記録的な炎上の年・2016年の謝罪成功者は?/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2016年11月1日 6時45分
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
・2016年、謝罪の成功者は?
私は組織の危機管理とコミュニケーション戦略の視点で謝罪対応に取り組んできましたが、その目指すところは明確です。組織の危機を回避あるいは低減することです。これはこのまま芸能人など個人でも当てはまります。謝罪のゴールをどうとらえたかがその成否を分けるのです。
今年謝罪会見が多かったと感じる方は少なくないと思いますが、では一番成功した人はだれか、すぐ思い浮かぶでしょうか?
謝罪会見を開いても、すぐに思い浮かばれることのなかった人こそが成功者だといえるでしょう。たくさんの謝罪会見がありましたが、今でも思い浮かぶ人と、そんなことがあったっけ程度に、言われなければ思い出さないような人と、同じ謝罪でも見事に二つに分かれるのです。
謝罪を行う前提に、スキャンダルなど何らかのネガティブ要因があります。少なくとも今年謝罪会見をした方々は皆、自分自身でそうした要因があったことを認めています。そのネガティブ要因自体を消し去ることはできませんが、その印象を薄められるかどうかが、危機管理としての謝罪だと考えます。つまり謝罪していたことを忘れられてしまった、思い出されなくなった人こそ、謝罪の成功者なのです。
・謝罪失敗は目的の勘違いが原因
逆に謝罪会見をしているにも関わらず、いまだに厳しい環境をも引きずっている有名人の方もいます。謝罪会見でさらに批判を呼んでしまった人のほとんどは、謝罪というコミュニケーションのゴール設定を間違えた人です。
不倫の証拠(と称されるもの)があるのに否定をしてウソつきだと批判されたり、お詫びの言葉をいいながらも態度が不遜だったり、正統派清純派の立ち位置を維持しようとして会見を打ち切ったり、いずれも謝罪でなすべきことを取り違えたといえます。
逆に成功した人たちは、ネガティブ要因をさっさと認め、炎が燃え上がる前に鎮火に成功しました。真摯な姿勢で自らの非をいさぎよく認めた姿をしっかり映像化しました。
特にこの「映像化」は重要です。わかりやすいコミュニケーションのため、映像はもっとも効果的です。どれだけ筋の通った説明も、言い訳と受け取られては鎮火できません。謝罪を観客である視聴者に伝えるため、メディアを通じてわかりやすく訴えることができた人は成功し、失敗した人の発したメッセージはわかりにくく、ウソやごまかしとして伝わりました。
メディアからの厳しいツッコミは、むしろ鎮静化のためには必要なものであるにも関わらず、それを拒否したり逃げた人も、結局事態を収拾できませんでした。映像化を避け、自らが姿を現さなかった人も炎上しました。
・禊(みそぎ)の意味
芸能人・有名人の犯罪もありましたが、危機管理の視点でいえば、犯罪行為は収拾できるレベルを超えています。逮捕された有名人がどれだけ努力しても、逮捕で有罪となった人が謝罪したくらいで失地回復は不可能です。再び脚光を浴びる世界に戻るのは、刑法犯の場合は限りなく難しく、長い年月ととびぬけた幸運がなければまず復帰はできないでしょう。
スキャンダルは刑法犯罪ではありませんので、不倫などがあっても被害者は配偶者や家族など限られた近親者にすぎません。それゆえ観客の腹落ちする対応を謝罪で実現できれば再び活動は可能になります。
その腹落ちが「禊」(みそぎ)です。謝罪に失敗した人はことごとく禊から逃れようとしました。神様にお祈りして願いをかなえる時に滝に打たれたり、夜明け前に水をかぶったりして辛い思いをする修行も禊の一つですが、この辛さに耐えるという行為があるからこそ禊として成立するのです。
自らの反省を美しい言葉で語るのではなく、ぶざまさやみっともなさ、愚かさとして恥ずかしい姿をさらした人は、冷たい滝に打たれるのと同じく、禊を受けたと認められやすくなります。しかしそうした辛い場面から逃れようとした人はことごとく炎上していきました。
会見での自己正当化の言い訳はその最たる例ですが、そんなことはやっていないとか誤解だと抗弁したり、そもそもきちんとした説明もしていない、厳しい報道陣のツッコミも受けずにやり過ごそうとした人はのきなみ失敗しました。報道陣の厳しいツッコミを受けることこそが事態を好転させるチャンスだったのです。
謝罪では怒られることが必要だと、私は訴え続けています。それは報道陣と観客の怒りを浴びることなしには次のステップがないからです。怒りや批判を避けようとsれば、禊はいつまでたっても終わらず、鎮静化は遠のきます。
・「逃げ切り」は成功か?
真の謝罪の成功は明確に定義できます。スキャンダルで謝罪会見など開いたものの、今現在も仕事を継続できていることが成功で、今仕事を継続している人が謝罪成功者です。何をしたかの罪の重さでは、全員刑法犯ではありませんので五十歩百歩に過ぎません。しかし結局トラブルがあっても、今現在、それ以前と変わらぬペースで仕事ができているのであれば、その謝罪は成功です。
一方、スキャンダルを起こしても会見しなかったり、逃げ通した人もいます。流れの速い現在の情報環境では、年初からのスキャンダルでも記憶が薄れている人は多数いるでしょう。しかし、そうした人たちで元の仕事に戻れなかったり、逃げ切りというかそのまま表舞台から姿を消してしまった人もいます。
それ以上みっともない姿をさらさずに済んだとはいえますが、それは成功ではありません。記憶が薄れるスピードの速い現在、一旦は逃げられたとしても、今度は元の栄光には戻れないからです。そもそもスキャンダルで批判を受ける人はスターや著名な地位など、恵まれた環境にいた人です。しかしその地位を追われて逃げた以上、元の場所に戻ることは限りなく難しいのです。
事件が起きた時に適正な対処をして、禊を経ること以外、謝罪を成功させたとはいえません。謝罪の成功者とは、人々の記憶からそのスキャンダルを消すことに成功した人なのです。
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