買い物はそんなに面倒なのか/野町 直弘
INSIGHT NOW! / 2016年12月14日 10時0分
![買い物はそんなに面倒なのか/野町 直弘](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/insightnow/insightnow_9489_0-small.jpg)
野町 直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ
先週アマゾンの2つの新サービスが発表されて話題になりました。
1つは Dash Buttonでもう1つはAMAZON GO。
サービスの内容や技術についてここで説明する必要はないでしょうが、どちらも今までにない画期的なものです。
Dash Buttonは家庭での日用品の補充のためにDash Buttonを使ってワンプッシュで注文ができる、という仕組みになります。常備品のインターネット通販の究極的なやり方かもしれません。確かに水や洗剤、(私の場合は)シリアルなどは毎日購入するものではありませんが、欠品すると不便なものです。まとめ買いもできますが、、
運搬の手間や在庫スペースを考えると必要な時に必要なだけ注文できるのはとても便利なもの。また必要な時に簡単に注文できる仕組みとして考えられたワンクリックならずワンプッシュというのも良く考えられたものです。
AMAZON GOはAI(人工知能)の技術と多くのセンサーやカメラを使ってお客さんがどの商品を何個ピックアップしたのかを認識し登録されたクレジットカードから決済を行うことで顧客がレジに並んだりお金を払ったりの手間を省きます。来春にもコンビニ規模の試験店舗をシアトルに開店するとのことです。
買い物客であるショッパーの気持ちや動きをしっかりと理解したうえで、店舗やネットで商品を買ってもらうための適切な仕掛けを行うことをショッパー・マーケティングといいますが、米国のショッパー・マーケティグの第一人者であるハーブ・ソレンセンという方が著書「Inside the Mind of the Shopper」(日本語書:「買う」と決める瞬間)の中でこういうことをおっしゃっています。
「1回の買い物における最も一般的な購入品数は1品であった。」「買い物客の半数の購入商品点数は5個以下であり、まとめ買いの買い物客は意外と少ない。」「来店客が買い物にかける時間のおよそ80%は売り場から売り場での移動の時間である。」
これは米国のあるスーパーでの検証によって得られた事実です。これらの事実から考えると今回のAMAZONの2つのサービスは顧客にとってとても価値があるものになります。
これは店舗だけではありません。ネット上のカタログからの購買もカタログ検索をするのは意外と面倒です。特にいつも購入している消耗品や日用品の在庫補充についてはこれまでは購入履歴やお気に入り機能を使っていましたが、ログインしてマイページにアクセスし、購入履歴を確認してなど、割と面倒なもの。これに対しボタンをワンプッシュすれば自動的にモノが届くというのは極めて便利なやり方です。
また日頃スーパーとコンビニが隣接していても何か購入するときに安いからという理由でスーパーに入ったもののレジに列ができている様子を見て諦めてコンビニに入り直すという経験は誰もがしているでしょうし、AMAZON GOも忙しい人にとってはかなり便利なサービスでしょう。
この2つのサービスから感じることは「買い物はそんなに面倒なものなのか?」ということ。特に個人の買い物にも関わらず、、
今までは個人の買い物はどちらかというと楽しみと考えられてきました。
日々の日用品の買い物にしても毎朝チラシを見てどこのお店に買いに行けばよいか決めたり、店に行って本日のお買い得品が何かによってその日の献立を決めたり、このようなことは労力を伴うものの、こういう上手な買いモノを楽しみながらやっている、という気持ちもあったのではないでしょうか。
しかし最近は(私もどちらかというとこちらだが)そういう日頃の買い物にかかる手間が面倒だと感じる人も多くなってきているようです。買い物をサポートしたり、楽に買い物できるような仕組みに対するニーズは益々顕在化してきています。
一方で仕事で企業の買い物をすることについて考えてみましょう。
以前ある企業で開発・設計部門の方にアンケート調査をしたことがあります。その企業では設計者が開発上流の段階で重要な部品のサプライヤを実質的に決めていたのですが、そのプロセスに無駄を感じているというアンケート結果が出ていました。
具体的には設計者のワークロード全体の約10%の工数が業者交渉・見積に費やされており、理想的にはこの業務は開発部門の本来業務ではないので調達購買部門に任せ、その空いた時間を構想設計に振り向けたいという内容です。またサプライヤに関する情報が共有されていない新人だとどのサプライヤに声をかければいいか分からず、「工数がかかる」という指摘もありました。
このように仕事として企業の買い物をすることに抵抗を感じる人も多いでしょう。人によっては値引き交渉を行ったりすることが恥ずかしいと感じる人もいます。特に仕事として企業の買い物をする(調達購買の仕事)ことは、ここに上げる条件を網羅しなければなりません。
・ルール通りに買わなければならない
・買わなければならない(買えないではすまされない)
・交渉をしなければならない
・買うものに詳しくなければならない
こういう条件を考えると買い物は面倒なことなのでしょう。今後AMAZONの2つのサービスのように買いものを効率的に行うことを支援するサービスや楽に買いものできるニーズは益々顕在化していくと考えられます。
これは何も個人の買い物にだけではなく仕事として企業の買い物でも同様のことが言えるでしょう。アマゾンライクやGoogleライクなシンプルなGUIや検索技術、リコメンド機能、在庫補充品のワンクリック購買等、調達購買業務の効率化につながる新しい技術やサービスが生まれ一層発展していくことが近い将来に予測されます。
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