手ごたえを感じた面接が失敗する理由/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2016年5月24日 6時59分
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
・ノリノリ面接の結果
普通は面接ともなれば、事前に自分の履歴やプロフィールなどをおさらいしたり、新卒学生ならガクチカ(学生時代に力を入れたこと)、中途採用の転職ならこれまでの業務実績などの説明を周到に準備しているものです。面接を通じて、こうした準備情報を立て板に水でプレゼンできればかなりの手ごたえを感じるでしょう。
質問への受け答えも食い気味に、質問が終わる前からバッチリな回答をズバズバできれば、盛り上がった面接として好感触を感じることも多いでしょう。面接官の食いつき、関心の高さを感じれば、準備していたこと以外でもスラスラ話せたり、言いたいこと、伝えたかったことをしっかりアピールできる手ごたえがあるのではないでしょうか。
しかしそんなノリノリの面接だったにもかかわらず、不採用だったということがあります。逆にたいして話も盛り上がらず、そもそもものすごい志望度の高い先では無かったのに内定をもらうということもあります。何が起こっているのでしょうか。
・デートもノリノリ?
ちょっと面接の場面をデートに置き換えてみましょう。あまりよく知らない相手とデートをすることになりました。(お見合いでも可)はりきって準備したとっておきのトーク、輝かしい経歴、過去の栄光などズバズバと話すことができました。特に学歴や社歴、サークルのリア充っぷりなど成功談の数々。ちょっと盛った話も含め、もうこれで相手は完全にあなたのとりこになりますね?
そんな訳ない?今どき一方的にしゃべりまくり、自慢しまくりの人間に魅力を感じる人なんているのでしょうか。デートやお見合いと面接を一緒にするのが間違いというかも知れませんが、自分に関心や好意を持ってもらうという目標は同じなのではないでしょうか?
ある程度人間関係が出来上がっていればまだしも、たいして知らない人の自慢話、全然興味のないエピソードトークを聞くのは無関心を通り越して苦痛ではないでしょうか。確かに面接に呼んだのだから無関心ではないかも知れません。しかし新卒就活の超人気企業では面接官が1日に何十人下手すれば100人以上の人と会うこともあり得る状況です。面接に呼ばれたすべての人に強い関心を持つというのは、現実には難しいでしょう。
・コミュ力の勘違い
コミュニケーション能力を一方的プレゼン能力と勘違いしている人が圧倒的に多くいます。一方的に言いたいことをまくしたてるのはコミュニケーションでも何でもなく、また外国では自己主張するのが当然などという人がいますが、自己主張だけで社会が受け入れてくれるとはとうてい考えられません。
私の少ない海外滞在経験や欧米だけでなく、アジアから南米、南アフリカまで世界中の人々とビジネスで接してきた限り、少なくともビジネストーク(商談)を一方的要求を突き付けるだけの人など会ったことがありません。逆に地球の裏側ほども距離が離れている国の人や、日本とはあまり関係の良くない国情の人なのに、まるで遠い親戚のような親和感や価値観のつながりを感じた経験は山のようにあります。
つまり自分の言いたいこと、伝えたいことを言うのが面接ではないという、「採用の原理」を今一度考えて臨んでほしいのです。「手ごたえがあったのにダメ」なのではなく、「手ごたえ」と思い込んでいたことが実は手ごたえではなかったのではと考えるべきです。
・真の手ごたえ
面接はプレゼンテストではありません。コミュニケーションの場です。自分の言いたいことという前に、まず「相手」の「聞きたいこと」を理解するのが先決です。これをすっ飛ばしていきなり自分のアピールをまくしたてて、それが成功したことに手ごたえを感じても、面接が成り立っていないのです。手ごたえを感じる部分を間違えているのです。
実際面接で手ごたえを感じることはあります。しかしそれは言いたいことを言えたかどうかではなく、相手=採用側の関心のあることを面接中にしっかり理解でき、それに合致する意見や情報を出せた時です。まず「聞く」ことに成功しなければ、コミュニケーションは絶対に成り立ちません。
来週からの面接本番を迎え、プレゼン練習に余念がない方。それ自体は無駄ではありません。相手がそのプレゼン内容に関心があると確証を持てたなら、非常に有効な情報提供になります。しかしそうではないことに相手が関心を持っているなら、絶対に自分の言いたい欲望に負けることなく、必ず相手の希望に沿うのを優先しなければなりません。
面接練習に来る方には、特に新卒就活の学生であれば、いかに覚えてきたセリフをすらすら言えるかと採用は全く関係がないことを説明しています。わざわざお金を払って面接練習まで来るような意欲のある人たちは、えてしてアピールが前面に出過ぎています。アピールそのものが良い悪い以前に、相手が聞きたいことをそっちのけで臨めば、どれだけ良いプレゼンでも意味がありません。
面接やESの質問・設問をきちんと理解せず、自分勝手に都合の良い情報を並べ立てる人は、むしろしっかり準備をしている人に多く見られます。これはコミュニケーションではありません。ぜひ、「聞くこと」をまず第一に心がけて、面接に臨んで下さい。
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