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初日が肝心/純丘曜彰 教授博士

INSIGHT NOW! / 2016年4月1日 5時0分

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純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学

 さあ始まりだ。試験のときは、あんなに気が張っていたのに、初日からもう気が重い? でも、入ったら終わり、じゃない。これからが始まりだ。もう夢じゃない。現実。だから、おそらく失望と幻滅だらけ。でも、それに文句をつけて拗ねる、なんて、幼稚なことはやってもムダ。だれも機嫌取りなんかしてくれない。もう大人なんだから、自分でどうにかしないと。


 最初でもっとも肝心なのは、朝、行って座って待つ場所。とりあえず、なんて、出入り口に近いところにいると、ずっと使いっ走りだぞ。むしろ、これからは毎日が抜き打ちの面接試験。まずは意欲を示すべく、正面二列目あたりへ。最前列だと挑戦的だと思われる。出る釘は打たれる、というのも、大人の常識。二番目あたりでちょうどいい。そこに座っていれば、ほっておいても、同じ程度に意欲をもって常識をわきまえた友人同僚ができる。恐ろしいことに、この友人や同僚こそが、これからの君の一生を決める。


 もちろん、第一印象が大切。ショーンKじゃないが、世の中、見た目が7割、声が3割。中身なんか、黙って立ってるだけなら、だれもわからないし、もともと人間、そんなに差があるものじゃない。運よく美男美女なら最高。そうでないとしても、姿勢が大切。猫背だったり、ポケットに片手を突っ込んでスマホ弄りだったり、かっこいいわけがない。まっすぐ立って、背筋を伸ばし、顔をあげ、いつでも声をかけてもらえるように、明るい笑顔で、とりあえずだれにでもニコッと会釈しておけ。どうせ右も左もわからない新人なんだから、ちょっとバカっぽいくらいでちょうどいい。


 次は、声だ。緊張して裏返ったり、早口になったりする必要はない。もう君は中に入ったのだ。余計な売り込みも不要。下手にウケを狙うと、場違いで確実に滑るぞ。それは、夜の歓迎会になってからでいい。どうせ形式だけの自己紹介なんだから、長話も迷惑。必要最小限のことを、ゆっくりしっかり語って、よろしくお願いします、と深く頭を下げるだけで十分。後は、暇を見て、向こうからいろいろ聞いてくる。そのときも、ペラペラ饒舌に話すことはない。新生活は、これからが長い。むしろ、笑顔でニコニコと、みんなの話を聴く側に回ろう。


 これまでスマホでなんでも済ましてきたかもしれないが、手帳とペンはあった方がいいぞ。会議でも打ち合わせでも、出るのに手ぶらというわけにはいくまい。よくわからなくても、ときどき話者とアイコンタクトを取って、話にうなずきながら、手帳になにか書いていれば、すごく積極的に参加しているように見える。どうせみんな、そんなものだ。腕時計も同じ。どうでもいい暇潰しでも、これまではスマホでニュースチェックだったかもしれないが、オリエントあたりのちょっと気の利いた機械式腕時計をじっと眺めている方が、どことなく忙しそうな、できるやつに見える。


 忘れていけないのが、あいさつ。どうせ誰が誰だかわからないんだから、だれにでもあいさつはしておけ。これから、いつ誰の世話になるか、わかったもんじゃない。そのとき、向こうは、けっこう君のことを覚えていたりするものだ。買い物でも、御近所でも、おはようございます、じゃ、おやすみなさい、と、一言、添えよう。なにかあったとき、ろくにあいさつもしない変な人です、となるか、とても感じのいい人ですよ、と言われるか、大きな違いだぞ。


 帰ったら、今日一日のことを、手帳かブログにでも、ちょっと長めに書いておこう。人生で一度きりの最初の日。この時の新鮮な気持を思い出す必要がある日が、いつかかならずやって来るから。


(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。著書に『悪魔は涙を流さない:カトリックマフィアvsフリーメイソン 洗礼者聖ヨハネの知恵とナポレオンの財宝を組み込んだパーマネントトラヴェラーファンド「英雄」運用報告書』などがある。)

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