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経営戦略構文100選(仮)/構文1:ブルーオーシャン戦略/伊藤 達夫

INSIGHT NOW! / 2016年3月14日 7時0分

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伊藤 達夫 / THOUGHT&INSIGHT株式会社

ブルーオーシャン戦略はバリューチェーンにあるような付加価値概念の必然的帰結である。短期ではキム&モボルニュの言うようにポーターの基本戦略を否定する面があるが、長期では必ずしもそうではない

構文っぽくかっこよく書いてみようと思いましたが表現力の限界を感じました。こんにちは、伊藤です。今日も元気です。

乏しい表現力ながら太字になっていますが、指し示す内容はたいしたことはありません。恐れずに考えながら読んでいきましょう。

ブルーオーシャン戦略というと、本が薄かったせいか、ワークブックなるものが出版されているせいか、にわかなコンサルタント、経営スタッフな方々が語りたがるネタではあります。ワークブックなんてものすごく薄くて1時間ぐらいで読めます。

「競争のないブルーオーシャン」的な表現で何かを語る人がいたら要注意です。中身のない話をぶちまけられる可能性大です。イメージ画像のように冷たい目でかもめが飛び行く様子をイメージしましょう。

そもそも、ブルーオーシャン戦略は競争のない状態がどうということにその主眼があるわけではありません。ブルーオーシャン戦略の核になる部分については今更解説は不要とは思いますが、簡単にご説明しておきます。

マーケットにおいて長期的には超過利潤はなくなっていくと経済学では考えます。もしも、儲かったとしても、その情報はすぐに伝わって、みんな同じようなことをやるようになり、みんな儲からなくなる。そういわれると確かにそんな気もします。

しかし、そんな状況を打破する方法があるとしたら?

知りたいですよね。ブルーオーシャン戦略によれば、顧客に提供している価値を部分に分け、過剰品質になっている部分、顧客が感じる価値の割に高いコストになっている部分を取り除くと、顧客が感じる価値の水準を落とさずに、低コストを実現することが可能だそうです。そして競争優位が得られる。それはつまり超過利潤が得られることに等しいわけです。

具体例としてよく出てくるのは、美容・理容業界で物議をかもし続け、既得権益者の陳情が激しいせいか、地方議員のマインドが腐っているせいかわかりませんが、地方が条例で規制し始めているQBハウスさんがあります。さすが、陳情の多い業界ベスト3に入る理容・美容業界ですね。最近、「保育園落ちた日本死ね!」で話題の幼稚園、保育園がベスト3に並んでいることも偶然ではないでしょう。

大前研一さんが「企業参謀」の中で理髪店に行ったときの様子を書いています。髪を切る以外のことに多くの時間やコストが費やされ過ぎで、自分でできる髭剃りやタオルで顔をふいたりすることにまで時間が使われている。髪を切ることに特化して自分でできることをやめれば儲かるはずだ、と。

まさにQBハウスさんはその通りのことをやり、大成功しました。

その他の例としては任天堂さんのWiiが挙げられます。当時、私もゲーム業界についていくつか報告書を書いていたので、非常に印象に残っています。

Wiiが出てくる以前には、ゲームが超大作RPGばかりになって、壮麗なグラフィック、壮大なシナリオ、クリアまでに壮絶に時間がかかるものになっていました。

この結果として、ゲームをやる人がコア化し、ライトなプレーヤーがなかなか手を出せない状況になっていました。ライトなプレーヤーが入る余地を作らないといけないというような報告書を書いた記憶がありますが、どうやって?はなかなか難しいものがありました。

そして、Wiiはそれをクリエイティブに、誰もが驚く方法で実現しました。

Wiiは壮大なグラフィックでもなく、開発費も巨大ではなく、もっと遊びの根本に立ち返ったような、みんなで簡単に遊べる遊びを提案しました。つまり、グラフィック、シナリオ、作りこみの深さなどは過剰な付加価値だったわけです。それを削ることで、新たな価値を実現したとも言えるでしょう。

まさに、ブルーオーシャン戦略に適合するケースだと言えるでしょう。これぐらいで、大体ブルーオーシャン戦略のさわりについてはご理解いただけたでしょうか?

