デジタルサイネージの仕組み、今までとこれから。/赤秀 有為
INSIGHT NOW! / 2016年7月4日 12時55分
![デジタルサイネージの仕組み、今までとこれから。/赤秀 有為](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/insightnow/insightnow_9348_0-small.jpg)
赤秀 有為 / エフィジェント株式会社
最近、よく街で見かける様になってきたデジタルサイネージ。
このサイネージのマーケット、堅調に毎年拡大してきている。
富士キメラ総研の調査レポート(2015/10)によると、2014年 1054億円、2020年 2717億円(予測)と、2014年比 2.6倍に膨れるとの事。
2700億円規模!?あまりイメージ沸かないですよね。
これ、ソーシャルゲーム市場の半分、また 家庭用ゲーム市場やアニメーション市場とかと同程度といったところ。
規模としては、まあまあ 大きいと言えるのではなかろうか。
で、このサイネージについて、今回は システム的な仕組みについてフォーカスしたい。
ネットワークインフラの進化等の要因もあいまって、形が変わってきている。
今までは?これからどうなる?といった観点で、私の個人的な考えを展開していく。
基本的な機能
まずはじめに、サイネージの基本的な機能について説明したい。
だいたい大まかに整理すると、下記3つになるかなと。
・動画や画像スライドショーのリピート再生機能
・コンテンツを特定期間表示 や 時間帯別に切り替え表示といったスケジュール機能
・画面上で領域を区切って 各々に異なるコンテンツ配置するレイヤー機能
これらの機能は、昔から大きく変わっていないし、今後もそれほど大きく変わらないのではと思う。
変わってきているのは、これら機能を実現させる仕組みになる。
今までの仕組み
2010年頃は、いわゆるサイネージ黎明期。
この頃は、スタンドアロン型コンテンツプレイヤーが主流であった。
ディスプレイに、プレイヤーを繋げるだけの極めてシンプルな仕組みである。
ここ最近においては、ネットワーク型コンテンツプレイヤーが主流になってきている。
遠隔地から、いつでもコンテンツを配信/放映切り替えができるモノである。
チェーンストアなんかは、これで本部から一括コントロールでき、利便性が格段に上がり、こぞって導入が進んだ。
仕組みとしては、ディスプレイ側には セットトップボックス(STB)という小さなパソコンがあり、クラウド側には コンテンツ配信システムがある。
STB側にも配信システム側にもそれぞれ専用プログラムを実装させ、それぞれ役割分担させ 適宜連携し 全体機能を動作させる。
いわゆる、クライアント/サーバー型(クラサバ型)の仕組みである。
これからの仕組み(予測)
ここ最近、HTML5のコンテンツ形式 とか Web Based Signage といった風潮が出てきている。
ディスプレイ側は、(HTML5を表示できる)ブラウザでコンテンツ表示させ、コンテンツ自体もサーバ側に持たせる。
サーバ側は、Webサーバがあり、その先にコンテンツ管理システム(CMS)がある構成。いわゆる、通常のパソコンとかスマホでWebサイトを見るのと同じ形態。
この形態でネックとなるのが、ネットワーク回線である。常時繋がっている必要がある。
今時点でのWIFIだと、やや心配であるが、2020年頃は、次世代規格 5G が提供される予定。今より 100倍の通信速度、1000倍の通信処理量との事。
ネットワークは、全く問題無さそうですね。
なので、2020年頃は、HTML5 の Web Based Signage が主流になっていると考える。
この仕組みに変わるポイントは、標準化になる。
2016年モデルでは、クラサバ型で、単一ベンダによる 独自仕様で クライアント側もサーバ側も仕組みを一括提供してきた。
モノによっては、コンテンツ形式までも独自仕様で、コンテンツも含めて一括提供というものもあった。
2020年モデルでは、HTML5というコンテンツ形式に標準化され、関連する仕組みがオープン仕様となった。
クライアント側は、通常のブラウザで良いし、サーバ側も オープン仕様のWebサーバで良い。
個々の要素がオープン技術である為、全体の仕組みを一括提供ではなく、各ベンダーは、個別要素をそれぞれ提供すれば良い様になった。
この流れ、企業の基幹システムの歴史と似ている。
昔 IBM等の単一ベンダによるメインフレームから、UNIX系のオープン化によるマルチベンダ化への変遷。
この流れ、必然の歴史といえるのではなかろうか。
オープン化によって、特定企業の独占ではなく、様々な企業による競争が促され、コストも品質もこなれてくる。
そうすると、さらにサイネージの導入が進むといったグッドサイクルが生まれてくる。
これからの業界動向
今までのサイネージ業界といえば、新規参入も撤退も少なく、プレイヤーにあまり変化が見られなかった。
市場は拡大しているにも関わらず、参入プレイヤーは微増程度。
業界内の勢力図についても、ディスプレイ供給は、NEC/パナソニック/シャープ/サムスンなどといった大手が先行。
ただ、その他領域、システム/コンテンツ/広告等は、まだ明確な勝者がいないといった状況である。
今後について。成長市場で、かつ、仕組みのトレンドが Web方向に進んでいる。
なので、ここ数年で、ネット系ベンチャーが どっと参入し、新旧交えた覇権争いの激化が起こると想定している。
ネット系企業の参入について、弊社への相談も ここ最近 ちらほら来ている。
「オムニチャネルを展開しているが、ネットだけで片手落ち。リアルも展開したい!」
「サイネージを含めたオウンドメディア戦略を考えたい!」
「Webで築いたCMS資産をサイネージ用にも横展開したい!」などなど。
このサイネージ業界、東京オリンピック/パラリンピックの頃には、どのような展開を見せているだろうか。 要注目の業界である。
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