キャリア・デザインに欠かせない5つの視点/川口 雅裕
INSIGHT NOW! / 2016年4月15日 8時5分
川口 雅裕 / 組織人事研究者
日本では法的に、人事異動などは会社の裁量で行ってよい(従業員はそれに従う必要がある)ことになっているので、キャリアを自分でデザインするという発想に固執するのは問題があるが、それでも会社の指示するまま、全くの成り行きで仕事人生を過ごすよりはマシなので、数年に一度くらいのタイミングでキャリアを振り返り、今後を展望しておくことには意味がある。
しかし、キャリアを考えるとき、多くの人が振り返りにおいては何故そのようになってきたかが判然としない、展望においても理想論で地に足が着いていない感じがするといったことになりがちである。これは、どうしても仕事や仕事の能力ばかりに目が行ってしまうからだ。キャリアを考えるときには、そもそも自分についての考察が欠かせない。それを抜きにキャリアについて考えても、職務経歴書と大差ない内容になってしまう。キャリアの振り返りや展望の内容を充実させるためには、次の5つに関する考察が必要となる。
一つ目は、自分の属する世代の特徴である。どのような時代に生まれ育ったかは、人生に大きく影響する。戦争世代、団塊世代、・・・バブル、ゆとりなど世代の名称は色々とあるが、物心がつくような年頃までの環境は価値観や生き様に影響し、そう簡単に変わるものではない。自分が属する世代特有の物事に対する考え方は、自分の仕事観・会社観などにも関係しているから、キャリアを振り返ったり展望したりするときに大いに参考になるはずだ。
二つ目は、自分は時代にどのような影響を受けてきたかである。世代とは関係なく、時代の変化は同じ時代に生きている人、全員に影響を与える。バブルの前後では経営のありよう、評価や報酬の仕組み、職場の人間関係、ガバナンスなどが様変わりしており、働く人たち全てに影響を与えている。経済のソフト化、IT、グローバル、高齢化なども同様だ。従って、どのような変化に対して、会社や自分がどう変わってきたかを把握しておくのは、キャリアを客観視する上で重要になる。
三つ目は、年齢を重ねることで、自分の思考・態度がどのように変化してきたかである。誰でも、年をとれば肉体だけでなくモノの考え方も変化する。目標の立て方や目標に対するこだわり、他者への見方や関わり方、成功・失敗など結果に対する総括の仕方、仕事や会社の位置づけ、などは必ず年とともに変わっていくし、これからも変わっていく。年齢による自分の変化を無視してキャリアを考えても、表面的なものに終わるだろう。
四つ目は、自分の育ちである。親の姿や教育方法など幼い頃の身近な環境は、いくつになっても染み付いてとれないほどの大きな影響をそれぞれに及ぼしている。年をとって自分を客観視できるようになってくると、「親に似ている」と実感する人が多いのはその証左である。会社選びにおいても、親の仕事や仕事ぶり、親の会社観・仕事観と無関係という人は(反面教師的にしている人も含めて)少ない。人づきあい、職場での振舞い、出世欲、金銭感覚、商売っ気、困難への取り組み姿勢などの違いは、育ってきた環境に少なからず影響された結果だ。だから、育ちという原点を見つめなおすのも、キャリアを考える際には有効である。
最後に、自分の素質である。行動や思考の特性、能力的特徴や有無、得意・不得意な分野、好き・嫌いと感じることなども、そう変わるものではない。大きなフレームで物事を考える癖のある人が、急に細かな点に気付けるようになったりはしないし、フットワークの軽かった人がいきなり思慮深い人間になったりもしない。様々な仕事の結果やキャリアの軌跡はこれらの特性や能力が原因の一つなのであり、自分の素質について大雑把でも仮説であっても考えておいたほうがよいだろう。この記事に関連するニュース
-
パーソルキャリアの小学校・中学校向けキャリア教育 講師派遣授業(出前授業)「“はたらく”を考えるワークショップ」、アウトカム評価のための独自ルーブリック(小学校版)と「使い方ガイドブック」を公開
PR TIMES / 2024年11月15日 11時45分
-
間宮祥太朗、変化し続けながら挑む俳優業 「今後は時代劇やロードムービーをやってみたい」【インタビュー】
エンタメOVO / 2024年11月12日 12時0分
-
地方の「教育困難校」で起きているリアルな問題 教育現場の課題も昔からがらりと変化している
東洋経済オンライン / 2024年11月7日 8時20分
-
定年世代が戸惑う「多様性の時代」の受け入れ方 「高度経済成長期」は迷うほど選択肢がなかった
東洋経済オンライン / 2024年11月1日 20時0分
-
若者に昇進の打診をすると嫌がられる!? 出世したくない若者が増えている理由とは
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月31日 22時0分
ランキング
-
1春日部のイトーヨーカドーが閉店=「しんちゃん」のスーパーのモデル
時事通信 / 2024年11月24日 19時58分
-
2「バナナカレー」だと…? LCCピーチ、5年ぶりに「温かい機内食」提供…メニューは? 「ピーチ機内食の代名詞」も復活
乗りものニュース / 2024年11月24日 12時32分
-
3「ワークマン 着るコタツ」新モデルが登場 累計43万着を突破、人気の秘密は?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月22日 11時24分
-
4年収壁見直し、企業の9割賛成 撤廃や社保改革要請も
共同通信 / 2024年11月24日 16時22分
-
5異例の「ケーブル盗難でリフト運休」 スキーシーズン前に 捜査は継続中
乗りものニュース / 2024年11月24日 14時12分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください