顧客のペルソナを描いておく。ここまでの一連の作業を行って初めて、コンテンツライティングを進める上での核心となる「顧客の課題=検索キーワード」をあぶり出すことができる。
準備をして状況を頭に入れた上で、顧客インタビューを行う。予め想定しておいた顧客の課題を参考にしながら、新たな課題や意外な使用法などを引き出すためには、臨機応変に対応して話を聞き出す技術が必要だ。相手(顧客)が、その分野でのプロであることを踏まえるなら、インタビュアーにもそれなりのキャリアが求められるだろう。
その上でのライティングである。文章そのものが読みやすいことは大前提であり、記事タイトル、リード、本論とまとめで語るべき内容(これこそがコンテンツだ)が適切なキーワードともにまとめられていなければならない。特にBtoBに限れば、マッキンゼー式ピラミッドライティングがふさわしいだろう。

優れたコンテンツは計上すべき資産である

こうして作られたコンテンツは、営業マンの代わりをしてくれる。仮に一本の記事で、一件の受注につながっとしよう。その費用対効果は、どれぐらいと見積もれるだろうか。これはケース・バイ・ケースだから、ぜひ御社の営業マンの人件費と経費を頭に思い浮かべて計算してほしい。
しかも、作られたコンテンツは、対象となる製品・サービスが廃番にならない限り、将来に渡って顧客を連れて来てくれる可能性がある。優れたコンテンツは資産となるのだ。従ってコンテンツライティングを、仮に外注するとすれば、そこでは費用対効果をきちんと考えるべきである。
間違っても「一本何百円で書きます」を売りにする相手に頼むべきではない。マーケティングリサーチをし、顧客取材を行った上で書くコンテンツである。
一連のプロセスを進める上で、自社のマーケティングサイクル改善に繋がる、顧客インサイトまで引き出してくれるインタビュアーであるかどうか。ここまでをしっかり判断した上で頼むべきだ。
さて、こうしたコンテンツが、御用聞きレベルから情報提供型営業マンの代わりをする。すると必要なのは、コンテンツから得た情報を元に、相談のできる相手である。コンサルティング営業こそは、コンテンツ・マーケティング時代に求められる営業であり、それ以外の営業は「………」となる。

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