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日本企業のものづくりのすごさ/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2016年1月27日 14時38分


        日本企業のものづくりのすごさ/野町 直弘

野町 直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

先日、ある自動車部品製造会社の工場見学をさせていただく機会をいただき、たいへん感銘しました。

調達購買コンサルタントをやっていると、日頃お客様やその他の企業さんの工場見学をする機会がないこともありませんが、それほど多くはありません。ですから私が感銘を受けたことが皆さんの工場にとっては「当たり前」のことかもしれないでしょう。
また、今回見学させていただいた工場は「営業支援できる工場」ということで様々な取組みを積極的に行っている工場だったのかもしれません。いずれにしても興味深い点が多く、今回はいくつかの内容を紹介しながら日本企業のものづくりのすごさについて述べます。

一つ目は「からくり」アイディアです。
「からくり」とは、工場で働く人たちが手作りする生産のための設備や道具のことで、現場の人たちが、コストを掛けずに知恵を絞り、身の回りで簡単に調達できる材料を使って作る点に特徴があります。からくりは日本プラントメンテナンス協会が提唱している改善活動であり、

・「メカニズムは単純シンプル」
・「お金をかけない」
・「ムリ・ムダ・ムラを退治した改善」
という定義とのことです。

この工場でも様々な「からくり」アイディア事例が生まれており事例紹介されていました。特に関心したのは作業者がより「楽に」作業するために、というのが徹底されていることです。
例えばマグネットを使いナットが簡単にインパクトレンチにセットされるしかけ等、本当に細かい工夫ですが、あればいいな、が実現できるようなアイディアにあふれています。

次は「からくり」にも関係しますが「ストライクポイント」、皆さんストライクゾーンは知っているでしょう。しかし「ストライクポイント」(造語のようです)は野球のストライクゾーンよりも狭い直径100mmの範囲になります。「ストライクポイント」は人間が作業をしやすい範囲をよりピンポイントに示したものです。
ですからこの工場では製造ラインに沿って人が動くだけでなく、「からくり」により常に作業者が「ストライクポイント」で作業ができるようにラインが動くような工夫がされています。

最後はマンガを使った「見える化」推進です。日本の製造業は既にグローバル化が進んでおり、工場のマネジメントも多国籍化しています。そういう状況下で工場内の見える化を「マンガ」を使ってやっています。マンガであれば見ればわかりますので共通言語になります。それを外部に委託して作っているのではなく、絵が上手な社員が描いている。恐れ入ります。

このようにさらなる生産性向上や安全性向上などの取組みを日々おこなっているのが、工場現場であり、これはこの企業だけでなく、日本のものづくりの現場に共通している特徴と言えます。

私が以前ある自動車会社の役員さんから聞いた言葉で印象に残っているものがあります。
それは「いい現場は直ぐに変わる」という言葉です。その時はお客様向けに自社工場のご案内をその役員さんがなさっていたのですが、数週間現場を見ていないと(改善が進むので、)自社工場がどんどん変わってしまう、しかし変わる工場は改善が進む工場だ、ということをおっしゃっていました。

このように多くのものづくりの現場には絶え間ない改善が日々積み上げられているのです。

また今回工場見学をさせていただいて改めて認識したのは、「共通言語」の力です。工場マネジメントのためには現場の社員一人一人が分かりやすいシンプルな共通言語が必要です。たとえば今回の企業でも「からくり」アイディア「ストライクポイント」「バリュ-4(全てハーフで2倍のものづくり)」というような共通言語がありました。とても分かりやすいです。こういう共通言語は意思伝達や規範にもつながります。

以前私はメルマガでトヨタ、GEの共通点で共通言語があり、その共通言語に従って業務遂行がなされている点も強みの一つであるということを書きました。http://www.insightnow.jp/article/2132

しかし、今回の企業や、他企業での生産革新活動などの事例を見ても共通言語を上手く使っている事例は多く見られます。つまりこのような共通言語を使ったマネジメントも日本のものづくりに共通する特徴の一つなのです。共通言語は単に言葉ではなく規範であり、ルールであり、業務遂行の源泉になります。5Sの躾と同じ効果があるのです。

このように絶え間ない改善と共通言語という二つのポイントは、日本企業のものづくりの現場でのマネジメント手法と言えます。最近はものづくりというと職人的ものづくりが注目されていますが、実は日本企業のものづくりのすごさは、このようなマネジメント手法にも存在すると言えるでしょう。正直、日本国内でものをつくり続けることはコストが掛りすぎる時代になりました。
絶え間ない改善を進めていっても新興国でものを作った方が圧倒的にコスト的に有利な状況かもしれません。しかし、このようなものづくりの現場のマネジメント手法は日本企業のものづくりの強みであり、それを新興国に展開していることが正に競争優位につながるものでしょう。

翻って調達購買の世界はいかがでしょうか。絶え間ない改善は行われているでしょうか。共通言語などを以て社内や部内のルールや業務を徹底することができているでしょうか。まだまだ足りない部分は多いと再認識した次第です。

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