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「会社選び」と「恋人選び」における本当の満足感/増沢 隆太

INSIGHT NOW! / 2016年4月20日 6時30分


        「会社選び」と「恋人選び」における本当の満足感/増沢 隆太

増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

・入社先企業への満足度85%超
就活がピークを迎えている時期だと思いますが、誰もが直面するのが会社選び。実際自分で満足できる会社の内定を得られる学生はどのくらいいるのでしょうか?今の時期、キャリアカウンセリングを申し込んでくる就活中の学生の方からは「自分の進路がわからない(決められない)」、「どの会社が良いのかわからない」という相談が増えます。ところが学生どころか、この4月に入社したばかりの会社員一年生からも、こうした相談は珍しくないのです。

リクルートキャリアの調査『就職白書2016』によれば、この4月に入社した2016年卒就活学生の入社企業への満足度は、平均86.8%とのこと。満足度はこの3年じりじり上がっています。満足といっても、「非常に満足」から「どちらかといえば満足」を足した数値なので、当然のごとくみんなが入社先企業に満足でハッピーという意味ではありません。また「不満」と答えた人も3.3%います。

こうした数値を見てどう考えるかは、キャリア決定においては重要な思考回路です。すう勢だけ見ればほとんどの人は満足なのだと受け取れますが、人間の心や気持ちを数値だけで判断するのは限りなく困難です。数値だけで納得できるなら、キャリアカウンセリングなど必要ありません。ましてキャリアは人生をかけて実現していくもの。


・モチベーションのピークは内定獲得時
私は内定報告に来た学生には必ず言いますが、会社へのモチベーションは内定を得た瞬間がピークであり、その時以後は下がることはあってもそれ以上に上がることはないという不吉な予言をします。

これは皮肉を言っているのではありません。心理学におけるモチベーション理論では、満たされなければ不満に感じるが、満たされたことでは満足につながらないものを衛生要因と呼びます。内定が取れなければ不安で不満に思うのは当然で、しかしそれが獲得できた後は、内定は織り込まれていき、いつしか「あって当然のもの」と感じるようになるのは、人間の健康な心理です。

内定獲得から時間が経てば、さまざまな煩悩が惹起されていきます。「他社だったらもっと初任給が良かった」「ネット書込みでは内定先の悪い評判があった」「もっとがんばればもっと『良い会社』に入れたはず」・・・・といった想像や誘惑に心を乱されるのです。この誘惑は入社した後でも起こります。だから内定ブルーの学生だけでなく、社会人もキャリアカウンセリングに訪れるのです。


・運命の出会い
キャリア決定は結婚や恋人選びと似ているといわれます。人生の一大事だし、自分一人の感情や理由だけで決めることが出来ない。何より「相手」の意思と自分の意思が合致しなければ成り立たない等、確かに両者には共通点がたくさんあります。

まったくもって余計なお世話を焼きますが、では配偶者や恋人に100%満足している人はいるのでしょうか?恐らくほとんどの方は100%疑いなく、ご自分の奥さんや旦那さん、彼氏彼女に満足しているに決まってます・・・が、世の中にはそうでもないという人は、少なくとも私の周囲の実地調査では存在しています。

それが良いか悪いか、本当かウソかはともかく、相手へのモチベーションのピークを永遠に維持し続けることは相当難しく、上がったり下がったりを繰り返し、時間の経過とともにお互いに納得を深め、理解が進み、さらにより良い関係性になっていくのが理想と思います。そして世の中のすべての人がこうしたお付き合いをしているとは限らないという現実もあります。要は自分が好きか嫌いかでしょう。その判断に周囲の友人やら家族の意見より、ご自分の気持ちこそが最も重要なはずです。


・良い会社を選ぶ魔法?
人生の一定期間を過ごすであろう就職先の選ぶのもパートナー選び同様人生の重大な選択です。誰も失敗はしたくないし、成功できる会社選びは誰しもが思うものでしょう。ではそれを担保する基準はあるのでしょうか?

「無い」といってしまうのは悲しすぎますが、いわゆる財務情報や企業分析を通じても、そもそもその会社関係者でもない外部の人間が、100%その会社を理解できることは難しく、きわめて限られた情報だけで判断をすることになります。また財務情報などの数値は企業の経営状況を計るためのものであって、そこで働く人との相性や適性については何一つ担保できるものではありません。

初任給や平均在職年数、退職金や福利厚生情報など、学生の多くは会社員経験が無い中、手に入る情報だけで判断を進めます。こうした数字も、さまざまな会社の選び方も、傾向値であったり、そもそも根拠の乏しいものだったり、絶対的な判断基準や指標は存在しないことこそが唯一断言できることだと思います。

私は「良い会社を選ぶ秘術」など存在しないと思っています。またこの世の誰にとっても「良い会社」という存在も無いと思っています。「天職」と呼ばれるようなものは、その宗教においてはあり得るかも知れませんが、科学的に存在する訳がありません。もしそんなものを求めて就活が進まないのであれば、何より一日でも早くエントリーを進めるべきです。

その会社の収益構造や市場の未来について、就活前から見ておくべきものであり、そうしたビジネスモデルとご自身の役割・能力の合致こそが、最良のマッチングだと思います。キャリア決定は人生を決めること。ぜひ周囲の無責任な意見や書込みなどに乗せられることなく、しっかり考えましょう。ご自分の能力が発揮できる可能性という、答えのない問への思考はずっと続きます。しかしずっと続くからこそ、こうした思考を続けられれば、大きく外れたキャリア選択にはなりにくいといえるでしょう。

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