電力自由化開始から半年 「電力会社は自分で選ぶ」時代が到来 業界に与えるインパクトとは/株式会社 アイ・グリッド・ソリューションズ
INSIGHT NOW! / 2016年11月7日 10時30分
株式会社 アイ・グリッド・ソリューションズ / 株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ
海外では、10年以上前から自由化が進んでいる国もあり、国際的に見ると「消費者側が電力会社を選ぶのは常識」となってきていますが、日本では電力会社が約350件もあるにもかかわらず、6カ月以上たった今も切り替えをした世帯は、約188万世帯(※2016年9月末時点)、全体の約3%とまだまだ低い状況が続いています。
電力会社は自分で選ぶ時代
しかし今後、「電力会社は選ぶもの」という認識が日本でも高まってくると、さまざまな業界にインパクトをもたらすことになると思っています。前述の通り、現在約350社の電力会社が存在します。日経BPクリーンテック研究所の創刊した『電力・エネルギービジネス総覧』は、「電力会社には10のビジネスモデルが存在する」と言っています。例えば、小売りセット販売(電力を他のエネルギーやサービスと併せて販売)、省エネコンサル(需要家への省エネやピークカット手法をアドバイス)、デマンドレスポンスアグリゲーション(電力会社の要請で複数需要家の削減量をまとめて提供)、ビックデータ利活用(電力消費や発電蓄電などの情報を蓄積・分析・活用)、地域産エネルギー電力小売り(再エネなど地域由来エネルギーを地域需要家に供給)などそれぞれ強みが違うビジネスモデルを展開しています。日本で2016年4月からスタートし、徐々に認知が上がってきているのは、小売りセット販売のビジネスモデルで、auやsoftbankなど携帯代とのセット販売やH.I.S.の旅行とのセット販売などがあげられます。
これまで、通信会社や旅行代理店、スーパーマーケットなど他業界で電気やガス、水道を販売するとは誰もイメージしていなかったと思います。
他業界の中でも小売流通業界は、消費者と直接接する業界であるのに、生活に欠かせないインフラの販売をしていませんでした。今後、そのインフラをスーパーマーケットや百貨店が販売するとなれば、小売流通業界が抱える課題やビジネス戦略に新しい風を吹かせることとなるのではないでしょうか。
海外では当たり前になった「電力自由化」
1990年に高圧電力の自由化を、1999年には一般家庭を含めた全面的な電力自由化を開始したイギリスでは、現在約40%の人が電力を切り替え済みと言われています。外資企業を含む新規参入が相次ぎ、競争が進むにつれて企業間買収やグループ化も進みました。今では、電力自由化を開始した当初とは大きく様子が変わり、18社が電力・ガスの販売をしており、その中でもBig6と呼ばれる6大グループが小売市場で9割以上、発電市場で7割のシェアを占めています。すでに電力自由化が成功していると言われているイギリスでは、家庭に見合った電力会社を選び、プランの見直しをする際も簡単に見直しができるしくみが整っています。その中には、セインズベリー(Sainsbury)というスーパーマーケット事業者や生活共同組合(Co-operatives)など、生活に密着した事業者もあり、電力販売を成功させています。
セインズベリー(Sainsbury)も電力自由化を成功させた企業の一つで、販売開始から2年で23万世帯以上への電力供給に成功しました。買い物ついでに申し込みができる便利さや、スーパーマーケットならではの食品や生活用品に関連するお得な特典もあり、消費者満足度は、大手電力会社をしのぐと言われています。
このように日本でもスーパーマーケットや百貨店など小売流通業界で電気やガス、水道を買うことが当たり前な時代がもうすぐ来ます。
スーパーで買う電気
今回紹介する電気ブランド「スマ電®」は、株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ(以下、IGS)が手がける、スーパーマーケットを通した電気小売事業です。
一般社団法人スーパーマーケット協会が2016年9月に発表した調査によると、今年8月は約9億円の売り上げで、前年比100.7%、7月は約8億8千万円売上、103.7%(http://www.super.or.jp/wp-content/uploads/2016/09/tokei-20160921hpp.pdf)と地場SMの売り上げは横ばいが続くと言われており、地域の顧客を囲い込んで収益は一定数担保される一方、食品・日用品販売以外の収益“伸び白”が無いのが課題とされてきました。そこで、GMS、SMを含む商業施設などの電力消費に関するコンサルティングを行ってきた、IGSは2016年の4月以降スーパーマーケットを通して、一般家庭へ電気の供給を開始しました。
地場SMを中心に代理店となっていただき電気を販売してもらうことで、食品を売るだけでなく、①食品・日用品販売以外での収益減が生まれることと、②これまで大手GMSにしかできなかった顧客管理、ポイント制度等が可能になります。また「スマ電®」は、通常の電力供給サービスと違い、電気代だけでなく、ポイント獲得や会員割引、新商品のプレゼントなど、スーパーマーケット独自のサービスがプラスされることが特徴です。食品・日用品販売が中心であった地場SMが、より住民と密着した関係性を構築できることを目指しています。
以上のように、電力自由化という機会をキッカケに、地場SMの収益増と顧客管理改革という新しいビジネスの創出にIGSでは取り組んでいます。
今後は少ない電力で生活が可能になるよう、一般家庭への電力コンサルティングも随時開始したいと考えています。少ない電力で生活できる家庭が増えることにより、地域経済の活性だけではなく、地域の省エネ生活の推進にも取り組んでいきます。
スーパーマーケットとしては、これまで無関係に近かった電気小売事業ですが、電力の自由化が始まり、通信会社や旅行会社等、様々な業種が参入し、新しいビジネスチャンスを創り始めています。その中で、スーパーマーケットならではの電力小売事業のメリットは、消費者が月に何度も訪れる、最も生活に密着した場所であるため、生活インフラである電気を相談しやすく検討しやすい場所であるということが大きなメリットでしょう。
今後ガスの自由化も開始され、「インフラは自分で選ぶ」という認識が一般化することで、小売流通業界への大きなインパクトを与えることが期待されます。今年4月に始まった電力自由化が、新しいビジネスチャンスを見出す初めの一歩になっていると考えています。
(株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ エネルギー・プラットフォーム事業本部本部長 秋田 智一)
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