それでね、ブルーオーシャン戦略を初めて読んだとき、確かにそういう面はあるよなあと思ったのですが、「戦略キャンパス」という表現方法を取ることに疑問を感じました。

戦略キャンパスというのは、顧客が価値と感じる要素を並べて、折れ線グラフで表現していくのですが、「なぜ折れ線?なんか変だな・・・」と思ったわけです。

こんなもの、積み上げ棒グラフでいいじゃないかと思った時、はっとしました。これは積み上げ棒グラフだともろにバリューチェーンじゃないか!と。

バリューチェーンは内部の業務プロセスを顧客に提供する価値で分析したもので、これはこれで奥深いものです。そもそも、内部環境を価値で分析するなど、ポーター以前にはなかったと思います。この話に深入りすると長くなるので、ここでは割愛して先に進みます。

顧客から見た価値で内部環境を分析し、それぞれのプロセスが付加価値を提供することで、業務プロセスは成立していると考えます。すると、顧客が感じる価値というのは少しずつ変化してくるものですし、供給サイドの考えと顧客が感じる価値というのはずれるものです。

もしも、顧客が感じる価値が変化したり、供給サイドが想定する価値が顧客の感じるものとずれているとしたら、バリューチェーン上にあるけれども、価値がない、価値が乏しいプロセスが発生していたとしても不思議ではありません。そういうプロセスは長期的にはバリューチェーン上から排除されていくことでしょう。

これは、ブルーオーシャン戦略と似てますよね?

そうです。ブルーオーシャン戦略はこのバリューチェーン上の付加価値を吟味することの必要性を主張しているに過ぎない、と読めるわけです。

確かに、ブルーオーシャン戦略が見事にはまると、ポーターの基本戦略が否定されるようにも見えます。キム&モボルニュはポーターの基本戦略は間違っている!と主張して耳目を引きました。

ポーターの基本戦略とは、競争範囲が広い、狭い、差別化かコストリーダーシップかの枠組みで戦略を分ける考え方で、差別化とコストリーダーシップはトレードオフだと考えます。

しかし、ブルーオーシャン戦略では、確かに差別化とコスト優位が同時に実現されているようにも見える。ただね、長期で考えるとどうなるか?を見てみると、それは長続きしないで、真似する人々が出てきます。そして、超過利潤は他の市場と同様になくなっていく。

QBハウスを真似する1000円カットの店も出てきましたし、Wii以降、ゲームの遊びの概念が変化したように思います。政治家に陳情して相手のビジネスを規制して、なんとかしようとするのはクソだと思いますけどね。ブルーオーシャン戦略で成功した企業も、長期的には超過利潤が減少していくことから、免れないでしょう。

ただですね、キム&モボルニュの主張が面白いのは、ポーターの基本戦略を否定するかもしれない要素が、ポーターのバリューチェーン、付加価値概念から出てきているように見えることですね。長期では必ずしもそうではないと思いますが、マイクロファウンデーションを重視するポーターとしては、バリューチェーンの必然的帰結として基本戦略に合致しないケースが出てくるのかもしれないと思っただけで焦るでしょう。産業組織論から経済学的な要素を持ってきて戦略論の一時代を築いたポーターですからね。

また、コンサルティング視点で面白いのは、事業戦略立案に際して、外部環境分析を重視するようなコンサルタントが多いですし、ファイブフォースを単に外部環境の分析ツールとして使う人が多い中、内部のプロセス分析からバリューの構成要素まで考えないといけないことを明示した点だろうと思います。

バリューとプロセスの関係まで見えていないと戦略は立てらないという現実は、外部環境重視、売ってナンボ派、マーケティング大好き派のコンサルタントには見たくない現実だろうなあ、と。

ただ、ブルーオーシャン戦略、バリューチェーンは部分論でバリュー全体を捉える枠組みに見えつつ、結局はバリューの再定義を必要としますし、バリュー全体の再定義を部分論から行っていくアプローチにも見えます。つまりは、顧客視点で見た価値が大事だということには変わりがないということですね。

このあたりも深掘りすると長いのでこれぐらいで割愛します。

さて、今日はブルーオーシャン戦略がどう見てもバリューチェーンの延長上にあるじゃん、ということを上品ぶって構文として語った後、いつも通り下世話に書いてみました。

それでは今日はこのあたりで。次回をお楽しみに。

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