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バカの貧困/純丘曜彰 教授博士

INSIGHT NOW! / 2016年8月21日 7時30分


        バカの貧困/純丘曜彰 教授博士

純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学

 麻薬がなぜいけないのか。なぜ世界の多くの国で禁止されているのか。体を壊すから? いや、一発で死ぬくらい強い麻薬なら、意外に問題にならないのかもしれない。むしろ死なずに中毒になって、精神が荒廃し、暴力的、経済的に親族や社会をも巻き込む事件を起こすからだろう。


 ギャンブルに法的な歯止めが必要だ、と考える人が多いのも、同じ理由だろう。ギャンブルは、薬ではないが、強い中毒性がある。外から薬を盛らなくても、その興奮で脳内のドーパミンが噴き出す。そして、それが常習化すると、脳内の構造がおかしくなって、精神が荒廃し、麻薬同様の生活破綻を生じ、周囲まで不幸にする。


 麻薬やギャンブルで幸せになる人がいるだろうか。いや、幸せなんて、主観的なものだから、他人がとやかくいうべき話ではない? しかし、そんな自己破壊的な者を親族に持っていたら、たまったものではあるまい。法的に一定の歯止めが必要だ、と考える方が、社会的な合意を得ている。


 日本は、資源が無い。そう昔から言われてきた。それで、戦前は侵略大国に、戦後は加工大国、高付加価値大国になった。そして、いま、文化大国を目指しているらしい。それで、あれもこれも、政府に、補助しろ、カネを出せ、と喧しい。だが、その文化と言われているものが、プロスポーツやアイドル、マンガやアニメ、スマホか。


 祭りも年に1回。あれも、麻薬やギャンブルと似た昂奮を伴う。たまにならいいが、常習化すれば、まともな生活が破綻する。ところが、いまやプロスポーツイベントは、年中、隙間がないほど。プロスポーツなんて、やればだれかが勝つのだから、かならずニュースになる。それで、あれはもともと新聞やテレビがネタ切れにならないように販売促進で始めたもの。政治なんかに関心をもって庶民が騒がないように、報道番組の半分も使って、国民を中毒にしている。アイドルも、夢を売る、と言えば聞こえがいいが、もてないブサたちが余計なことをしないように、夢だけを味合わせ、カネを巻き上げ、力を奪い、去勢する。


 マンガやアニメも似たようなもの。海外でも人気だ、などというが、それはウソ。基本的には、あくまで子供のもの、それも悪質と見なされている。というのも、あれらは単純記号化するまで徹底的に複雑な情報を削ぎ落し、その一方で、刺激的な色や音、暴力とエロの寸止め挑発で、ギャンブルやスポーツ、アイドル同様、内的な昂奮を誘発する。バカでもわかるし、バカでも楽しめる。薬ではないとはいえ、麻薬同様の中毒性がある。ましてスマホは、つねにサイコロを振っているのと同じ。開けばなにか、いい話が出てくる、かもしれない、と、開いては閉じ、開いては閉じ。


 貧乏人を見てみろ。収入も少なく、衣食住もまともにできていないくせに、家賃の高い町中に住みたがり、部屋の中はガラクタだらけ。これこそが、現代の典型的なバカ貧困層。自分自身の境遇がみじめであればあるほど、他人のものごとを追いかけ、身の回りはわけのわかないブランド品、スポーツファングッズ、アイドルグッズ、アニメグッズが溢れかえる。そして、生活費の中で突出した通信費。次から次へと新機種に乗り換える。ちょっと前まではパチンコだったが、そのカネと時間の消費がプロスポーツやアイドル、マンガやアニメ、スマホにシフトしただけ。生活経営能力が無く、稼いだ以上に支出してしまっている。


