経営戦略構文100選(仮)/構文7:完全競争市場とファイブフォースモデル/伊藤 達夫
INSIGHT NOW! / 2016年8月16日 8時5分
伊藤 達夫 / THOUGHT&INSIGHT株式会社
ファイブフォースモデルは、対象とする市場が完全競争市場からどの程度離れているかを分析することによって、利益がどの程度出やすいか、戦略変数は何か、を把握するためのものであると考えると、戦略立案に使いやすい。
こんにちは。伊藤です。相変わらずピエロ感は抜けないですが、元気です。ええ、日々、クスクス笑われて生きていますが、なんとか頑張っています。お腹が少し割れてくるぐらいには、体を鍛えているので、きっと大丈夫です。「先生、ライザップですか?」と聞かれるぐらいには引き締まってきました。体脂肪率は8%です。
さて、今日はみなさんの大好きなファイブフォースモデルです。
同時に、みなさんの大嫌いな完全競争市場です。独占市場も寡占市場もきっとみなさんは大嫌いですね。
ただ、完全競争市場は概念的には条件を理解するだけでわかった感があります。しかし、独占市場は完全競争市場との価格の差異を考える際に、一次関数が必要ですし、寡占市場はゲーム理論が必要になります。だから、みなさんはきっと大嫌いだと思うのです。
写真の注釈としては、エロい目をしたお姉さんがポッキーを独り占めしているということです。ええ、独占市場ですから・・・。
2,3人でポッキー寡占という絵はちょっとレギュレーションに引っかかりそうなので、「お姉さんが一人でポッキー独占」で許してください。
さて、ここからまじめに解説します。
ファイブフォースモデルで最大限に競争が激しいと認定されるケースがあるとしたら、完全競争市場のような状態でしょう。
完全競争市場とは、企業に差異はなく、多数の売り手と買い手が存在し、情報は完全に対象でみんなが利用でき、参入と退出が完全に自由だという仮定をおく、想像上の市場です。こんな市場はありませんが、この市場を理解すると、競争が激しくて利益が出ないようになるというイメージが湧きやすくなります。
もしくは、この逆を考えることが、利益を出すためにどうすればいいか?になるわけです。
企業に差異がないと競争が厳しいなら、差別化すればいい、となりますね。口で言うほど簡単ではありませんけど。
情報が完全に対象でない状態がよいのならば、情報を集め、独自の分析を行い、独自の知見を得ればいい、となりますね。これまた外資系コンサルティング会社がさもそうできるかのように言いますが、全く無意味なシステムが出来上がるケースに枚挙に暇がない感じになっています。簡単ではない。
完全競争市場を考えると、今、当社が「うまくいっている/うまくいっていない」理由を理解するヒントにもなることがわかるでしょう。
これを単一企業ではなく、業界でどうなっているか?を分析するわけです。
競合との競争の激しさを、サプライヤーの交渉力を、顧客の交渉力を、代替品の脅威を、新規参入の脅威を。
多数の売り手がいる、自分と同じような会社、つまり競合がいるときついですよね。
川上に少数しか売り手がいないと、交渉力すごくありそうで、嫌ですよね。ちゃんと原料を調達しにくい。
川下のお客さんが少数しかいないと、これまた交渉力ありそうで、嫌ですよね。自社商品を買い叩かれそうです。
商品の実現する便益に差異がない商品が他業界にあったら、嫌ですよね。
参入が自由でいかようにでも入れると嫌ですし、簡単に自社と同じことができるようになってしまったら嫌ですよね。
というふうに、ファイブフォースモデルを完全競争市場の要素で捉えることができますよね。
完全競争市場との比較の中で、独占市場を見てみると、独占市場には自社しかいないので、価格支配力があって、とても楽あことがわかります。寡占市場においても、自社と同じような企業が少数なわけです。楽ですよね。
じゃあ、独占企業や寡占企業のような状態になるにはどうすればいいのか?という問いが浮かびます。
それはお客さんが求めていることで、自社のできることが、他社ができなければいい、という単純な話になります。
ポーターは価値の選択、お客さんが求める便益からこの論点を考えます。
バーニーは、この文章がそのまんまですね。VRIOで強みを特定しろと言います。お客さんが求めていることでがVALUEだし、自社ができることが他社ができないがRarelityだし、Immitabilityだし、といったところでしょう。
単純に、お客さんが求めていることで、自社ができることが、他社ができないなら、話は簡単です。あなたの会社は競争優位があって、超過利潤を得続けることができる。
ちなみに、経済学では完全競争市場における超過利潤はあってもいずれなくなると考えます。商品に差異がなくて、たくさんの企業が同じ商品を作れば、値段が生産費用ぎりぎりまで下がっていくと考えるからですね。
だから、投資家は平均的利潤しか得られなくなります。機会費用と同じだけしか儲からないわけです。
経営学で言う利益は、競争が激しければなくなっていってしまう。完全競争市場から離れていれば、そうではない。利益はなくならない。この観点でファイブフォースモデルを見ることが1つとしてあると冒頭の偉そうな文章は言っているわけです。
また、戦略変数についてみてみましょう。
例えばね、お客さんが求めていることを実現するのがなかなか難しいとしましょう。自社はお客さんが求めていることをそれなりにできているとしましょう。他社はそれほど真似できないとしましょうよ。
そうすると、「お客さんが求めていることの実現に向かうともっと儲かる」、になりそうですよね。
このケースで、実は他業界の商品が、お客さんが求めていることをもっと実現できるとしましょうよ。「代替品の脅威への対応がうまくできればもっと儲かる」、になりそうですよね。
これはつまり、戦略に関して考慮しないといけない要素、戦略変数を示唆していると言えるわけですね。
自分が所属する業界が完全競争から離れているところがあり、完全競争に近いところがある。完全競争から離れているところが戦略変数としてクリティカルになってくるわけです。完全競争に近いポイントでは、独占の生じる理由としての規模の経済ぐらいしか問題にならない。
こういう視点で、ファイブフォースモデルの分析をやると、それなりに意味があります。単に、フレームワークの記述があって、その5つの要素を平板に埋めている「分析」と称する作業は無駄ですよね・・・。
というようなことを、私はずっと言い続けているのですが、なかなか聞いてもらえないですね。性格が悪いからでしょうか。普段の行いが悪いからでしょうか。まあ、仕方ないでしょう。
体脂肪率が8%なので、きっと女子ウケはよくなるはずです。はっはっは。
それでは今日はこのあたりで。次回をお楽しみに。
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