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間接材購買の2つのコツ/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2016年3月24日 17時5分


        間接材購買の2つのコツ/野町 直弘

野町 直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

私は大学を卒業して新卒で勤めた自動車会社で直接材の購買の経験をしました。その後某外資系企業で間接材購買の経験もしています。間接材購買の経験についてはバイヤーとして実務だけでなく、部門立上げに伴う企画的な業務も担当していました。だいたい2000年前後の頃でしたので、日本企業の殆どには間接材購買という概念すらなかった時代です。

私自身にとっても間接材購買の業務は初めての経験でした。その時の実務経験やその後の数々のコンサルティング経験から、「間接材購買には、その特徴を踏まえて2つのコツがあることを理解しおくべき。」だということが分かってきました。

私はコンサルタントですから知識やスキル、経験を一般化、体系化して色々な企業に活用させていくことが仕事です。そういう点からは顧客がよく「うちの会社は特別だから」とおっしゃっていても、それを否定する立場にあります。もちろん間接材も直接材購買もモノを買うという業務や役割、機能は同じです。特にカテゴリ毎の戦略の立て方やソーシング業務や購買実務の進め方などは殆ど違いはありません。ですから特殊性を否定しつつ、違いを認識した上でその特徴にあった改革や業務の進め方をしていく必要があるのです。

それではその2つのコツとはなんでしょうか。

まず1つ目のコツは「いい加減」です。

私が外資系企業で間接材購買を担当した時にまず感じたのは「気持ち悪さ」でした。どういうことかと言いますと、例えば何を誰がどこからどれ位購入(支出)しているかが分からないということです。直接材購買の場合には図面番号が決まっており図面番号ごとに図面もしくは仕様書が明記されています。ようするに何を買っているかなどは調べればすぐにわかりますし、樹脂射出成型品といった工法分類などの作り方も容易に理解できます。
それに対して間接材は費用(勘定科目)項目しか分かりません。どこから買っているかは経理データからある程度把握することはできますが、何を買っているかについては、誰かがそういうデータを入力しない限り分からないのが当たり前です。言い換えると正確に何を買っているか全てを把握することはほぼ無理なこと。
これが直接材の購買をやっていた人間にとってみると「気持ち悪さ」につながるのです。分析もデータに制約がありますから限界があります。こういう性質だからこそ間接材購買は「いい加減」に進めるのがコツなのです。

「いい加減」という言葉は普段「良い」加減ではなく「あまり良くない」加減という意味で用いられることが多いようですが、ここでは「良い加減」で進めるという本来の意味で使っています。

本来のやり方ですと、まずは現状把握を行い分析をし、その分析に基づいて改善や改革を進めていこうという段階的な手法が王道です。しかし完璧な現状把握を求めていてはいつまでたっても改善や改革に移行できません。ですから「良い加減」で現状把握ができればいいのです。そういう割り切りが1つ目のコツになります。具体的には8-2の法則のように全体の8割の部分を抑えておけば良いのです。これは購買システムの活用や購買プロセスの徹底でも同じことが言えます。「全ての買いモノを購買システムを通して発注する」というルールは無理なルールです。

「良い加減」で管理統制を進めていくということが間接材購買を進める上での1つ目のコツと言えるでしょう。

2つ目のコツは「狩猟民族型」です。

間接材購買は元々なかった組織をつくり進めることが多いのですが、その場合今までも誰かがどこかのサプライヤと契約をしています。つまり調達購買部門が何かしなくても業務活動や事業活動には一切支障は出ません。
一方で直接材購買は多くの企業で調達購買部門がソーシング業務を行うルールになっています。ですから調達購買部門が発注先や価格を決めないとモノが買えないルールになっています。このように直接材購買の場合は何らかのタイミングで必ず調達購買部門が業務に絡みます。
一方で間接材購買の場合はそうではありません。例えば多くの部門が複数のサプライヤと異なった条件で契約をしているなど契約を集約することでコスト削減につながるような場合には、そのような買いモノの機会を調達購買部門が自ら掘り起していく必要があります。間接材購買の場合待っていても何も起きないのです。ですから自ら「狩猟民族」となってコスト削減やその他の改善機会を掘り起こしていかなければならないのです。

その際にはコスト削減の機会がありそうかどうかを見極めていく能力も必要になります。また、関連部門や多くの部門に亘るユーザーとの調整も必要になってきます。いずれにしても自発的に動かなければ何も始まりません。一方で自発的に動くことで改善機会が掘り起こせればそこから得られる効果も大きいことが一般的です。

このように間接材購買のコツで覚えて欲しいのがこの「いい加減」と「狩猟民族型」という2つのキーワードになります。この2つのコツを踏まえてどのように改革を進めればより効果的なのか見極めていくことが重要なポイントになります。

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