育児・介護休業法改正のおさらい(特に介護部分について)/株式会社新経営サービス 人事戦略研究所
INSIGHT NOW! / 2016年10月13日 10時0分
株式会社新経営サービス 人事戦略研究所 / 株式会社新経営サービス
今回は特に介護分野について紹介します。
まず、法改正の背景について。
「介護離職」という言葉を最近よく聞くようになりました。まだまだ数は多くないですが、企業訪問をしていても必ず話題に上るテーマです。
総務省統計局「平成24年就業構造基本調査」によれば、過去5年間(平成19年10月~平成24年9月)に介護・看護のために離職した人は約48.7万人、このうち現在働いていない人は約36.4万人。平成23年10月~平成24年9月の1年間の数値では介護離職者が約10.1万人、そのうち8割強が現在働いていない、と言う数値が出ています。
こうした現状を受け、政府は「介護離職ゼロに直結する緊急対策」として種々の取組みを進めています。今回の法改正もそうした背景からなされたものです。
次に、今回の法改正の内容について見ていきましょう。
①介護休業の分割取得
今回の目玉となる改正です。1回しか取得できない現行制度の内容について、使いにくいとの声が上がっていました。
現 行:介護休業について、介護を必要とする家族(対象家族)1人につき、通算93日まで原則1回に限り取得可能改正内容:対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業を分割して取得可能93日という通算期間については現行制度通りとなりました。大手企業では休業期間を365日とするところもあるなど、独自の取組みが進んでいます。
②介護休暇の取得単位の柔軟化
現 行:介護休暇について1日単位での取得
改正内容:半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能
③介護のための所定労働時間の短縮措置等
現 行:介護のための所定労働時間の短縮措置(選択的措置義務)について、介護休業と通算して93日の範囲内
で取得可能
改正内容:介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能
④介護のための所定外労働の制限(残業の免除)
現 行:なし
改正内容:介護のための所定外労働の制限(残業の免除)について、対象家族1人につき、介護終了まで利用できる
所定外労働の制限を新設
以上です。また、介護休業給付金の引上げもされることになりました。休業開始前賃金の給付割合について、現行の40%(介護休業開始が平成28年7月以前の場合)から、改正後は67%(介護休業開始が平成28年8月以降の場合)に引き上げられます。
法改正を受けて、今後本格的に介護休業・休暇、時短勤務等を希望する社員が増えてくることも予想されます。各企業では法改正に対応していくため、今まで以上に社内の環境整備が必要になりますが、思ったほど簡単ではありません。対象者が出てきた時のために今からガイドラインを整備するなど、準備をしておくことが求められます。
執筆者:森中 謙介
人事戦略研究所 コンサルタント
大学院では会社法務・労働法務を中心とした法律学の研究に従事。新経営サービス入社後は、主に中堅・中小企業を対象とした人事評価・賃金制度構築のコンサルティングを行なう。労務管理の分野にも精通し、最近では「残業削減」をテーマにしたセミナーや雑誌記事の執筆「改正労基法への実務対応①~④(人事マネジメント誌)」など、精力的に活動している。
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