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プロダクト・アウト VS マーケット・イン、そのベストバランスとは?/布田 尚大

INSIGHT NOW! / 2016年7月20日 18時41分


        プロダクト・アウト VS マーケット・イン、そのベストバランスとは?/布田 尚大

布田 尚大 / 合同会社INHEELS

マーケティング戦略に、プロダクト・アウトマーケット・インというアイディアがあることはご存知の方も多いだろう。

前者は自社のコア技術や研究開発・製造体制といった作り手側の発想で製品開発を行うこと、後者は生活者のニーズや市場といったサービスの受益者側の発想で製品開発を行うことを指す。

この言葉が最もよく使われるものの一つは、日本の電機メーカーを説明する文脈である。「日本の電機メーカーはプロダクト・アウトの製品開発を行った結果、高品質・高性能だが顧客が必要としない製品を多数生み出してしまい、競争優位性を失った」というような主張である。顧客起点のマーケティングが叫ばれる中、上記のようにプロダクト・アウトよりマーケット・インのアプローチの重要性が語られることが多い。

一方、INHEELS(インヒールズ)のものづくりにあてはめてみると、マーケット・インでもありプロダクト・アウトでもある、という結論になる。この両方の側面を有していることが、企業のブランディングとして有効なのだ。今回は、相反する2つの方向性の融合について、思うところを書いてみたい。

INHEELSのブランドコンセプト「Who said Ethical is not SEXY?」から考える

ベルリンの展示会に出展した際のINHEELS代表岡田

INHEELSのブランドコンセプトは、「Who said ETHICAL is not SEXY?(エシカルがセクシーじゃないなんて、誰が言ったの?)」である。私はこの反語的表現=既存のエシカルファッション市場のあり方を明確に意識しつつ、自らの主張も強く行うところにINHEELSのブランディングのあり方が集約されていると感じている。


マーケット・インの側面について

代表の岡田も様々なところで語っているが、INHEELSは、それまでナチュラル系・森ガール系のテイストが多く占めていたエシカルファッション市場の中で、セクシー・シンプル・スタイリッシュといったテイストを求めるニーズに応えるポジションを明確に志向している。これには2つの意味がある。

1つは、ビジネスとしての側面である。マーケットポジションに空白があったことはもちろん、社会貢献的な意識が強い女性は、ある程度世帯年収が高い主婦や、キャリアウーマン的な方であることも多い。後者のカテゴリーに属する方は、ふわっとした甘めなテイスト、アースカラーでナチュラルなテイストのアイテムより、黒やグレー、ホワイトでシンプル・スタイリッシュなテイストを好む傾向がある。

もう1つは社会貢献の文脈である。エシカルファッション全体のテイストのバラエティを充実させてカテゴリー全体の魅力を高め、より多くの方に興味を持っていただける存在にしていきたい。

プロダクト・アウトの側面について

上述のマーケット・インの側面と同じ位、INHEELSのアイテムはプロダクト・アウト的である。これは、起業というリスクをとってまで、セクシー・シンプル・スタイリッシュなエシカルファッションを世の中に提案したかったのは、誰よりもインヒールズを立ち上げた代表二人だった、というところに端的に表れている。

このような「自分自身が提案したいものを作る」という姿勢は、今後ますます重要になってくると考えている。それには2つの背景がある。

第1に、企業の「中の人」の個別単位での情報発信の増加がある。SNSや様々なコミュニケーションサービスの普及を背景に、企業スタッフ単位での情報発信が増えていくのは確実である。その中で、「自分が提案したいかどうかでプロダクトのテイストを決める」という事実は、ブランディング・マーケティング戦略というレイヤー以前に、顧客や各ステークホルダーとコミュニケーションする上で大前提となる。

第2に、企業全体のブランディングの重要性の増加が挙げられる。CSVやストーリーマーケティングといった考え方の浸透を背景に、企業そのものを形作るコミュニケーションを行う必要性が増加する。そうした中では、「お客様の求めるものを柔軟に作る」という姿勢以上に、自身のアイデンティティを強烈に打ち出し、自らが中心となるエコシステムを形成することが有効になる。

終わりに

私自身も日々お客様、アライアンス候補の方、メディアの方など様々なステークホルダーとお話しする機会があるが、これまで述べてきたマーケット・インとプロダクト・アウトの両方を含みこむマーケティング戦略が、企業のブランディングに直結することを強く実感している。このような日々のコミュニケーション、毎日の活動を通してマーケティングやブランディングのアイディアやフレームワークを自分なりに落とし込み、使いこなせるようになることで、企業としての意思決定に役立つナレッジを蓄積させていきたい。


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