「為せば成る、為さねば成らぬ」とは、どういうことか/竹林 篤実
INSIGHT NOW! / 2016年7月12日 8時10分
竹林 篤実 / コミュニケーション研究所
1日3時間で10年間
羽生善治氏は幼いころから、1日3時間集中して将棋に取り組んだという。それを10年続けた。将棋の世界でプロになるためには、最低限これぐらいの努力が必要だという。
1日3時間を10年間続けると、どうなるか。単純計算でざっと10,950時間ほどになる。要するにこれは「1万時間の法則」である。
空手の世界では「千日の稽古を持って初診とし、万日の稽古をもって極とす」という言葉がある。千日稽古を続けてようやく入り口に立ち、一万日続けると極みに達する。一万日といえば30年。気の長くなるような話ではある。
筆者も一応、黒帯をいただいた。空手を始めたのが40歳の時で、昇段審査に合格したときには48歳になっていた。この8年間に、1回2時間の道場稽古に平均して週2回通った。年間40週ぐらい稽古したとして合計1280時間、一応「初心」ぐらいにはなったのかもしれない。
正しいやり方でやる
空手をやり始めた頃は、体がカチンコチンに硬かった。回し蹴りで上段(相手の顔ぐらいの高さ)を蹴るためには、股関節が柔らかくないといけない。体が固まったままで、無理に力を入れて動かすとケガをする恐れもある。
だから、稽古を始める前には、しっかり柔軟体操をしておくようにと指示された。要するにお相撲さんの股割りである。両足をできるだけ左右にペタンと開いたのち、上体を床に倒していく。最低でもおでこがつくぐらいに柔らかくしてください、と教わった。
が、できません。腕を前に伸ばしてみて、手のひらさえ床には届かない。開いた足だって、膝のあたりが浮いている。ところが、師範代の方は、ジーンズがはちきれそうなぐらいのごつい太ももをしていながら、ペタンパタンと両足はほぼ180度に開き、前に倒した体の胸が床についている。
なぜ、できるのか。もともと、体が柔らかいのか。これが生まれ持った素質というものかと思いきや、違うという。この方も最初はできなかった。けれども、やり続けている内にできるようになったそうだ。
だから、歳だからと諦めず続けてください。お風呂あがりにやると効果的です。ただし、正しいやり方でやらないと、意味がありません。といって教えてくれたコツが、お尻の骨盤を後傾させないこと。床にしっかりお尻をつけたら、そこからの立ち上がりが垂直でなければならないそうだ。最初のうちは壁際で、お尻を壁くっつけるようにしてやると良い、と教わった。
しつこくやる、ていねいにやる
何ごとも基本的に不器用で、どんくさい。ただ、一つだけ取り柄らしきものがあるとすれば、しつこいのである。チマチマと繰り返してやることは、比較的得意である。
そこで壁付きストレッチを、毎日お風呂から上がった後、やるようになった。2ヶ月ぐらい続けていると、少しずつ体が曲がるようになった。やがて手がつくようになり、次は肘、そして半年後ぐらいにはおでこがつく。そこまでいくと欲が出る。がんばってあごまでがつくようになった。
稽古についても、幸い自営業であったため、自宅でも基本の突き蹴りを毎日繰り返した。雨戸を閉めると窓ガラスに自分の姿が映る。お手本となる教科書を見て、自分の姿を矯正しながら稽古していると、基本の動作はなんとか身についた。
努力の質×努力の量
自分のストレッチや空手の稽古をもって「為せば成る」などと偉そうなことを言うつもりはまったくない。ただ、努力は裏切らないという言葉にも、ある程度の真実が含まれているとは思う。
そこで大切なのが、努力の「質」ではないか。お尻の骨盤が後ろに倒れたままで、いくらストレッチを重ねても、体は柔らかくならなかっただろう。基本の突き蹴りにしても、自分の癖を治さなかったら、黒帯をもらえるようにはならなかったのではないか。
空手を含む武術の修行では「守破離」が大切だと言われる。守とは、型を真似ぶことだ。型とは、動き方のエッセンスである。空手にも型稽古がある。基本の稽古、突き蹴りなどもきちんとした型がある。大切なのは、型にはまること。
要するに、正しい動きを、まず身につける。そのためには、自分の癖や偏りを矯正しなければならない。だから、あえて型にはめる。これが努力の質である。それを繰り返す、すなわち努力の量を意味する。
ここまでできれば、一応、入り口には建てる。すなわち「為せば成る」のである。そこから先、型を破り、さらには型を離れて新たに自分の独自の動きまで行けるかどうか。努力の量が求められるのはもちろんだとして、そこには生まれ持っての素質が求められるのかもしれない。
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