実行するビジネス・パーソンは何が違うか ⑫実行のプロセスのスタートは、「課題」をつかむこと/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2016年3月25日 16時46分
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猪口 真 / 株式会社パトス
実行のプロセスというと、よく用いられるのは、「PDCA」サイクルだろう。単純に「PDS(Plan-Do-See)」のサイクルを用いる人もいる。
昨今は、このPDCAに、G(ゴール)をつけ、目標(GOAL)に基づいて計画し、行動するという、GPDCAのプロセスを提唱する人たちもいる。
「PDCA」のPは、もともとゴールを見据えたプランニングという意味ではあるので、わざわざ「G」をつけなくても良いのだが、目的のないままの行動、目標に対するコミットメントのないままの行動が、いかに多いかということだろう。
実際、現場では「Plan」はあまり重視されない側面が多い。
「理屈はいいから行動しろ!」というセリフに代表されるように、特に年配の「自称現場主義」の人たちは理論先行の行動不足の状態を毛嫌いする。
この「自称現場主義者」の人は、とかく「評論家」というレッテルを嫌う。
「うちの会社には評論家はいらない」とは、多くの管理職が言う言葉だろう。
それぐらいに、現場での行動を重視し、いわゆる「動く人」を重宝しがちなのだが、この「理屈はいいから行動しろ!」というセリフは実に多くの危険性をはらんでいる。特に営業職にありがちなのが、「いいから客先に行け」という指示には、大きなリスクをはらむ。
まず、行動に理由がない場合が多く、運よく会えたとしても、クライアントに対してマイナスになってしまう。
「とにかく客先に行ってこい」と指示され、行ったとしても、自分の都合だけで来られても、クライアント側からしたら迷惑以外の何物でもない。
仕事の決定権は顧客にあるというのに、まるで意思決定を邪魔するかのように、担当者の貴重な時間を奪ってしまう。
次に、自分の行動がクライアントにも迷惑となり、当然成果が上がらない状態が続くとなれば、本人には明らかなモチベーションダウンが起こる。そしてさらに行動しなくなる。もともと意味のないプランなき行動が継続するはずがないのだ。
もちろん、プランとは、行動を計画することだけではない。むしろ、行動だけ計画しても何の意味もない。
行動の案をリストアップし、どれがいいですか?と上長に聞くようでは、それは単に行動の寄せ集めでしかない。
プランとは、行動の理由、問題をどのように解決するかを考えることだ。つまり「問題・課題」からスタートする。すべてのビジネス・パーソンは、プラスをつくる、マイナスを抑えるなど、なんらかの問題を解決するために存在している。つまり、行動するということは、解決する問題があるからだ。
ここで勘違いしないでほしいが、問題といっても、自分の売上や利益、昇給などの問題ではない。自社の営業の売上不足や業績の不調など、顧客は知ったことではない。問題というのは、市場や顧客が抱える問題だ。
自分の能力不足を棚に上げて、会社への不平不満や言い訳に終始するビジネス・パーソンは、圧倒的にこの意識に欠けている。自分は問題解決の人間だという意識がないため、組織が自分に対して何かしてくれるものだと思っている。
極論すれば、何も解決できないビジネス・パーソンはその会社にいる意味すらない。
相手の課題に真摯に向き合えば、相手の会社の問題だけではなく、担当者個人の抱える問題にぶち当たることもあるだろうが、むしろそうなるべきだ。
個人間の信頼関係は、すべてに優先されるからだ。
日頃から、本当の問題や課題がどこにあるのかという意識を持って、行動している人は、ここぞというときの力がまったく違ってくる。プランの質において、そうではない人とのレベルの差が明らかになる。
いわゆるクリティカルシンキングということになるのだろうが、常に、課題からスタートさせるPDCAのプロセスをうまく機能させることができる人は、日ごろから忙しく、問題解決の提案が追い付かないことも多いかもしれない。
だが、いざというときには、普段の問題意識の高さが、有効なプランを生む可能性は非常に高い。
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