 貧乏人にも文化は必要だ。それはそうだ。しかし、文化はあくまで彩り。まともに自立した衣食住も成り立たないのに、その彩りで彩るべき衣食住を破綻させてしまうなら、元も子もあるまい。一刻を争うビジネスの現場にいるわけでもないのに、年がら年じゅうスマホをいじり、ツイッターやフェイスブックで自慢話ばかりしていて、仕事が留守では、生活が向上するわけがない。まして、プロスポーツやアイドル、マンガやアニメなど、自分自身の現実の生活ではない。自分の生活もまともに成り立っていないやつが、人の「応援」など、おこがましいにもほどがある。


 いや、庶民はカネづるだ。余計なことに関心を持たず、意味もない粗製乱造のガラクタ(「プロールの餌」)を買い続け、稼いだカネをすべて費やしてくれればそれでいいのだ、ということか。しかし、麻薬中毒、ギャンブル中毒と同様、プロスポーツやアイドル、マンガやアニメ、スマホの中毒の連中は、自分では生活を作らないし、作れない。バイト程度の収入しかなく、すでにカネを吸い上げられて貯金も持たない。おそらく結婚もできないし、家も建てない。いまは生活保護だの、奨学金貸与だの、サラ金より見えにくい政府からのカネの注ぎ込みで、見せかけのまともな生活を維持しているが、経済バランスとしては、とっくに破綻しており、また、将来的にも改善の見込みは無い。


 アニメは文化だ、ゲームはコミュニケーションだ、などという屁理屈は聞き飽きた。大半は、パチンコと同じただの集金課金装置。だが、屁理屈連中は声が大きい。パチンコ同様、麻薬やギャンブルのようには、政府が規制に動くことは無いだろう。だが、まともな家庭では、これらのものの中毒性を直観し、黙って家から遠ざけ、子供にも接しさせまい。一方、貧困層では、生活向上の見込みが立たないという現実から逃避しようと、プロスポーツやアイドル、マンガやアニメ、スマホの目先の昂奮をやめられなくなり、ろくにまともに働きもせず、いよいよ自己破壊の道へ突き進む。それどころか、子供にまで、どうでもいいポケモンのインチキ名前を暗記させ、一銭の価値も無いカードやメダルを数限りなく買い集めさせ、いよいよバカを量産。その方が、当座、日本企業は儲かる。


 このバカたちにカネを湯水のごとく注ぎ込んで、むりやり回しているのが、文化大国とやらの日本経済。だが、虚構のソフトの大量生産だけでファンダメンタル(実体経済)の向上が無い以上、このキリギリス国家は、生活保護や奨学金貸与などへの大盤振る舞いは、いずれ限界に達する。そのとき、富裕層、というより、まともな中間残留層は、自業自得の自己責任、と言って、貧困層の援助を拒否するだろう。趣味だ、文化だ、生活のうるおいだ、などと屁理屈を言って、ろくな稼ぎもないくせにガラクタ集めの追っかけで散財しているだけの身の程知らずの穀潰しは、遠からず親族たちからさえも見捨てられるだろう。


 経済格差は、もう始まっている。ガラクタは麻薬だ。いくら買い集めても、それらは、自分の生活にはならない。だから、よけい永遠の渇きに取りつかれ、さらに買い求め続けるが、それは絵に描いただけの幻の水。けっして君の生活そのものを潤すことは無い。自分が貧困に墜落しないように、貧困から脱出できるように、ほんとうに自分がすべきことをよく考えてみよう。


追記:読解力の無いやつがステレオタイプにサブカル批判と勘違いしているが、源氏物語でも、ヘーゲルでも同じこと。文系オーバードクターなんて、そんなのだらけ。中毒のように限りなく他人のことばかりを追っかけているから、自分がどんどん貧しくなる。スポーツなら、自分で実際にやればいい。物語なら、自分が現実に生きればいい。カネが少ない者なら、なおさら自分自身のために使うべきだ。そうしないと、モノや情報が溢れていながら、自分自身の人生は空っぽ、という最悪の絶望、最低の貧困に陥る。


(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)

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