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1年の春から就活は始まっている/純丘曜彰 教授博士

INSIGHT NOW! / 2016年4月6日 7時0分


        1年の春から就活は始まっている/純丘曜彰 教授博士

純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学

 大学に何しに行くの? 学問を究めるため、なんていうのは変わり者。ふつうは、卒業後に就職して、喰いっぱぐれないように、でしょ。高い学費も、生活費の仕送りも、すべて、そのための先行投資でしょ。


 大学になると、自分で講義を選択する。で、なんで最初から楽勝科目ばっか狙ってるのよ。そりゃ、もちろん単位を落としてしまったんじゃ話にならない。でも、いくら単位を取っても、卒業しただけ、っていうんじゃ、どうしようもないんじゃない? 大学の成績表って、企業に行くんだぜ。それも、就活が3年の終わりからとなると、まだ3年の成績は出揃っていないから、むしろ1,2年の一般教養の成績こそが問われる。そこで、そんな妙な科目ばかり取っていて、それで企業が君を取ってくれるか? それじゃ、喰いっぱぐれるよ。


 なんかよくわからない新書みたいなカタカナ名前の講義ばっかり取って、それが、優、だったって、なんだかなぁ、と思われるだけ。たとえば、同じ一般教養でも、「リクレーション入門」と「国際経済学概論」だったら、どうよ? リクレーションなんて、わざわざ大学で高い学費払って習うことか? というのが、企業の反応。実際になにをやるかはともかく、どうせなら、昔からあるような、硬そうな講義、漢字ばかりが並んでるようなやつの方が、成績表も見栄えがいい。


 それから、社会活動家とか、政治家になるのならともかく、そうでないなら、正直なところ、ややこしそうなの、ばかりだと、ふつうの企業からは敬遠されると思う。たとえば、同じ漢字ばかりでも「人間権利論」や「組合闘争史」みたいなのだらけだと、うわぁ、すごいですね、ということになる。同様に、右でも、左でも、テレビで吠えているようなバリバリの攻撃的活動家教授に関わったりすると、別に本人はそんなつもりが無かったとしても、世間ではその一派と見なされ、就職で苦労する。


 部活やサークルも就職前提で考えるべきだ。趣味は趣味。自分がいくら熱心にまともな活動をしていたとしても、趣味のサークルなど、企業の印象は概して悪い。スポーツ愛好会なんてどこも、スーフリ同然のちゃらいヤリサーとしか思われていない。まして、パーティの箱屋稼業でカネ集めしている国際ボランティアサークルみたいなのになると、いよいよ、うさんくさい。かといって、オタクだ、コスプレだ、なんていうのも、本人たちが思っているほど、また、マスコミが持ち上げるほど、企業側も好印象などということは絶対にない。意識低い系の吹き溜まりで、同類が傷を舐めあっているだけ。


 わざわざ大学で課外活動する以上、歴史的な大学横断組織がしっかりしているところに所属し、幹事や渉外なども進んで引き受け、年配のOBやOGの社会人とも交流し、広く縁故を得る、というのが、就職の王道。野球とか、サッカーとか、ラグビーとか、一般的なチームプレイの体育会系は、たとえ弱小でも、テニスやゴルフなどより、はるかに好印象。マスコミ志望なら、最初から、放送研、広告研などに入るのが当然。工学系なら、ソーラーカーや人力飛行機、ロボコンみたいなのもいいだろう。


 アルバイトも、そうだ。報酬が目当てなら、夜の仕事の方が高いに決まっている。だが、それで学業に差し支え、留年したのでは、元も子も無い。むしろ、たとえ報酬が安くても、それどころか、ボランティアや持ち出しでも、将来の仕事につながるアルバイトをすべきだ。たとえば、ミニコミ誌でも手伝えば、出版の基礎がわかる。選挙の手伝いをして政治家を目ざすのもいい。絵本の読み聞かせのボランティアで、自治体の人とつながりを作る手もある。


 大学は、自由だ。しかし、それは同時に、自己責任、ということでもある。なんでそんな妙な科目ばかり取っちゃったの、どうしてそんな変なサークルに入っちゃったの、と、就職の面接で聞かれて、自分に恥じるところがないのなら、それもまたいい。だが、だからといって、企業もまた、自分と同じような好評価をしてくれる、などとは思わない方がいい。もちろん企業の中にも理解のある人はいる。が、仕事として面接する以上、自分の個人的な理解ではなく、社会一般の「常識」で判断する。そのとき、君がはじかれてしまうようなことを大学でやるのなら、それはそれで自己責任だ。


 大学の自由は、好き勝手に、おもしろおかしく過ごしてよい、ということではない。むしろ、自己責任で、自分の将来の夢と生活に向けて最善の選択をしなければならない、という義務だ。四年間という時間、その間の高額の学費や生活費を、けして無駄にしてはならない。なにをするにも、目先の損得、好き嫌いではなく、それで将来、大きく元が取れるか、取り返せるのか、よく考えて、慎重に一歩を踏み出そう。


(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。著書に『悪魔は涙を流さない:カトリックマフィアvsフリーメイソン 洗礼者聖ヨハネの知恵とナポレオンの財宝を組み込んだパーマネントトラヴェラーファンド「英雄」運用報告書』などがある。

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